イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プレイレポート 16/09/22 コードレイヤード『Calamity Break』

昨日はFEARの完全新作、コードレイヤードのGMをしました。付属二本目だよ。

シナリオタイトル:Calamity Break システム:コードレイヤード GM:コバヤシ

シェンツさん:"コードC"蒔苗ユウ:16歳女性:ブレイカー/アームズ:名もなき剣豪 普通を煮固めたような境遇と性格のシンマイ。コードに選ばれ英雄になれると思っていたが、引いたのはコモンクラスの無銘英雄であり、夢見ていたレアクラスには程遠い。それでも腐らず自分のできることを精一杯やりきる、夢見る可能性の獣。

よねちょくん:"99バレット"徳永マコ:29歳女性:チェッカー=シャドウ:ビリー・ザ・キッド とあるエンフォーサーを追い求めつつ、私立探偵をしている妙齢の女性。コードは元警官の夫の遺品であり、復讐対象も夫を殺した相手である。復讐を果たした後、夫の言っていた『本当の自由』を見つけたいと願う渇かじのアヴェンジャー。

田中くん:倉無リディル:25歳女性:サポーター=センチネル:ファヴニール 大商人の家に生まれるものの、ヴェクターの襲撃で全てを失ったコード継承者。強欲さが響き合ったのか、伝説の邪竜を自在に行使する。銭の先にあるものを常に見つめる、冷静なるマモンの使徒。

新米くん:睦見ミミ:16歳女性:ブレイカー=センチネル:六耳狒猴 コード研究者の家に生まれ、死にそうになった所で秘蔵のコードを移植され生き残った。罪悪感からか、他人を護ることに強く固執している。コンプレックスの結果、発現しているのは移植された斉天大聖ではなく、そのミスコピー。

二次元くん:雁党アンジェリカ:30歳女性:チェッカー=ヴェール:カーミラ 世界をめぐりつつ、喪われた芸術の復興を志すディレッタント。ノーブルな気質と響き合うらしく、コードの発現たる”カーミラの聖衣”との相性は良い。

こういう女どもが、AIとの絶滅戦争を生き延びた人類を守護る英雄継承者だ!! っていうRPG、コードレイヤードを遊びました。いやー面白かった。

ルールブックの判型も世界観もデータもルールも、非常にたっぷりとしていて不足がないのに、実プレイしてみると重さがない。数字を処理する流れが非常によく考えられていて、スムーズにキャラを作り、ダイスを振り、判定を行えるようになってます。この不要なストレスの無さがあらゆる場所で徹底されているのは、本当に凄い。

スムーズさとスマートさはデータの処理だけではなく、ロールプレイ支援にも感じられます。色々キャラを作りたくなるPC共通の設定、やりがいと充実感のあるミッション設定、広がりとワクワクのある世界観。『コード』という共通要素への対処をキャラメイクの段階で盛り込むことで、それをやり取りして掛け合いが出来るよう仕上げられている所とか、本当に凄い。

実プレイの現場でどういうことが問題になり、どういうことが『楽しさ』を生み出すのか、よく考え実証しTRPGシステムとして実装する。ゲームを遊ぶ上で必要なんだけども、非常に実現が難しいことを凄く丁寧にやってくれていて、とにかく遊んでいて気持ちいい、楽しいシステムでした。

ACNという共通リソースが適度に強く、強すぎないバランスであること。特技の共通デザインに『使用制限』が既に組み込まれていること。キャラメイクの際に数字が行ったり来たりしないこと。非常に細かい部分が適切にブラッシュアップされていて、それが軽快な心地よさに繋がっているのが、非常に『しっかり作ったなぁ……』と唸らされるポイントです。ここらへんの改良は『やってる』デザイナーにしか出来ないし、『やってる』やつが一番偉くくて強い。

一回遊んで楽しいだけではなく、世界観やキャラクターの広がりが豊かであり、プレイがストレス無く楽しいので、『次』をやりたくなるのが本当に凄くて。俺は今回GMだったけども、俺の考えたスゲー英雄をスゲーデータで再現して、思う存分破滅世界を駆け回りたいもん、今。初プレイでそういう気持ちになれるの、凄く良いことだと思います。

