イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

8 エイト 3

楠みちはる講談社。ロックンロールと青春のカクテル漫画、三巻目。今回は群像劇らしく、今まで世界の中心だったエイトから少し視点を外して、周囲の人達の物語が展開した感じでした。エイトも上京フラグが立ったり、シャドウボクシングをしたり、学校停学になってバイトしたり、色々してるんですけどね。内なる攻撃性を否定するのではなく、飼いならすためにボクシングをし続け、薄紙を張り合わすように音を取り戻していくエイトの姿、僕はかなり好きです。
今回目立ったのは、マネジであるミカさんと大人組。作中の言葉を借りると「早く大人になりたい人」と、かつて子供だった人たち、と言えるでしょうか。マネジさんの圧倒的な「デキる女オーラ」と実際にデキすぎる仕事っぷりに、鮫島オジサンじゃなくても手元に置きたくなる感じ。実際に行動が出ると、あっという間にキャラに説得力が出てきますね。
そういう意味では、ツアーでの身の処し方で恭也さんが一気に説得力をつけた感じがあります。ぶっちゃけ、今まではただのノスタルジーオジサンというか、「かつてエイトだった存在」としてのカッコ良さが足らない存在だったわけですが。ツアーが始まり、アルバムがでて、ボーカリストとして20年仕事をしてきた男の分厚さを見せてくれて、ググっと彫りが深くなってきました。彼らも乗っちゃうしね。あのシーンは楠先生の「だってスポーツカー描きたいんだもん!」という欲望を感じた気がしました。
他のオジサンたちもグイグイとカッコいいところを見せていましたが、自分的には尖っていたニーナが丸くなる流れが凄く好きで。それは今まで軽蔑していたアマチュア音楽家との交流であったり、クリティカルに踏み込んだ発言をしてしまった母親への後悔であったり。こういう部分に自分で気づいてしまうナイーブさが、僕がニーナの好きな部分です。まぁこの漫画、若人だろうがオッサンだろうがみんな繊細なんだけどさ。キョーヤさんとか真顔で「誰かに見られてると思ったら……月か」とか言うしね。お前はコブラか。
そんな柔らかい人たちの運命がジワジワと渦を巻き絡み合い盛り上がり、しかしその中心になるエイトともう一人、川奈娘の動きはおとなしい。これが爆発するとしたら、ツアーが先に進んでキョーヤさんがエイトの街にやってくる時かなぁ。「その瞬間」を劇的にする意味でも、オジョーをツアーに同行させてるんだろうし。何かが起きそうな気配がムンムンしつつ、キャラの土台をしっかり整えるいい巻でした。いやー、面白いなぁこの漫画。