イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/01/24

・プリパラ:第29話『EZ DO グロササイズ』
最終決戦に向けて特訓ということで、校長とラブちゃんを教官にソラミを監獄に突っ込み、LSDを決めたアイカツ!みたいな特訓をたっぷりやって成長する回。
あれだけキチガイムーブを繰り広げつつ、メイキングドラマでムーンサルトを成功させ、しっかり成長させている辺りプリパラ。
サービス100連発が宙返りと何の関係もない所とか、ソフィー様と親衛隊の面会がどう見ても監獄への麻薬の密輸入だったりとか、キチ部分の火力が今回高いな……。

ソラミ全体を底上げするお話だったわけですが、こう言う成長にまつわるお話はやはり、最も伸び代のあるソフィーの独壇場。
スタート地点が幼稚園児だったのも相まって、深夜にタイヤを引くキチった絵面の中にも、人格的成長が感じられ感慨深い。
その姿をファルルに見せることで、『友達』というテーマを再確認し、そふぃがここまで来れた理由を明確にしてるのもグッドだ。
今回の出会いを受けて、心を知らないボーカドールに狂いが生じるか否か……さてはてどうなる。

教官役の校長は、ベビーターンした後も悪役時代の美味しい所を損なわず、良い塩梅にガミガミおばさんなままなのが良い。
この話、笑いが全ての潤滑油になるので、ウケるポイントは殺さず進めないといけんからね。
悪役時代の友情スレイヤーっぷりは、どうやらユニコに受け継がれたようで……。
メインテーマを何度も演奏するのは、骨のある展開には必須だね。
ラブちゃんの扱いも、ゲストキャラを粗末にしないプリパラらしさが出ていて素晴らしい。

ファルルとの決戦に向けて道を整える、立派な中継ぎ回でした……っていう言い方するとマトモみたいだけど、全てが狂ってる回でもあった。
狂気が生み出す笑いと、足場のしっかりした展開の両取りつうのは、よく出来た女児アニには必須の条件なのだろうか。
やっぱこんぐらいぶっ飛ばしてくれると、プリパラ見ててよかったなぁと思うねウム。

 


・四月は君の嘘:第14話『足跡』
演奏会の合間に幼馴染が曇り少女が死にかけるアニメ、今回はNHKドキュメンタリー『恋愛敗北者』の第四回目ですって感じの椿ちゃん回。
Aパートは不吉な予感に震えまくる公生くんと、理不尽な運命に独孤せんと必死に強がるかをりちゃんのターンでしたが、Bパートの濃厚な『ドブに堕ちた犬を棒で沈めた後、コンクリートでフタをする』っぷりに印象が掠れがち。
ホントこのアニメのスタッフは、椿ちゃんの負け犬街道を丁寧に丁寧に書くな!!


『今扱っておくべき旬の問題』である椿ちゃんと公生くんの離別に対し、かをりちゃんとの別れは物語全体を貫く大ネタであり、そこに辿り着くまでのレールを引くのが今回のAパート。
母親との離別はなんとか克服したけど、そこに塩をなすりつけられるのはゼッテー耐えられないので、必死に現状を否定する材料を探している公生くんが痛ましい。
そんな公生くんにも「君はどうしようもなく表現者なんだね」と、圧倒的な真実を指摘してあげるかおりちゃんの正しさが、逆に公生くんの必死さを浮き彫りにするっつーね。
そんなこと言ってくれる女の子が死んじゃうなんて、考えたくないじゃん当然ねぇ……。

すっかり色素が薄くなってしまったかおりちゃんは、友人の前では点滴を隠し固形物も食べ、『いつもの元気でワガママでパワフルな宮園かをり』を演じ続ける健気さを見せる。
そこに無造作に『いちご同盟』をぶっ刺してくる演出の容赦の無さ、痛いけど好きだよ……。
ほぼ同テーマ、同ポジションの過去作に言及したわけですが、これを足場に『いちご同盟以上』を見せるフラグなのか、それとも単純な目配せなのか、さてはてどうなることやら。
さっきも言いましたが、彼ら二人の青春ワルツが終わる時、恐らく作品も終わるので、じっくりと見守りたい要素であります。