今回は付属シナリオ二本目を遊んだわけですが、一本目で『チーム導入・シンプルな構成・巨大ボス』というパターンを見せ、二本目で『個別導入・ドラマティックなシナリオ・独立ボス』という別パターンを提供して、『んで、このゲームはどういうシナリオ作ればいいの?』という疑問にしっかり答え、想定されるバリエーションを見せているのが素晴らしい。

シナリオ単品としての出来も非常に良くて、シンプルながらモティベーションの生成に無理がなく、素直に盛り上がり楽しく遊ぶことが出来ました。ミドルフェイズの構成をマップ化し、『いつ終わるのか』を明確化して処理できるのは、凄く楽だし楽しいね。

公式NPCヒロインの使い方も非常に巧くて、『テメーでやれよ』という超NPC様でも、『何もしねーのかよ』と言いたくなるヒメヒメヒロインでもない、『精一杯やってるんだけども、PCが助けないと不幸になる』という、非常にいい塩梅でした。

彼女が持っている特別さが世界設定とPCの行く末(つまり実プレイで積み上がっていく、このゲームの行く末)に強く関係しているので、付属シナリオでPCと絆を作ることで『俺のヒロイン』になる作りは、ほんと良く出来てるなぁ。このシナリオやると、あの子の事好きになるし、好きになると確実にこのシステムが面白くなるNPCだからなぁ……。良く出来てるなぁ……。(昨日からこれしか言わないマン)

そんな優れたシステムに乗っかって、卓の方も非常に面白く盛り上がりました。クセのある女たちがそれぞれの事情を抱えたまま、事件解決のためのチームを組み上げる過程がまず面白いし、それぞれのキャラシートを見ながらトスを上げレシーブを返す掛け合いの楽しさも、たっぷり堪能してました。

やっぱ数字のやり取りや世界観に無駄なストレスがないと、ロールプレイや目の前の困難に対処する方に集中力を回すことが出来て、実プレイの密度と速度がグンッと上がる気がします。『巧いシステムは楽しいシステム』という格言が事実だったなぁ……今思いついたけども。

強いポテンシャルを感じる、『今』やって面白く『次』もやりたくなるような、良いシステム、良いシナリオでした。は~遊ッびてぇなマジ!! 良いセッションでした。同卓していただいた方、ありがとうございました。

アイカツスターズ!:第24話『笑顔はなないろ☆』感想

アイドルの一番星は乙女の夢を吸って輝く妖星、笑顔の奥に残忍が宿るスターズ第24話。
お話しの表面だけなぞると次期S4の距離を詰めて、仲良し四人組の楽しい日常をスイーツと一緒に描きつつ、ちょっとした悩み事をみんなでクリアー!! っていうポジティブな展開。
なんだけども、どうにも額面通りに受け取れないぎこちなさが随所にあって、なかなか難しいお話と感じました。

今回感じるぎこちなさの最大のものは、やはり小春ちゃんの扱いでしょう。
ゆめ・ローラ・あこ・真昼の『仲良し四人組』を全面に押し出すあまり、逆にそこに小春がいない不自然さが際立ってしまっているのは、小春がどれだけ四人の間を繋いできたのかの証明でもあります。
組が同じなゆめとローラは様々な試練を共有する度絆が深まってきましたが、個性の強いあこと真昼はまだ時間の共有が薄く、そこまで馴染んでいない印象を受けていました。
そこを巧く埋め、人間関係の接着剤になってくれていたのが、自分を主張することが少なく、相手を受け入れつなぐキャラクターをした小春でした。

