イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ハクメイとミコチ 1

樫木祐人エンターブレイン。9cmの妖精さんたちが、日々を楽しく暮らす漫画。きつい言い方をするが、入江もしくは森のフォロアー同窓会雑誌だったフェローズ。そこにポコンと浮かんできた、尖った個性とフェティッシュな趣味性、そしてそれを受け入れさせる一般性を有した高水準な漫画で、正直ビビる。やるじゃんフェローズ。
そういうパワーの源泉はなんといっても「絵」で、きっちりみっしりと書き込まれた背景が、9cmの人々の視線で、彼女ら(彼らなんだろうか)が生きている世界をダイレクトに伝えてくる。ちょっとますむらひろしリスペクトを感じる、自然を生かした人工の生活描写。溢れるファンタジーと妄想と、イキイキとした世界の匂い。妖精さんたちの可愛らしい表情もひっくるめて、とにかく「絵」の説得力が高い。
それに支えられて、ハクメイとミチコのシンプルで人情味(妖精味?)溢れるエピソードが積まれていくのが、読んでいて心地よい。カメラを地面に据えて、飯を食い仕事をしてたまに命がけになりという、日々の暮らしを地道に丁寧に描く筆致は、ゆっくりとしていて繊細で、柔らかい生活感に満ちている。サブキャラたちも気持ちのいい奴らばかりで、仕上がっている世界観に負けないどころか、その魅力を増幅するパワーに満ちている。イワシの親分が、僕は好きです。
ぶっ飛んでミクロな世界のはずなのに、どこか懐かしさと親近感を感じる世界観の作り込みは、椎名誠のSFにも似ている。バッタの郵便屋、びいどろのリズムで動く骨格、積み木で構築された乱雑な港町。奇想ながらも、物珍しさや隔絶を感じさせることなく、「なんかイイな」「ここに行ってみたいな」という異国感を生み出しているのは流石だ。それはつまり、読者が置いてけぼりにされていないということだからだ。
とにかくいろんな場所の精度が高く、それでいてクオリティやオリジナリティに振り回されれず、漫画として楽しく読める仕上がり。合間合間のコラムも作品世界を広げていて、凄くいい。長く続いて欲しい、非常に良い漫画だ。あんま関係ないが、透けて見える影響が(作者が同人で活動していたジャンルである)東方シリーズからか、その一個奥からなのかは、個人的にちょっと気になる。