イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

AKB49 13

宮島礼史×元麻布ファクトリー、講談社。前回一段落ついたアイドルスポ根漫画も、はや13巻目。今回はイマイチ華がない吉永さんが覚醒する巻であり、同時に凡人代表こと49のポップこと水野さんが裏主人公として大活躍する巻でもあった。天性のカリスマ性や明るさ、器のでかさを併せ持つスーパーアイドル候補、浦川みのり。どんなピンチも負の感情も最終的に前向きにねじ伏せるみのりに背負わせる訳にはいかない、ネットリとした「負け犬の話」をやることで、スポ根としても芸能界モノとしても、漫画の幅が広くなったと思う。
吉永のキャラの薄さへのテコ入れとしては、親父さんのエピソードと合わせてなかなか良かったと思う。ステージアクターとしての華はなかなか漫画にしにくいところだと思うが、上手くエピソードを組んで、真ん中になることの重圧やそれを跳ね返す凄みなんかを上手く出していた。吉永親子の和解エピは、一度も直接会話をしないのに(もしくは、しないから)、人情味あふれた絆の話に仕上げるという結構テクニカルな話だった。13巻分積んできた、この漫画の技巧分が上手く出ていたと思う。
GKJという要素を使いきって、今後どう話を回すのかなぁ、とか思いながら見ていたら、みのりと吉永が支店行脚に出ることになった。本店の脇キャラも使い切った感はあるので、せっかく人数も多いし脇の話をやらない理由もない。出されてみると、視点がノして来てるリアルの事情も引っ括めて、結構納得の手。そして岡部先輩、今までお疲れ様でした! まぁ岡部を抜かないと、せっかく新天地なのに岡部のキャラ強すぎて今までの変奏曲にしかならんしな。
全体的に細かいところの丁寧さや巧さが目立った今回だったが、ドサ周りを発表された時の吉永の脆さとみのりの圧倒的な強さの対比は、この漫画の芯である「ハッタリの巧さ」が前面に出た良いシーンだったと思う。主人公であるみのりの天才性、図抜けたアイドル適正の描写が太いからこそ、今回凡人の域をようやく脱した吉永の成長も光るわけで。何よりも、あそこで不敵に笑う浦山くんはやっぱりカッコいい。そして、カッコいい主人公がいる漫画は、とてもいい漫画だ。さておき、大家さんが前回描かれた時と全く別人だったのは、マジなシーンと抜きのシーンの差だと思おう。うむ。