イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

しまいずむ 3

吉富昭仁芳文社。レズカップル四組がアホらしい日常を楽しく暮らす漫画の最終巻。小中高と揃ってたカップルに、大学生が追加。外見ロリにマニッシュな長身娘が主導権握られつつ時々攻守交代、というセッティングは、吉富先生らしい歪み方だなぁと思った。この漫画でキャラが増えるのは、時間経過がないギャグ漫画というジャンルの中で、今までのキャラではできないことをやってもらうためだ。
んで、大学生にしかできないことというのはまーセックスのことで、この漫画での性行為の扱いというのはまんま21話でサキちゃんが言っている。僕はあの発言はヘテロとかゲイとか抜きに名言なので、色んな人に読んでほしいものだと思うがそれはそれ。大学生の性意識に影響を受けて、高校生カップルが一つの線を超えて、さて中坊たちはどーなんのかな、と思ってたら雑誌が終わっちゃったよー、という。ぬぅうう。
まぁセックスすりゃ偉いわけでもないし、中学生には中学生にしか到達できない間合いというのがある。この漫画の登場人物は、一般的な同年齢の女の子より(作者の趣味とIQを反映してか)色々進んでおりますが、そういう人生の季節感みたいのはやっぱ瑞々しく切り取れていた漫画だったと思う。メガネ姉妹は色々とそういう問題を超越してる気がしないでもないが。
つーか芳子がもはや妹狙いを迷彩にした遥狙いを隠すつもりがなくなっていて、なんというかそういう宙ぶらりんな状況で如何にバレずに至近距離戦闘(隠語)を仕掛けていくか、自分のいやらしい純愛に気づかない遥ピュアピュア可愛い、みたいなすげー捩れた変態性が溢れだしていた。遥もあそこまでクロースクオーターコンバット(隠語)狙われてるんだから、ちったー警戒しなさい。
ギャグ漫画としての切れ味は相変わらず銘刀の域で、主に足にフェティッシュを宿しつつ描かれるヘンテコなポーズの面白さ、主に中学生どもの頭の弱さが鋭く刺さってくる。「ほんとバカだなコイツラ」と心底思えるのは、本当素敵なことだ。爆笑のみならず、24話で公開されたマリの部屋の、「模型とダムと少女」つーマニアックな取り合わせでホッコリできる所とかも、凄くいい。
最初の方に僕は「この漫画は時間が停止してる」って書いたけど、完結記念に見返してみるとやっぱり、どの子たちの距離も話が進むにつれて変化し、実際に何かの行動があって移り変わっている。それはつまり、生きているということだ。百合という一つのジャンルが固定化・固着化していると感じることが少なくない最近、こういうお話がよりにもよってしもネタ多めの変態ギャグの中で書かれた、というのはとてもいい事だと思う。
物語を消費していくとどうもこー、自分の都合のいい、既知で変化がなく”死んだ”ものを求めたくなってくる。しかしやはりあらゆる物語は、固定と生死から抗いながら”生きて”いるべきで、この漫画はとても生き生きしていたなぁと思う。変態ギャグとマジ百合の取り合わせが新しかったとか、吉富先生の漫画力が流石だとか、そういうこと(だけ)ではなく、物語が人生を切り落とす切断面がやはり、滑らかだった。
こうやってつぼみをその最初から支え、ついに終わった漫画ふたつの感想を書いてみると、そういう位置にあるだけのことはある漫画だったと、つくづく思う。ジャンルやら読者やら色んなものとの間合いの中で、どういうお話を描いていくのか。「私」は何が書きたくて、このお話は何処にたどり着くのか。物語のちからはやっぱり、そういうことに作品で答えていく、確かな誠実さに支えられてる。そう実感した。吉富先生、お疲れ様でした。