イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

新興宗教オモイデ教外伝 3

原田宇陀児小学館。ガガガ立ち上げの時にそれなりに柱だったこのシリーズも、三巻で完結。話としては二巻のモロ続き。しかも大きな物語としては序章の段階で終わった、というなんとも悩ましい感じの最終巻。なのですが、小説としては「寂しさ」の描写というか、文字での切り取り方が相変わらず巧く、読んでいて心地よい。
寂寥感とは多分、手が届きそうで届かない距離感と肌触りから来ると思っているのですが。この本の風景や人物や出来事に詰まっている、どうにも手が届かない間合いの巧さ、というのは多分原田宇陀児特有の距離感覚であり。そこがもどかしさにならず、諦めを伴っていくのは、元になった大槻ケンヂの小説とそれに付きまとう僕の個人的な感情を含めてなお、やはりこの作者特有の武器だと思うわけです。
確か二巻の感想を書いたときも取り上げたと思うわけですが、日本の田舎特有の阻害された空気や閉じた息苦しさを切り取る手腕の巧みさは、やはり特筆に価するべきだと思う。特に今巻では、ミステリ(っぽい)部分を切り捨てて、古臭い日本の小説という、個人的には原田宇陀児が一番スムーズに書けるジャンルに足場を移したことの利点が、鋭く飛び出ている。「サウスベリーの木の下で」で感じた懐かしい距離感が、今回は所々に出た。ラストシーンとか。
正直な話しをしてしまえば、お話の枠として予感させられている宗教戦争を書かずに終わったことに関して、僕はどうとも思わない。書いたら書いたで、あんまり面白くならないだろうな、という匂いもするし、別に書かなくても良いと思う。ただまぁ、オリジナルのオモイデ教が持っていた寂しさとはマタ別の、しかしよく似た肌理の寂寥をこの本は持っていて、それを僕が好きだ(それこそ、ある種の途中棄権を認めるぐらい)というのは事実だろう。オリジナルを書いているというので、とても楽しみである。