イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スポーツとエロス

アレン・グットマン、柏書房。スポーツ行動とエロティシズムに関する考察書。まずはたくみな構成に引き込まれる。歴史的証左として、ギリシア期のさまざまな運動から現在のボディ・ビルドまでをまず分析し、そこからより根源的な、スポーツとエロティクスの詳細な分析にいたり、アクティーブなフェミニズムと、ネオ・マルキズムの「潔癖な」反応への反論を持って終わる。
その両手に握られているのは精神分析ジェンダー・クリティクスである。エロティシズムが性差と肉体に関係する異常、この武器の選択は正解だと思うし、その扱いも非常に適格だ。実際的な研究が困難であるとして、あえて19〜20世紀に研究対象を絞る姿勢にも好感が持てる。といっても、ギリシア期の肉体運動と同性愛に関する分析と考察は、他に類を見ないほど鋭いものがあるのだが。
フロイト心理学とフェミニズムはいまいち仲が悪いわけだが、それを批判的に磨き上げ、丁寧な論証の武器として、スポーツ言論という場においてあからさま過ぎるほどあからさまな関係性がありながら、あえて清潔に無視されてきたエロティシズムへと、筆者の筆は入っていく。それは断じてネクロフィリックなポルノではなく、バイオフィリックなエロティシズムなのだ。これは、巻末に付録として適切に別記されている。
さまざまな意味と側面において、この本は非常に的確な本だ。学術としての方法論、取り扱うテーマへのアプローチ、そしてその現実性、現代性への意識。少々文章に細緻さがか欠けているきらいがあるのが難点だが、なかなか刺激的な本であった。名著。