イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

図解・文字の起源と歴史

アンドルー・ロビンソン、創元社。文字に関する包括的な入門書。楔形文字に始まり、ヒエログリフ線文字Bマヤ文字、ロンゴロンゴや線文字Aなどの未解読文字、そしてアルファベットに漢字と、通時的分析手法を持って、文字の発生と発展を丁寧に追いかけている。
そのために使われている学問領域は、考古学・文献学・歴史学・文学・音律学・音声学などなど、さまざまにはばひろい。だが、学際的な内容にありがちな、適当なトリビアールをひけらかしてはいお仕舞い、という内容の本では、この本はない。非常に明晰な知性と、的確な表記を用いて、的確なタイミングで的確な文献と資料を提示し、深い読解と理解を提示してくる
そして、「図版」の文字は誇張でも虚偽でもない。一ページに一つの割合で、貴重かつ美麗な写真や図版が適切に示され、それに基づいて古代文字を「実際に解読」できるのだ。あくまで入門書であるとはいえ、その方法は適切であるし、何より読みやすく、楽しい。それは学識と表現力の豊かで稀有な結合である。
ここに書かれているような文字をもって、「僕は」「あなたに」何かを伝えている。どうやら人類にとって、文字というものは非常に重要な役割を持つのは間違いない。それに対する考察と知識を深めるための材料として、そして一冊の学識豊かにして、可読性が高く、読んでいて面白い本として。この本は素晴らしい本である。傑作。