イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ダーティ・ホワイト・ボーイズ

スティーブン・ハンター、扶桑社ミステリ。つうわけで再読。そういえば、スワガーサーガは読み返したけどこの番外編は読み返していないな、と思って読み返した。
やっぱりハンターは面白い。ボブのネガ(「ブラックライト」で判明するとおり、そのものなのだけど)である「白人の屑の王」ラマー・パイの一大破滅絵巻といえる作品で、ボブを書いた筆そのままに、ひどく頭の切れるヤクダネを書ききっている。これをピカレスクというかどうかは判らないが、ともあれどえらく面白い小説であるのは確かだ。
やはりラマーの奇妙なカリスマ、父性を書ききっているところにこの小説第一の魅力があるわけど、このワルの中のワルが作り上げた擬似家族の、奇妙な暖かさが、このワルの破滅に関する物語で一つの変奏音になっているのは間違いないだろう。ラマーの気を紛らわせるために作り上げた偽者のケーキを偽者の家族が食べるシーンは、オーデルの無邪気さの豊かな描写と相まって、この小説に強さを生み出している。やはり、ハンターはいい。