イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

TNXサプリ「クロス・ザ・ライン」レビュー ワールド編

トーキョーNOVAXの二冊目のサプリ、「クロス・ザ・ライン(以下CTL)」が出たので、レビューを書くよ。


・全体的に
サプリメントとしてはワールドガイド&データブックという感じで、独特の追加ルールも多数収録。
二冊目のサプリというのは、ルール全体の基調というか雰囲気みたいのが見えてくる段階であり、将来的にストレス少なく遊び続けられるかの試金石だと個人的には思っている。
豊富なデータと実戦向きの設定をラッシュしてくるこのサプリは、そういう意味でNOVAXの明るい未来を感じさせる仕上がりだと思う。
とは言うものの、やや処理の重いデータや追加ルールもあるので、こっちの方向に舵を切らないで欲しいところ。


・ワールドガイド
世界各国のメガプレックスをガンガン紹介していく感じのパート。

一番パワフルにフューチャーされているのは、ミトラスEDENあらためミトラスGARDEN。
実プレイを世界観に反映させていった結果、悪徳の街トーキョーNOVAは気付けば人権意識の最前線とかしており、マキノイドからヒルコまで人間らしく暮らせる(所もある)街となっている。
「悪辣な腐れ企業に、思う存分抑圧されたディストピア都市」というパンキッシュなイメージを強化するべく、新生なったミトラスはコンピューター様の支配する腐れ街になったという。
ドブみたいな部分があってこそ、綺麗事のために体を張るPCたちが輝くので、このテコ入れはとても良いと思います。

他にページを割かれているのは、おなじみバイオのMOONに魔術のSTAR。
旧サプリである「グランドクロス」時代ほど大きな変動はないけど、相変わらずきな臭く魅力的な街であり、「MOONっぽい」「STARっぽい」シナリオが組めるのはとても良い。
個人的には、調子ぶっこきまくってたチャン・リーファが天津組にボッコボコにされて、HEVENに島流しになってるところで大笑いした。
これは"復讐の妖月姫"あるで……フルボーグもしくはマシンメイデンになって帰還すんの。
あと天津組トループは全員ハイランダーで、「地上の空気は汚いねぇ」「やれやれ、下品なしゃべり方だな」「下らない。これが地上の見世物なのかい?」とか、いけ好かない天上人Botみたいなことしか言わない。
顔は全員セイジッ面という、別の意味合いでクローンヤクザ。

残りの各都市は1ページでざっくりという塩梅ですが、ネタの巻き方が中々実践的で、ワンワードをピックしてシナリオにしやすい記述が目立ちます。
「どの街では何するか」もくっきりしており、例えばブエナIRAではアラシシナリオやるとか、ブラド・コロニーではアヤカシシナリオやるとか、実プレイへのサジェスチョンは巧く行っていると思います。
ワールド記述は実プレイのためにある派なので、使いやすさ重点で書いていただけるのはとても有り難い。
D時代のネタをコンパクトに取りまとめ、公式に反映させているのも、「ああ、俺達が遊んできたのは無駄じゃねぇな」という感じがして、とても良いですね。
ココらへんの記述センスに、僕はNOVAXの未来を見たのです(デカイことほざくマン爆誕)


・オーガニゼーション&パーソナリティ
ワールドガイドで出た情報を、個別に補強していくパート。
ワールドで大きく扱われた三都市を重点的に補強していますが、他の街にもチマチマ目配せが行っています。
北米の新大統領が露骨にぶっ殺されそうな善人であり、此処らへんでもシナリオ組み易いなぁと感心。
ハーヴェイ君はまっとうに育ったようで、時代の変化を感じさせるキャラもちらほらとピックされています。
あとは秋川会復興シナリオとか面白そうね。


・ 追加ルール
SPSルール、ワールドワイド対応ルール、神業書き換え、トロンカスタマイズ、FSの導入あたりがごっそりと追加。
出来ることが増えるのは基本的に良いことなので、1ユーザーとしてはビッグなウェルカム。

SPSはアルシャードなどでいうところの「クライマックスクエスト」、PCを個別にシナリオに投げ込むハンドアウトPSとは反対に、PT全体を特定の目的にまとめ上げる大きな目標をデータ化したものです。
経験点も増えますし、「どうやったらシナリオが終わるか」も明示できますし、バンバン導入してシナリオの形を整えると良いのではないでしょうか。

ワールドワイドルールは細かい個別対応という感じ。
トロンカスタマイズもまぁ雰囲気強化で、根本的に取り回しが変わるというわけではないです。
神業書き換えは全体的なデータバランスが変更される大きなものですが、特技レイヤーに取り込むというゲーム処理もスマートだし、書き換え前/後どちらを使用するかという判断はPLサイドでできるし、D時代の書き換えよりも使いやすくなっている印象を受けます。
実プレイにおいては防御系神業過多になりがちだったこのゲームですが、別の使い道を見つけれるようになったので、ストレスも低減されるんじゃなかろうか。
というか、X版上げ時点で神業周りのストレスは結構減ったと思いますけどね。
「使わない」という選択肢が取れるのは、やっぱ大きい。

FSに関しては、SRSベースでNOVAの特異な判定方式にカスタマイズという印象。
ただ漫然とシナリオに入れ込んでも、作業感が増大し「ただ判定しているだけ」になりがちなのがフォーカスなので、そこら辺はやっぱり取り扱いに注意が必要なルールだと思う。
個人的にFSの強みは「人殺し以外の盛り上がり」をTRPGに導入できるところだと考えており、同時に「TRPGの盛り上がりの基本は人殺し」だとも感じている。
なので、戦闘と並列する際の処理を細かく定めているのは、痒いところに手が届く記述でありグッドナイス。
具体的なFS判定を多数列挙しているのも、プレイイメージが掴みやすく、実プレイを向いた記述なのではなかろうか。


データセクション(http://lastbreath.hatenablog.com/entry/2014/07/02/055341)に続きます。