イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 14/08/31

・ ハチャプリ
さすが天下の東映、TSだの女装だの生ぬるい考えすっ飛ばして、皮モノTSというワンランク上の性癖で攻めてくるとは……。
精神攻撃とケバコラまでおまけで付けて、pixivとDLSiteが元気になるファントムリベンジ回でした。
ハチャプリだと非常に珍しい、めぐみの掘り下げ回でもあったかな。

アクセルべた踏みで性癖の異次元までかっ飛んでいったファントムさんは横において、完璧主人公たるめぐみの心の影に踏み込んだ展開でしたが、正直わりかしあっさり目。
もう一人の主人公たるヒメにかなりの尺を割いたのもあって、さっくり凹んでさっくり立ち直った印象を拭えませんでした。
アンラブリーが不思議パワーで影から記憶を抽出して精神攻撃しただけで、具体的なイベントが弱めだったのが理由かなぁ。
個人的な好みとしては、もうちっと踏み込んだ掘り下げがほしい所でした。
……掘るためには地盤を作っておかなきゃいけんから、現状めぐみが持ってるキャラ貯金だと今回がリミットかなぁ。

ファントムに関してはもう、なんも言えねぇ。
完璧超人に見えるめぐみの瑕疵を掘り下げるためには、不思議パワーと皮モノTSに頼ってでも記憶を全部引っ張り上げないといけなかったんでしょうが、どう控えめに見ても女装した上で当人を精神的にいたぶる趣味の変態だった。
素晴らしい性癖歪め系児童番組ですね東映さん!!
カラテに関しては常時本気で、東映作画班総動員という感じで凄く良かったですね。

ともあれ、ハチャプリはやることたくさんあるアニメなので、来週は拾ったファントムに餌をやる話。
予告でいおなが言ってた「だってアイツは敵なのよ?」が、「だってアイツはTS皮モノ趣味のロリコンサディストでプリキュアコレクターなのよ? ニチアサよりDlsiteのDL数80くらいの尖ったCG集がお似合いよ!!」としか聞こえなかった、汚れた自分がイヤンなる。
……いやホントね、今回は想像以上の核爆弾でした。

 


・ ろこどる
開幕から好感度ブッチギリだったゆかり先輩が、如何にして重たい運命を秘めて奈々子ちゃんと出会ったか、というお話。
ゆにこ先生がアクセル全開常時べた踏みに、百合街道をひた走っておりました。
かなり綺麗に再構築されているらしく、ココらへんの構成能力ほんと凄いっすね。

弱ると甘えるという露骨な弱点(と可愛げ)を見せつつ、「あのアマ、なんであんななにゃこの事好きなの……」という疑問をしっかり埋める展開には、思わず唸る。
唸るのだが、埋めれる外堀を全て埋めてなにゃ子を自分の隣に引っ張ってくる辺り、「頭よくて一途な変態はタチわりぃな……」という感想も抱く。
まぁしょうがねぇ、ゆかり先輩はダメ完璧超人純愛派だ。
そして俺はキチガイ純愛百合だーいすきだ。
そらマリとかね。

基本的に『鈍亀なにゃこと完璧超人ゆかり』という構図がこのアニメの基本なんですが、舞台度胸と真っ直ぐさという武器を忘れず描写したり、時々ゆかりさんをヘタレさせたり、「コイツだけいればいいんじゃないの?」という展開を発生させてないのは、やっぱ巧い。
キャラの欠点を愛らしく描写できているというのは、作品にとって強力な強みなわけで。
まぁいくら段取り完璧でスーパータフでも、あのクソレズっぷりがバカでかい欠点(でありフック)なんですけどねゆかり先輩。
そんな感じで、ゆかり先輩の魅力を120%引き出した回でした。

 

・プリパラ
今週もまた、らぁらのレズジゴロ力が全開になり灰かぶりをそのまま愛してくれる王子様にこコロッと落ちる中学生が生まれた!!
ホント毎回この出だしで安定する辺り、らぁらちゃんの年上殺し力は最早魔剣。
そふぃはかなり周囲の状況に問題ありなので、チョロいというよりも正しい手順だった気もするけどね。

ポンコツモードを「良くない」「見たら他の人は嫌いになる」とクソウサギに言われ続け、重篤なコンプレックスを抱えてしまったそふぃちゃん。
ウサギのゴミカスっぷりはさておき、アバンの溺愛加減を考えるとお姉ちゃんも(意識的か無意識的かはさておき)愛情表現に少し問題ありな印象。
「可愛い可愛いそふぃを、自分専用のお人形さんとして弄びたい」という願望が、執拗な着せ替え描写から感じました。
こういう押し殺したエロティシズムに本気な所が、プリパラの好きな所です。