主役達が輝くのも、控えめな小春が必要なセリフを投げかけ、抱えている問題や気持ちを引き出してきたからこそ。
特にあこはそれほど大きなドラマをまだ達成していないのもあって、他三人に比べると真ん中で映ることに違和感があるというか、キャラを上手く掘りきれていない印象があります。
そんなあこがお話しの軸に絡む上で、どれだけ小春に頼っていたのかというのは、劇場版を見ればすぐさま判ることです。
小春が物語の中でしてくれたことに僕はありがたさを感じているし、控えめながら芯のある性格を好ましいと感じています。
ゆめを始めとしたキャラクターにも、お話を管理管轄する製作者にも、その献身に報いて欲しいと、常に思っています。


そんな小春は今回、不在にしがちな父親にくっつく形でゆめの家から離れ、話の中心から離れ、『未来のS4』を暗示するS4ごっこから離れていきます。
あのシーンは将来、あの四人がS4としてアイドルの一番星を掴む暗示ではあるんでしょうが、その予感に感動を覚えるより先に、そこに小春がいないことに違和感を感じてしまいました。
彼女もまた『S4になりたい』という夢は語っているだろうに、そこに想像力を伸ばす余地は一切なしか、と。
製作者サイドが受け取って欲しいシーン(エピソード)のイメージとしては、『無邪気で幼い夢が、何気ない日常を共有することで現実に近づいていく』と言うものなんだろうけども、不自然に小春に言及がないことで逆に、キャラが薄情に見えてしまったのは残念でした。

逆に言うと、小春という潤滑剤を抜いても『仲良し四人組』が円満に掛け合いできている様子を映像にして、小春の仕事を減らしていくってことなんでしょうけども……。
人数が多い割にスターズの捌き方はそこまで巧くないので、尖らず他人を受け入れて自然に回せる小春の仕事が、これまで多すぎたのかもしれません。
ぶっちゃけ主役ではない彼女に、主役級の物語的役割が与えられてきた不具合を是正し、本来の『仲良し四人組』を前面に押し出すことは、今のスターズにとって必要な訂正なのでしょう。

小春が人と人を繋ぐ『便利なキャラクター』として使われてきたのも、このタイミングで露骨に舞台から下げられようとしているのも、製作者の都合といえば都合です。
しかしそういう思惑や事情とは関係ない所で、描かれた物語は像を作って、視聴者は必ず何かを感じる。
献身的に友を支え友情を繋ぎ、アイドルという夢に一生懸命だった小春に感じる印象は、基本的にポジティブで前向きなものであり、製作者側の都合は横において、彼女は『報いて欲しい』と思えるキャラクターになってしまっていると、僕は思います。
そして今回の小春の使い方は、なまじっか『彼女がここにいないこと』『彼女がここからいなくなること』への言及を含んでいる分、これまでの献身に報いるものではないと、僕には感じられた。

この先スターズの物語がどう転がり、小春がどういう立場に置かれるにせよ、この違和感を抱え込んだまま『仲良し四人組』が手を取ってアイドル一番星まで登っていく話を、あんまり素直に見られはしないと思います。
退場させるならさせるで、都合に巻き込むなら巻き込むで、創作のキャラクターが与えてくれた感情にふさわしく報い、相応しい物語をちゃんと与えてあげて欲しい。
今回のお話を見て感じたのは、みんな仲良しでよかったねという平和な感情よりも、そういう薄曇り、ハッキリしないモヤモヤでした。
今後のエピソードが明瞭な話運びとテーマ性を持ってキャラを活かし、このもやもやをぶっ飛ばして小春に報いてくれることを、強く願っています。

(あんま無印と比べても意味ないんですが、しおんにしてもユウちゃんにしても、残忍な都合をキャラに押し付けつつ、無印はその身勝手さにとても自覚的で、遅れはしてもキャラクターたちに報いるエピソードを多数用意してくれました。
僕が好きになった女の子たちの善なる気持ちと行動が、けして無にはならずいつか報いてくれる物語だという信頼感が、アイカツが好きになる大きな足場だったのは、過去の自分を省みて間違いないと思います。
小春をどう扱っていくかは、この信頼感を作れるか、はたまた作品の足場を思いっきり切り崩すかの大事なポイントになると思うので、可能であれば誠実にやって欲しいところです。
この気持ちはキャラに誠実に報いてほしいって気持ちであると同時に、そこに愛着を感じた俺に誠実にやって欲しいってエゴイズムでもあるんだけども、ある程度以上そういうエゴに答えてもらえることこそが創作を好きになる土台ではあると思うんで、あえて押し出したい)


