イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

俺物語 1&2

アルコ×河原和音集英社。このビックウェーブに乗るしかないですね、って感じで、見事このマンガがすごい!2013で女子部門一位を取った少女漫画をミーハーに購入。まぁ流行ってるからには理由があるんだろうなーとか思いながら読みました。……面白ッ!!! この漫画超面白いよマジ!!!! そんな感じのリアクションが発生し、四回くらい読み返した。おもしれー。
あらすじとしては、ゴリメンとイケメンがいて、ゴリメンが好きになる娘はいつもイケメンが好き。いっつも恋が上手くいかないゴリメンは、今回の恋もイケメンに譲ろうとするけど……みたいな、結構オーソドックスな導入と展開です。つーか色々古臭い。ゴリメンこと武男クンは超がつくほどのナイスガイなんですが、それを表現する表現は痴漢から女の子を守る、溺れている子供を飛び込んで助ける、落ちてきた鉄骨を受け止める。昭和の表現法です。
だが、それがいい。男の子たちは色々擦り切れながらも、武男くんくらい不器用で、実直で、ただ他人のことを思いやり迷わない男になりたいと常に憧れている。それは、時代が過ぎようと変わろうと本当のことです。武男くんくらい迷わず体を張りたいし、ただ私心なくみんなに優しくしたいと思っておるのです。だけど、なかなかそれは出来ない。世界もそんなに優しくない、自分もそんなに強くない。
しかしながら、この漫画の世界はとても優しい。内面がいかに超雄だろうと、外面ゴリラだと認められない、外見が十割みたいな世知辛い世間ではないわけです。武男くんの恋は一話で実るし、彼を外見で敬遠してたイマいギャルたちも、命を救われて武男くんの男気を認める。まぁ大火災から人命救助してもらって、その人がゴリメンだからってだけで認めないのは人格破綻以外の何物でもないと思うけども、そういうことすら、現実にはある。
でも、この漫画はそうではない。僕らが持っているであろう「真心へのファンタジー」みたいなものを、丁寧に優しく掬いあげてくれる。武男は圧倒的に強く優しく正しく、おそらく読者はみんな「コイツと友達になりたいな」「報われてほしいな」と思う。その想いは凄く丁寧に拾われて、気持よく解消される。ココらへんの巧さが、読み切りから連載に上がる反響を生んだんではないでしょうか。
生物学的性別がオスである生き物からすると、読み切りというスタートは超ラッキーで、何しろめんどくせー恋の鞘当てはとっとと終わり、可愛い可愛武男とその想い人大和ちゃんはソッコーラブラブになる。そうなってほしいなぁ、と思うままに。ああ素晴らしきかな快楽原則。大和ちゃんもトゥーピュアピュアガールで、そのくせ生っぽい欲望もちょっとある、いいキャラ立て。二話の悩みとか、ド本命からちょっと外した変化球でストライク取るのほんとうに上手いなこの漫画。
あと、男の友情物語としての完成度が高い。親友のイケメン砂川クンが性格も超イケメンで、「え、最近の若い子ってもっとイジワルなイケメンが好きなんじゃないの? 入江君とか」みたいな二重の勘違いをふっ飛ばしてくれるいいやつ加減。とにかく直球勝負で暑苦しい武男と、ひねくれてるけど空気読めまくりの砂川クンの、コンビとしての相性の良さが、バディモノとしてのテンポの良さまで生んでいるという贅沢さ。うーむ、凄い。
さっき言った世界の優しさにもつながるんですが、砂川クン以外のオスにも武男はモテモテ、という設定も、僕は好きです。こんな好漢がモテねぇわけねぇだろという感情を、男が埋める汗臭さ。本当に少女漫画なんだろうか。二巻で武男に挨拶してくるクラスメイトが、硬軟取り混ぜていろんなタイプいる所は、地味ながらとても好きな表現です。オタクもギャル男も、みんな武男が好きや!!
自分はあんま少女漫画のリテラシーが豊かではないので、ビミョーに自信がないところですが、漫画の「絵」としてみると、要所要所で刺してくる表現があるのも、やっぱ漫画としての太さにつながっている。俺が特に好きなのは、砂川クンの姉さんが崩れ落ちるところと、大和ちゃんが武男とキャフフするときに妖精みたいな顔になるところ。
とまあ長々書きましたが、漫画としてのプリミティブでベーシックな面白さがたっぷり詰まっていて、凄く面白いです。やっぱ流行りに乗るのもいいもんだな! とか思ったりした。そしてそれ以上の、「こうあって欲しいが、そうではない」という感情を充足させる、創作の妙技みたいなものを痛感させてもらえたことに、とにかく感謝。ええマンガやほんま。