「なりたい自分にキャラチェンジ!」というのはしゅごキャラ!の頃から、というか変身ヒロインモノの基本テーゼなわけで、そこら辺のコンプレックスを一番素直に持ってるソフィに、超直球の勝負勝負を仕掛けたらぁらちゃんの主人公力が光る展開でした。
いや、女の子転がしすぎだけどねらぁらちゃんマジ……その内キレたコスモさんに「やってくれた喃!」って秋葉神社で仕置きされかねない。
このルートになるとそふぃが「あ……あれはらぁら様必勝の、無明逆サイリウムチェンジ!」ってなるので、早いタイミングで釣った魚に餌あげたほうがいいと思います。
具体的には、やや真ん中から外れつつあるみれぃの見せ場、そろそろ欲しいやね。

「長時間踊れない特殊な体質である」という問題点に「リハビリをちゃんとやって、体質を治す」ではなく「ドーピングを常時やって、ダメダメモードを否定する」という解答を出す当たり、うさぎのゴミカスっぷりは本物。
此処を健全に克服することがそふぃの物語だと思うし、完成形への道を見せたのが主人公ってところに、このアニメの堅牢さが見えると思いました。
個人的には親衛隊はダメダメモードが表に出ても、そふぃちゃん好きであって欲しいところですが。
そこら辺の転がし方も含めて、面白い回でした。

 

・ アイカツ
あかりちゃん回後編……というか、星宮いちごから大空あかりに主役をバトンタッチする回。
同時に「苦労を苦労と感じたことのない天才は、苦痛のただ中にいる凡才に何を伝えることが出来るのか」という回もであり、直球アイドル大空あかりDEBUTという回でもある。
前回ジョニーが渡したバトンを引き継ぎ、いちごちゃんも色々悩みつつ、あおい姐さんの一年越しのロングパスをあかりちゃんのまごころにきっちりシュートできました。
そういう意味ではいちごちゃんに欠けている最後のピースを埋める回でもあって、絞った登場人物すべてをとことん掘り下げる、内容の濃いエピソードだったと思います。
通常フォーマットを崩しただけあって、要素山盛り、噛みごたえ十分な素晴らしい回でした。
『♪今わたし達の空に 手渡しの希望があるね 受け取った勇気でもっと 未来までいけそうだよ もらうバトン キミとつなぐ光のライン チカラにして』というのはOP曲の歌詞ですが、今回はそれを完璧に拾いきったお話で、オッサン感動。


丁寧なストレスコントロールを徹底し、才能に恵まれたキャラクターが、努力と友情によって困難をテンポよく乗り越えていくお話が基本フォーマットなアイカツ
スキャンダルと戦ったユリカ様や、"トライスター残党"としてユリカ様と痛みをわかちあったかえでちゃんという例外を除くと、基本的にこのアニメの登場人物は全員"持って"います。
無論困難が存在しないわけでも、才能だけが勝利に必要なわけでもなく、友情と努力と勝利はバランスよく配置され、健全な成長物語を提供してくれています。
が、基本的に登場人物は勝つし、人間の負の部分に引きずられたままお話が終わることもない、凄まじくよく出来た現在のお伽話というのが、アイカツの基本です。

そういうお話のセンターとして、いちごちゃんは基本的に正しく、時々間違えては友達に道を正され、正解を選び続けて二年間主役を務めてきました。
ストレスコントロールの舵役たる彼女が持っている才能(もしくは一種の主人公補正)はしかし、今までのエピソードの中で正面から取り上げられることはなく、当然のものとして受け止められていたように思います。
今回、既存のアイカツフォーマットから大きく外れた"持ってない"大空あかりを正面に据えたことで、"持っている"星宮いちごの特殊性、そして何より欠損が浮き彫りになりました。

"持っている"存在の欠損とはつまり、"持っていない""愛されない""出来ない"側の人間の気持ちが判らない、ということです。
この欠損を補填することなく、物語の天井としての仕事を果たし続け、今も孤独なアイカツを続けているのが美月さんなのだと思います。
彼女の欠落はあおい姐さんに当たる存在がいない以上埋めることは出来ず、孤高だからこそ担当・表現できる立場というものもあるので、必ずしも欠け続けていることが悪いことだとは言えませんが。

翻って、いちごちゃんは自分の物語が終わる前に、欠損を埋めることが出来ました。
この充填を一人で行うのではなく、手紙を手渡し言葉を与えたあおい姐さん、自分に可能な範囲のフォローを全て行った上であかりちゃんの将来を託したジョニー先生という、他者の助けがある辺りアイカツのバランス感覚は優れていると思います。
結局星宮いちごはあらゆる事に成功してしまう天才であり、そのキャラ性は揺るぐことがない。
でも一人で生きているわけではないので、自分に足らない部分はそれを持っている仲間の手を借りればいいというのは、独力で解決してしまうより豊かな結論です。