とまぁ一番気になった所を長々描きましたが、『未来のS4』初集合としては、結構良いエピソードだった気がします。
特にお姉ちゃんクエストを攻略してキャラに空白があった真昼は、思う存分抑えていたポンコツ力を発揮し、強く自分を主張していました。
いきなり瓦割ったり、スイーツの話になると早口になったり、残念な部分が多いほど、自分を抑圧しなくて良くなったんだなぁと微笑ましい気持ちになる。

あこもツンデレ不器用高飛車キャラを推してますが、真昼が夜空関係でキャラの地金を見せられたのに対し、いまいち彫り込みが足りない印象のままだなぁ。
ここら辺はスターズのキャラの多さと捌きのマズさが、正面からおッ被さっているところだと思う。
賑やかで可愛いのも良いんだけど、アイドルに対して絶対に譲れない何か、アイドルをテーマにした作品で絶対に必要な核を、まだあこには感じられないんだよな……。
それが見えてくるのは今回のようなオフ・エピソードではなく、アイドルとしてバチバチ鎬を削るキャラエピソードだと思うので、どっしりしたのがもう一つ欲しいね。

『笑顔を作る』という共通点でスイーツとアイドルを繋げて、ちょっとした学びを生む展開はまぁまぁ良かったんですが、ここも少々ぎこちなかった気がします。
依頼に来る子供の登場が急で、ダンドリ感が隠せなかったというか、もうちっと四人組と重ね合わせられる要素を持たせても良かったんじゃなかろうか。
まぁ特に障害もなくダラーっと過ごしても、エピソードの取れ高減るだけなんで難しいとは思うけども。


そんなわけで、『仲良し四人組』は仲良くなりつつ、そこから弾き出されるものの描き方に、モヤッとしたものが生まれるエピソードでした。
『仲良し四人組』の輝く未来を素直に受け取るためにも、小春に報いてやって欲しいと、彼女が好きな視聴者としては思います。
生まれつつある『見せたいもの』と『見えるもの』のギャップを埋められるかどうかは、実際に描かれる物語だけが証明してくれると思います。
来週以降もアイカツスターズ、楽しみです。

美男高校地球防衛部LOVE! LOVE!:第12話『愛は地球を救う』感想

さんざん逃げたりスカしたりしてきた今風ヒーロー物語、最後の決戦くらいはがっぷり四つのド根性だ!
てなわけで防衛部二期も最終回、溢れかえる感情と暴力が渦を巻き、寂しい子供が安住の地を見つけるまでしっかりやってくれました。
『終わり良ければ全て良し』じゃあないですが、別府兄弟の感情の泥をすべて吐き出させ、有基の危うい部分もちゃんと描いて、最後は胸襟を開いた裸の付き合いで〆る展開が、凄く真っ当にヒーローしていて気持ちが良かった。
強羅あんちゃんには本気になる所含めて、いい具合にシニカルさと熱血のバランスを取った最終回でした。

ここを逃せばもう心をぶつけ合う猶予がない最終話、流石の今時高校生集団も大本気になり、ガッツリ肉弾戦で魅せてくれました。
別府兄弟がアイドルという仕事の苦労や背負った闇を公開したタイミングで殴り合いになると、暴力に訴えるしかない気持ちの強さが拳に乗って、物語的必然のある見せ場になるから、凄く良いよね。
防衛部側も強羅さんへの恩義以外に、バカでC調ながら自分たちなりに必死にやってきたヒーロー稼業にツバ吐かれて、本気で受け止める体制ができていたのが良かった。
逆に言うと、ここで噛み合う気持ちよさを高めるために、今までさんざんスカして逃して来たんだろうしね。

