イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ルネサンス哲学

チャールズ・B・シュミット&ブライアン・P・コーペンヘイヴァー、平凡社。タイトルどおり、ルネサンス−この本の中の適切な表現を流用すれば、近代初期−の哲学に関する概要書。概要書であって、入門書ではなかった。大著であった。とんでもない読み応えと歯ごたえ、そして肩こりと眼精疲労を残して、二日がかりで読み終えた本である。
哲学史においてルネサンス哲学はたいてい飛ばされるが、その飛ばされた部分はまた、いかにして近代が(そして原題が)生成されたかを考え、理解する上で必須にパーツでもある。と、この本を読み終えた後なら言うことができるであろう。概要書として非常に広範な分野を扱いつつ、個別分析に関してはとにかく徹底した第一文献の調査(その中には手書写本も含む)を持って望む。参考にされた文献の広範さ、視座の広さ、論理の徹底、そして広範な知識に基づいた可読性。
徹底して学問書であるこの本は、ルネサンス期において重要な哲学分析を過不足無く含んでいる。プラトン主義や懐疑主義はもちろんだが、無視されがちなアリストレテレス主義や、中世の枠の中に押し込まれてしまいがちなストア主義などにも十分に紙幅を裂き、強烈な分析と丁寧な説明を与えている。
少々歯ごたえがありすぎる本だが、同時に興奮を以って読ませられる本でもあった。そして、その妥協のない姿勢は、近代初期としてのルネサンス哲学が、いかに我々のたっている場所に繋がっているかを考察する最良の足場になる。傑作である。