個別の描写に目を向けると、既に追い込まれているあかりちゃんの「大丈夫です」に踏み込むことが出来ないまま一度目の邂逅を終えるいちごちゃんのシーンは、非常に良く出来ていました。
あのシーンのあかりちゃんは露骨に無理をしているのですが、いちごちゃんにはそれを感じることが出来ない。
あおい姐さんの手紙というジョーカーが控えているからこそ、「天才・星宮いちごには、凡人・大空あかりのことはわからない」という軸をブラさない描写が入れられるわけですが、そこで終わらず悩んでいるのはいちごちゃんが優しいからです。
無理解と理解、厳しさと優しさ。
矛盾する要素の扱いが、アイカツはとても上手い。


無論今回のエピソードはあかりちゃんの話でもあるので、彼女は一人苦しみ、藻掻き、その上で結果が出ません。
朝の景色が次第に陰鬱になっていく様子。
増えていく手足のテーピング。
同じ要素を繰り返すことで、遅々として前に進まない努力の辛さ、あかりちゃんの思いつめた様子が、画面を通して判るようになっています。
こうして"持ってない"存在の苦痛を、痛覚を伴う形で描写しているからこそ、一人ではけして解決できない問題としてあかりちゃんの悩みが浮かび上がってくるし、救いの手を差し伸べるいちごちゃんの株も上がるという、巧い作りだと思います。

執拗に描写されるあかりちゃんの頑張りと空回りを見ている視聴者は、非常にもどかしい感覚を覚えいて、「早くどうにかして!」という気持ちが限界に来ている。
今回のお話が心に迫ってくるのは、そういうタイミングでいちごちゃんが、あかりちゃんの"間違い方"を非常に印象的、かつ的確な「青空の中の星」という優れた比喩で訂正してくれるからだと思います。
結局自分のためには万能のカードを切らなかったいちごちゃんが後輩のために魔法を使うという流れや、「大空あかり」が、今は見えない個性の発露という「青空の中の星」を持っているというリフレインも引っ括めて、今回のお話には豊かな詩情があります。
ロジカルな正論ではけして切り取りきれない、柔らかな心境をすくい取ってくれる予兆があったからこそ、いちごちゃんが声をかけてくれた瞬間あかりちゃんの心は決壊し、表情をクシャクシャにして泣いたのではないでしょうか。
あそこは渾身の泣き作画だったなぁ……高橋さんほんま凄い。

今回あかりちゃんは、早々にルームメイトのユウちゃんを実家にすっ飛ばしてまで、孤独で誰にも頼ることが出来ない袋小路に追い詰められます。
それはいちごちゃんがあかりちゃんを救済するカタルシスを強める意味も無論あるのでしょうが、同時にあかりちゃんが持っている個人としての軸を見せ、『三期の主人公を張る女の子には、他人に頼りすぎず独力で前に進んでいく力があるんだぞ!』と視聴者に納得させる効果も狙っていたように思います。

『他人を頼らない』欠損を抱えたキャラクターとして美月さんが居るのであれば、『他人に頼りすぎ』て個人の軸を失い、己の物語を消失してしまったキャラクターも、アイカツには(哀しいことに)たくさんいると思います。
"アゲハなミューズ"という自分の夢の達成を、10秒程度の回想で省略されてしまった蘭ちゃん。
"自分などのようなアイドルであるか"という問への明確な答えが、二期最終盤までずれ込んだセイラ。
二期は彼女たちが、「ああ」「そうだな」と半自動的に答えを返す頷き役になってしまっていた部分が多々あると思っていますが、その理由は主に"個人としての軸"をしっかり物語の中で示せなかったからだと、僕は考えています。
孤独の中で諦めず頑張り、しかし結果が出ないことに擦り切れていくあかりちゃんの姿は『凡人』というキャラクターの軸、『彼女は何故作品世界に存在し、何を望み、どのようなことが可能なのか』を的確かつ明確に示していて、一種の安心感を覚えました。

女の子が苦しむ姿を見て安心するというのも変な境涯ですが、アイカツ!というお話は苦しんだ女の子を報われないまま放置する話ではないし、努力しない女の子を祭り上げる話でもない。
ストレスとカタルシスのバランスを巧く取り、目鼻のクッキリしたキャラクターを活かしたお反し作りをするアニメなわけです。
そういうアイカツの強みを、三期になっても製作者サイドは守っていくぞ。
一種の意思表明みたいなものを、このエピソード全体から強く感じたわけです。


というわけで、二話に渡ったあかり&いちご(&ジョニー)エピソードは、登場人物のキャラ描写、テーマの取り扱い、豊かな詩情、的確な演出と、隅から隅まで文句のない素晴らしい出来でした。
こういう話を作ってしまうから、アイカツ!というシリーズはほんとうに面白い。
引き継ぎのための地均しは完璧に終わり、最後の飛翔がどうなるか。
一視聴者の立場ですが、楽しみに待ちたいと思います。