殴り合いをセッティングすることで、心の奥底に隠してきたものが吹き出すエネルギーが生まれ、キャラクターの地金が見えてくるのも、戦闘を物語に組み込む大きな理由だと思います。
暴力に屈しないことは即ち、暴力に乗っかった相手の気持に負けないということなので、殴り合いと喋り合いを同時に進行させることで、お互いが抱えたものを引き出し合いながら、物語的な勝敗を白黒はっきり付けれるわけです。
今回で言えば、これまでさんざんキラキラ☆アイドルを演じてきた別府兄弟が、心に溜め込んだドロドロを吐き出す場所として、殴り合いがいい仕事してる。
強羅あんちゃんに成長した姿を見せるためだけにアイドルしてきたなら、そら色々貯まるわな……そして寂しい子供に付け込んでアイドル稼業させてきたダダチャの邪悪さが、一層際立つ展開だった……。


別府兄弟が防衛部に優越するための理屈として、『綺麗事より私利私欲のほうが強い』『理性より感情のほうが強い』というのを持ち出してきたのは、幼い彼ららしいなと思いました。
防衛部はヒーローに憧れを抱かない、思春期ちょっと超えた覚めた十代なわけで、まだ子供のままの別府兄弟よりもそら感情は弱かろう。
しかし綺麗事でやっていようが、巻き込まれた惰性でダラダラやっていようが、防衛部にとってヒーローが『自分の物語』になっているのもまた事実で。
そこには分かりにくいけども愛や感情がちゃんと篭っているわけですが、実はこれは別府兄弟がアイドルに対して抱く感情と似ていると思う。
敵だけではなく自分たちも攻撃する理屈が論破されたことで、アイドル稼業への愛に素直になって、心からステージ出来るようになる終わり方に繋がるのも含めて、敵として良い理屈つけたと思いました。

そしてそこから『感情で勝負するなら、有基には勝てない』という展開をするのが、なかなか凄くて。
言われてみれば防衛部で唯一、綺麗事を自分の感情込みで全部信じ込んで、ヒーローに必要なセリフを言ってきたのは全部有基です。
『綺麗事』と『感情』が一切遊離せず、現実と理想の間にギャップを感じていない有基が、別府兄弟とは別の形で子供であり、有基が『ヒーロー』を心から信じる子供だからこそ、シニカルな防衛部はギリギリ『ヒーロー』でい続けることが出来た。
その気持が暴走すれば、そりゃ兄弟二人きりの寂しい感情より激烈なものになるのにも、納得がいきます。

そういう気持ちが暴走し、兄恋しの『感情』が暴力に乗っかった時、シニカルだったはずの防衛部が悪しき力の行使を諌め、『ヒーロー』の本質を有基に問う流れは、俺本当に好きです。
防衛部のスカシた高校生共が心の奥底にアツい部分を持っていたというだけではなく、有基の子供っぽい『夢』や『愛』が一方通行なのではなく、仲間たちにもちゃんと伝わっていたのが最高でした。
話しを牽引してきた有基が道を間違えそうになった時、引っ張られていた側の防衛部がしっかりあるべき道に戻してくれるのは、真心をしっかりキャッチボールできる良い仲間なんだと感じられて、非常に良かった。
正直『ヒーロー』ものとしてみると、有基一人に負荷がかかりすぎる構造だったので、この土壇場でしっかり『ヒーロー』の証を立ててくれたこと、しかもそれが『敵を倒す』暴力ではなく、『暴力を制御する』『真実を伝える』愛の方向だったのは、見事な大逆転でした。

