イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ボールルームへようこそ 1〜4

竹内友、講談社。何もない少年が、社交ダンスという競技と出会い、何者かになっていく漫画である。いわゆるスポ根漫画なのだが、出会ったのが競技だけではない、というのが最初の強みだ。主人公であるたたら少年は、社交ダンスと邂逅することで、己の運命と、素敵な仲間たちとも出会うのだ。キャラクターの表情や台詞が活き活きしていて、粒が立っているところが、漫画としての強みである。
師匠的立ち位置にいるプロダンサー、熱意を秘めたクールなライバル、彼のパートナーである少女。初期配置されたキャラたちの関係も、記号的ではなく、しっかりと彫られた輪郭を持っている。細かい癖の描写や、一筋縄ではいかない性格の悪さが、何もなかったたたらが「ここでなら」と思い、社交ダンスにしがみつく理由を納得させる、微細な説得力を生んでいる。魅力的ながら親近感が湧く、コイツラと話をしてみたいな、と思わせるキャラたちなのだ。
無論、キャラクターだけが社交ダンスというテーマの説得力を生んでいるわけではない。とにかく、ダンスの描写が太い。飛び交う汗、触れ合う体、言葉に頼らず伝わってくる思い。漫画の力をフル動員して、身体感覚を絵で伝えてくる。まるで自分がダンスホールにいるような、迫力のある絵の説得力が、この漫画最大のパワーだろう。主人公が感じているダンスホールの距離感が、そのまま伝わってくるのは、本当に凄い。
絵の力といえば、表情の作画もいい。運命を変えるような何かに出会ったときの、驚きと喜び。自分のすべてを賭けることが出来る競技への、敬意と恍惚。戦場のようなフロアに身を躍らせてからの、鋭い目つき。登場人物はとても真剣に、濃厚な汗を流しながら社交ダンスをしていく。心理描写のネームも切れ味鋭いのだが、それを補いつつ上回る、目線のパワーがとにかく凄い。
絵の話をすると、女の体が凄くエロい。これは身体表現としてはとても大事で、骨格と曲線に色気を載せた描画ができている、ということだ。ただの競技ではなく表現技術でもある社交ダンスを描く以上、身体はとても重要な要素だ。作中の人物たちが惹きつけられる、匂い立つ踊りと体に、僕達も魅了される。それは、とても幸せな読書経験だ。
話自体はオーソドックスかつパワフルな、少年の成長譚だ。何もなかったたたらが、ライバルと気になる女の子、そして競技ダンスに出会い、成長していく。シンプルで、力強い。前述した要素がその素直な筋立てを支え、盛り立てている。これだけしっかりとした土台があると、むしろ変化球は漫画の力を弱めるだけだ。だから、この単純で古臭い話の展開が心地良い。成長に必要な汗と涙と笑顔に、ウソを付くことなくちゃんと描くという、簡単なようで非常に難しいことを、しっかりやっている。
四巻まで一気に読んだわけだが、エピローグと出会い、最初の障害と克服と、なかなか区切りの良い所で読めてラッキーだった。最初のインパクトだけではなく、話の堅牢さやテーマの強さ、漫画としてのまとまりが見えてくる。荒削りな部分を引っ括めて、勢いと熱気のある漫画だ。たたらが才能と情熱で、あっという間に社交ダンスを制圧していくテンポの良さが、凄く気持ちいい。
みんな気持ちのよい奴らだけど、僕はまこちゃんが好きです。行動の一個一個があざとくて可愛いし、お兄ちゃん好き好きビーム出ててたまらん。ガジュたんもなんだかんだで妹メインのイカス男ツンデレだし。あの兄妹は好きだなぁ。無論主人公たたらの真っ直ぐさ、千石師匠の男ツンデレ加減もすげーいいぜ。要するに、面白い漫画なんだよコレまじで!!