梅雨のアニメ映画めった切り企画、第三段は『君の膵臓をたべたい(2018年)』です。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
余命幾ばくもない少女の秘密を、偶然知ってしまった透明な少年。二人の日々は、そしてその終わりは何を刻んでいくのか…という物語。
公式サイトは↓https://t.co/yfwBO4qUlU
見終わった感想は…キツいっすね!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
これは出来や仕上りの話では勿論なく、うら若き少女の死を前提に進む話と、それがあまりに綺麗に、クリアーに切り取られる美しさ、そしてその先に進んでいかざるを得ない生者の奥歯噛み締めが、非常に強く刺さってキツかったです。
いきなり自分語りすると、自分もそれなりに若い時に、同級生を亡くしておりまして。まぁ桜良ちゃんみたいな美少女ではなく、むくつけき男子であったわけですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
時折思い出すわけです。
なんで俺が年重ねて、アイツはあそこで止まっちゃったのかなぁ、って答えのない問を。
そんな個人的な感慨を凄い勢いで掘り起こされ、まぁ若い身空の死別ものはなかなか正気では見れないわけですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
生きた末の死を扱う物語に必要な、同情でも憐憫でもない敬意が映像に宿っていて、とても良い映画だと思いました。
死んだところで終わらないのが、とても良い。
クリアってのはまず美術で。高岡をモデルにしたあまりに美しい風景と、心象を強く反映した情景づくり、ライティングと天候操作は非常に鮮明でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
透き通るような透明さで、死に向かって微笑んでいく少女の震え。それが空気を伝わって、透明な少年に色を付けていく歩み。
恋であり友情でもある、彼等二人固有の名前のない関係が、徐々に折り重なっていく物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
そこにすごく慎重に、幾重にも『通り魔』の影が伸び続けるので、良くない先読みがズバズバ冴えて、まぁキツかったです。フェアに物語を展開する巧さは、時に残酷だよなぁ…。
思春期の少年少女として恋にも性にも接近するのですが、それを答えとするのではなくて、むしろそれが持っている暴力性、凶暴性に目を向けて、ひっそりと離れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
離れてなお、真正に向き合って自分を反射するような相手との距離感を、男女の間に生む。
そこもまた、清潔なクリアーに彩られていました。
音楽の使い方(使わないこと含めて)が非常にシャープで、そこも良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
『真実か、挑戦か』のシーンでひたり、と音が止まって、凄くシリアスで柔らかいものを二人が共有する。他人に目を向けないようにしていた少年が、鞄の奥に生き死にの真実を見てしまった瞬間を切る。
世界から音が消えてしまうような衝撃と、そこで揺るがされる自分を無音が見事に描いていて、凄く良いな、と思いました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
他のシーンでも音のオンオフ、ボリュームバランスの調整は繊細で、見る映画であると同時に聞く映画でもあったと思います。
まぁ話としては萌えナイズされた”最高の人生の見つけ方”ではあるんですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
死によって別れ、取り残されてしまう生者の”それから”を最後の見せ場として、体温の低い主人公が最後の最後で、最初に思い切り走る決断を持ってくるところが、抑圧の効いた運びで良いな、と思いました。
というかまぁ、タイトルの使い方がマジで上手い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
これは相当巧妙なトリックなので、是非未見の方は見て驚いて欲しいポイントなのですが。
猟奇を思わせる文字列を、ここまで清廉に、祈りと切実を込めて使い倒す文学的宙返りが、作品の主軸をしっかりとまとめてます。読後感が凄く良い。
非常にタイトな話で、基本”僕”と桜良ちゃんの二人がともに歩む姿を、ずーっと追いかけています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
”僕”は他人を自分の中に入れないよう、他人に自分を入れないよう自己防衛しているので、他人に興味を持たないようにしている。
なので、世界が広がっていかないわけです。
そこに滑り込んでくるだけの火力が、桜良ちゃんの描写にはあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
いやこの説得力がね…むっちゃキツいんですよ。こんないい子が死ぬこと前提で物語進んでいくからね、オッサンにはマジでキツい。
しかしそこには少女のプライドと優しさと賢さと強さが、ちゃんとある。
『なんでクソ陰キャにスーパー陽キャがグイグイくるの?』という、一見物語の都合で済まされそうな部分が、ずーっと謎として作品を牽引するわけですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
自分としては、その必死さだけが見える序盤でもう泣けて泣けてしょうがなかった。
この子は死ぬのが怖くて、誰かが隣りにいて欲しいんだと思った。
しかしそれを隠し、背筋を伸ばしたまま死のうとしているけども、耐えきれず偶然の…とは、彼女は言わないのでしょうけども、あるいは運命が秘密を共有した少年に重荷を預け、共犯者になっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
少年もまた、流される内に心に少女を染み込ませていく。敬意をもって、他者を遇するようになっていく。
話の軸は”僕”が他人の顔を見て、諦めずに己の歩みを進めれるようになるまでの、非常にマクロな部分にあります。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
作品を彩る死はそれを劇的にするためのスパイスではあるんですが、同時にそれが避け得ない重たさと、だからこその誇りを大事に、美麗な世界に積み上げていく。
その静かで華やかで、どこか寂しい一歩一歩がとても綺麗で、ずーっと泣いてました。ほんっっと年取ると、若造が死ぬ話はキツい。年寄りが死んでもキツいんだけどさぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
高杉真宙さんの訥々とした喋りが、次第に”僕”にしっくりと馴染んでいって、良いキャスティングしたな、と思いました。
映画の文法としてはそこまで目新しいものはなくて、情感主義の基本を丁寧に押さえて、ライティングとレイアウトを繊細に配置している感じなのですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
基礎がカッチリしている土台に、適切に選択された演出が良いタイミングで乗っかり、しっかり噛み合ってトルクを出してるのが素晴らしかったです。
遺書のカットは結構冒険した感じ…つうか桜良ちゃんのドレスがだっせえけども。まぁアレ、原典の挿絵リスペクトだからなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
”星の王子さま”要素の活かし方、自分を閉ざした読書家の切り崩し方も、とても良かったです。”四月は君の嘘”における”いちご同盟”を思い出した。
紋切り型は紋切り型なんだけども、非常に鮮烈な切れ味のある紋切りで、良い話だな、と思いました。”キミスイ”とかキャッチーに消費してしまうのは、もったいないなと思うけども実写公式がやってるスタイルでもあるしなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
花と雨と光と風の演出がすごく冴えるので、そういうの好きな人にはオススメ
僕はロボット人間の生き直し物語が好きなので、そういう視点でも面白かったです。ガムくんのガム貰うところとか、凄くチャーミングでいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
本気のベタ足で、よく刺さる武器をブン回すとどうなるか。そういう強さをよく教えてくれる映画でした。面白かったです。