その後有基が別府兄弟のロジックを倒しにかかるシーンは、巧いこと『勝ったやつが偉い』という一番イズムを壊して、ゆるふわヒーローパロディだったこのお話全体を称揚してました。
大真面目に『ヒーロー』したくても、全てが宇宙TVの仕込みでしかない世界において、シニカルな態度でスカして逃げる防衛部のやり方は、その構造自体をひっくり返す愚者の妙案なわけです。
そういうやり方を続けつつも、一緒に風呂に入れるような気の置けない仲間たちと時間を共有し、自分たちなりに結構頑張って『ヒーロー』してきた(つまり、物語を積み上げ、視聴者と一緒に見守ってきた)を『大切なものだ』と断言するのは、お話が幕を閉じるこのタイミングでは、絶対必要な見せ場だったと思います。
やっぱ好きになったお話には、『俺たちもこのお話が好きだったし、良いものだったと思っている!!』と、堂々と大声で叫んでほしいもんだし、それに答えてくれた防衛部はいいアニメだ。


強羅あんちゃんが目覚めてから一気に対立構造が崩壊していったのは、まぁこれまでの描写を考えると納得というか、ここをスムーズに流すために別府兄弟が『ただの寂しい子供』だったと言うべきか。
強羅あんちゃんがやったのは、子供の成長を忘れず覚えておいて、ちゃんと褒めて抱きしめてあげるっていう、『ヒーロー』じゃなくても大人なら誰でもやるべき行為。
だけども、別府兄弟の周りにいたのは自分の都合を押し付ける嘘つき親父と、その隙間に滑り込んできたダダチャだけだからね……別府兄弟と強羅あんちゃんとの接触を、頑なに拒絶しながら話が進んだのも納得だ。

大団円でまとまったのは別府兄弟が究極的チョロ蔵だっただけではなく、事前の戦いで心の泥を全部吐き出していたからでしょう。
有基が『暴走』という弱さをちゃんと見せ、特権的な天使ではなかったことも含めて、最初で最後のガチンコバトルは、お話が収まるべき所に収まるための出口として、よく機能していました。
一回本気でバトルすれば感情が収まりどころを見つけてしまう話だから、逃してスカす必要があった、とも言えるか。
どっちにしても、感情がぶつかり合い行き場所を見つけるタイミングをしっかり測って、必要な頃合いで必要なシーンを持ってきた結果の、気持ちのいい終わり方だったと思います。

ラストがお風呂で終わるのも、このアニメを貫いてきた象徴の系譜をしっかり踏襲していて、とても良かったです。
温かいものに包まれ、心にたまったものを全て出しながら、一切の覆いなく、平らにお互いを見せ会える場所。
作中言葉でも説明していましたが、このアニメの『銭湯』というのはそういう象徴的意味を強く持っていて、だから第4話のシメでサルバトゥーレ兄弟は風呂に入ったわけです。
僕はあの話が特に好きなので、あのシーンを再話するように穏やかにこの話が終わったの、本当に良かったですね。


つーわけで、シニカルでポップでサービス満点のヒーローパロディアニメも、無事終わりました。
ゆるーっとした高校生たちのヌルい掛け合いを存分に詰め込むべく、ラスボスの攻略難度を下げ、その攻略方法をゲストに仮託して幾度も語る、構成の巧さ。
正面からぶつけたら話が終わってしまうので、ラスボスの問題をゲストに背負わせ、擬似的に答えを予言しておくエピソードの作り方。
『銭湯』を舞台にすることで合法的に男の裸体を乱舞させつつ、そこに安らぎのメタファーを仕込んでほっこり終わらせる巧妙さ。
メタネタやぶっちゃけ、シモネタを交えつつも、妙に軽妙で清潔な笑いの作り方。
好きになれる部分が沢山ある、いいアニメでした。
肩の力を抜いて楽しめるコメディを上質に仕上げるためには、どれだけ精密にお話を組み上げなきゃいけないかを確認する意味でも、見れてよかったなぁ。

斜めから切り込んでいるヒーロー・フィクションとしても、非常に独特のスタンスを感じられ、楽しめました。
強羅あんちゃんという圧倒的『大人』に見守られつつ、有基という『善き子供』、別府兄弟という『悪しき子供』を対比的に配置して、そこから少しずれた所に防衛部を置く作り方は、シニカルな空気を維持したままアツい話もできる良い見せ方だった。
ラスト一個前までは有基がとにかく引っ張って、最後の最後でその有基の暴走を防衛部の『ヒーロー』が止め、問い直すという構図も、これまでのシニカルさがアツさに変わる最高の仕掛けで、素晴らしかったです。
こういう斜めからの勝負は、まさにパロディだけが出来る戦法だったと思うので、期待していた所をしっかりやりきってくれた満足感があります。

キャラクターも不思議な存在感と手触りのある面白い奴らで、みんな好きになれました。
印象的な個別回があったんで、特に有基と強羅さんが刺さってるけども、これは二期しか見てないからだろうなぁ……そら一期で掘り下げるポイントだもんな、主役のキャラクター性って。
最終回で赤面している錦ちゃんが可愛かったので、『痴話喧嘩』らしい一期もちゃんと見ないとなぁ……。

そんなわけで、美少年たちにドキドキしたり、独自の『ヒーロー』語りに熱くなったり、ゆるい日常生活をまったり楽しんだり、色々な楽しさを与えてくれるアニメでした。
やっぱしっかり作ったエンターテインメントは、見てていい気分になるな……素晴らしい。
美男高校地球防衛部LOVE! LOVE!! いいアニメでした、ありがとうございました!

クロムクロ:第25話『鬼の見た夢』感想

クソ異星人との最終決戦も終わって全てが平和になったんだー!! とは行かない、クロムクロラスト一個前。
このまま大団円では話数余るなぁと正直思っていたが、宇宙大決戦は起きてるは最後の敵は人間だわで、一気に転がりすぎだろ正直!!
富山の土着性と結びつきつつ描かれた、『異人』が受け入れられる世界の優しさが好きだっただけに正直衝撃を受けていますが、まぁいつものごとく、書きながらまとめていこう。
まぁ誰が『鬼』で誰が『人間』か、この話で一気に曖昧になったな……。

というわけで、敵の本丸をぶっ潰し当面の敵がいなくなった地球。
これまでの暖かな空気が全て嘘だったかのように、人類は超技術を求めて策謀を深め、『戦場』で絆を深めたはずの『異人』たちは実験動物扱いされる。
これまであまり描かれていなかった部分だけに衝撃でしたが、エフィドルグの技術を考えると納得できる部分もあり、それにしたってヒデーよマジと思う部分もあり、複雑な感じだ。
『戦場』が開放された象徴としてレンブラント光が差し込むところから始まって、富山の外から『平和な現代』の悪意が滑り込んでくる展開と考えると、なかなか性格が悪い。

勝利したからこそ迫ってきた暗い雰囲気を反映して、洗脳された人には治療法はないし、奴隷労働させられた人も結構死んでいるという、シビアな現実が突きつけられました。
ベスを助けるために洗脳されちゃったリタも実質廃人かと思うと、勝って喜んでばかりもいられないし、そういう世界が待っているなら『鬼』たちへの扱いも少しは納得……いかない。
ホワホワしているようで結構シビアに人死ぬ話ではあるので、今まで考えなくても良かった部分が表に出てきた、という表現が一番正しいのかなぁ。
『人間』であるために『鬼』になったボーデンさんに、おそらく米軍からクソみたいな指令が届く所、それを燃やす炎でたばこを『口に入れようとして出来ない』演出が入るのが、ひどく苦いね。

ここら辺の変化を見せるために、ハウゼン医師とスカリーもどきがうまく使われていました。
ハウゼン医師は元々マッドな人で、エフィドルグと総力戦やってたときはそれも魅力だったんだけど、人間同士で内ゲバやる余裕が出てきた今、それは恐ろしい暴威に変わる。
でもそれもハウゼン医師の一側面だし、野戦病院で人の命を救った彼の行いが、今のマッド・サイエンティストっぷりで消えるわけでもない。
苦くて複雑な味がようよう出てきていて、面白い使い方をされているなと思いました。

国連のインスペクターは途中完全に存在が消えていて、正直『ん? 読み違えたかな?』と思ってもいましたが、剣之介をあくまで『異物』として疑い排除する象徴として、お話に戻ってきました。
ムエッタの説得に耳を貸さないヨルバと合わせて、そうそう簡単には『異人』に居場所を与えてくれない世界のドライさを、巧く象徴していると思います。
由希奈がムエッタに送ったケーキ(『口に入れるもの』)が無残に踏みつけにされるように、みんながみんな、カレーとオムライス食って仲良くってわけにも、行かないもんな……行ってほしかったけどねマジ。


戦争が終わってグッと様相を変えてきたのは、学校の面々も同じで。
美夏の『現実と向き合わなきゃねー』という、ひどくありふれた言葉が、ただの学生連中と『異人≒鬼』とで全く意味合いが変わってくるのは、凄く残酷で残念だ。
進路を考える余裕がある学生の『日常』に、剣之介は接近しつつ同化する権利を与えられなかった、ってことだもんなぁ……。

サムライとして生きて戦い、勝って生き延びてしまった剣之介は、様々な因縁を背負って『学生』ではなく『武辺』としての生き方を選び、ゼルとムエッタを故郷に送り届ける狂気の賭けに出ようとしています。
最後の最後まで自分の望みではなく、他人からの恩義のために『戦場』に飛び込んでいく姿は彼らしいのだけども、あまりにも寂しい。
ただ一人カルロスの『今』を肯定し、『お前の映画は面白いと思った!』と大声で叫んでくれる男が、あまりにも危険な存在呼ばわりされて、死ぬか実験動物扱いされるかしかない『平和な現代』。
そこから彼を遠ざけ、人間として遇する余裕がエフィドルグとの『戦場』を必要としていたのは、なんとも皮肉だ。

そんな彼に寄り添い、運命をともにすることが気づけば当然になっていた由希奈は、愛ゆえの遠ざけられ、ひとときの別れを迎える。
まー『戦場』に鍛えられて、自分のやりたいことをはっきり見据えるようになった以上、剣之介の『分の悪い賭け』に協力しないわけがないけどさ……凄まじい速度で家族と別れる決意固めてるもんな……お嫁さんだからしょうがないか。
これまでじっくりと繋がってきた『武辺』と『普通の高校生』との絆が、一気に断ち切られる展開になってしまったけども、今はそれが無駄なものではなかったと思えるような収め方をして欲しい
と強く願います。
剣之介と別れるにしても、共に進んでいくにしても、嘘のない運びにしてほしいもんだ。

残り二話で一気に話の舵を切り替えてきたので、どう収めるかは非常に気になるところです。
剣之介の『分の悪い賭け』が成功して、エフィドルグ由来の技術を本船ごと宇宙にかっ飛ばしてエンドってのが、ひとつの終わり方かなぁ……『異人』が結局受け入れられない終わりなのは残念だが。
対決するべき相手が決戦に勝てば終わるエフィドルグではなく、人間の複雑なカルマそのものなので、完全なハッピーエンドたぁ行かないだろうしな。
今回意味深にカメラに映らなかった、ソフィ&茂住がどう動くか気になるところだなぁ……。


そーんなわけで、『狡兎死して走狗烹らる』を地で行く、世知辛い展開でした。
そういうシビアさは、例えば逃げ出した由希奈への対応とか、徐々に受け入れられていく剣之介とかで距離をおいていく話かと思っていたんだが、最後の最後で牙を向いてきたねぇ。
しかし無視したり切り捨てたりした部分ではなく、情で包み込んで遠ざけてきた部分ではあるので、ある程度納得は行く。

問題は、残り一話でこの方向転換をどう収めるのか、ってことなんですが……どうなるだろうか。
24分あればなんでも出来る気もするし、これまで真っ正面からは扱っていなかった題材すぎて、調理が難しい気もする。
どちらにしても、一気に油断のならない最終話となった次回。
これまでの物語をしっかりとまとめ上げ、愛すべき武辺者と普通の高校生の行く末を、しっかり描ききって欲しいと思います。