一方、久しぶりに拾ったと思ったら、ニトロ付きで情け容赦の一切ない描写が連続した椿ちゃん。
『おめーまだ先輩解放してあげてなかったのかよ』とか『柏木さんは天使か何かか』とか、色々感想は浮かびますが、Bパートはとにかく公生のことしか考えていない椿ちゃんをガンッガンに描写していました。
視聴者にも公生くんにも渡にも露呈してきた、ギリギリの宮園かをりには一切目もくれず、公生くんとそれを見ている自分だけをぐるぐるぐるぐる考え続ける、自分勝手な女の情念。
そのどうしようもなさ、その閉鎖性、その非生産性をバッチリ切り取っているこのアニメは、やっぱ青春アニメの歴史にしっかり刻まれるべきだなぁ、と思いました。

母親の死に取り憑かれてどこにも進めなかった主人公が、かをりちゃんの手助けを経て人間的成長を果たす。
物語的にも視聴者的にも喜ばしいその一歩はしかし、永遠に動かない距離を望んでいる椿ちゃんにとっては、全てが崩れ落ちる崩壊の一手。
同時に誰よりも有馬公生のことを考え続けた椿ちゃんには、その一歩が絶対に必要な一歩であること、音楽に関与しない自分には絶対に踏み出す手助けができない一歩であることも、しっかり判っている。
素直で優しいいい子であるからこそ、状況の矛盾に絡み取られて、どこにも踏み出すことが出来ないという根の深い矛盾。
死ぬほど面倒くさく、このクソアマに一発カマさない先輩の聖人(エル・サント)っぷりに二度目の感動を覚えたりもしますが、そういう季節を通りすぎてしまったおじさんとしては、その迷いが眩しい。

理屈でならどうすればいいかは椿ちゃんも判っていて、しかしそれを選ぶには痛すぎる状況を、勝手に大人になった公生くんが先に進めてしまった。
となれば、正しさの権化として常時正解を言い続けている柏木さんの言うように、何らかの決着を付けなければ、彼女は生来の明るさ、どん底の有馬公生をギリギリで支えていた笑顔を取り戻すことは出来ない。
今回Bパートで説明し描写し納得させていたのは、そういう感情の綱引きであり、じっくりと時間を使って内面を見せるこのアニメの演出プランは、やっぱりこのような力学の描写にこそ力を発揮するわけです。

揺れる彼女たちの心がどこに辿り着くのか、次を早く見たくなるようなエピソードでした。
いやー、よく出来たアニメだなぁ。
……実際男としては先輩のキープっぷりが痛くてしょうがないので、次回までに先輩のことだけでも、スパッと解決して欲しいやね。

 

アイカツ!:第117話『歌声はスミレ色』
『スターライトの美貌爆弾(ビューティ・ボム)』『レズビアン量産装置』『顔貌だけで宗谷海峡も渡る女』などなど、数々の異名を俺が勝手につけている美少女、スミレちゃんのいいとこ探しエピソードでした。
積極性の無さという欠点を克服するのは想定通りなのですが、美貌という長所が生涯にもなってくる展開は、かなりスクリューが効いていて面白い。
スミレちゃんを見守る仲間や家族の描写も非常に丁寧なもので、とにかく完成度の高いエピソードでした。


スミレちゃんは超絶美少女として設定されており、作中の描写や演出もそれを納得させるべく丁寧に仕組まれております。
今回も作画は気合い入りまくりで、余波で他の子達もむっちゃ可愛かったのは非常にグッド。
序盤では感情表現に乏しかった"氷の花"がどう変わったかを見せる回でもあるので、魅力的な表情が描けるかどうかで、エピソード全体の仕上がりが決まる回。
そら気合も入りますね。
ココらへんを画面で説得できているのは流石の一言ですが、今回はその美貌が壁になって立ちふさがる、なかなか面白い展開でした
外見を評価される仕事は、周囲の人達も既に理解している彼女の強みを活かした『出来る事』であります。

一方スミレちゃんが内心で轢かれている歌の仕事は、歌唱力と声が評価される『やりたい事』。
周囲の期待を読み取ってしまうスミレちゃんにとって、『出来る事』に対して他者が向けてくる期待は、同時にプレッシャーでもある。
ココらへんの『豊かな感受性故に足を引っ張ってくる、過剰な自意識と周囲の目』というテーマは、ひなきちゃんや珠璃ちゃんも同じであり、あかりジェネレーション共通(ということは、もしかすると子供全体に共通)の問題点なのかもしれません。

今回の話が良かったのは、主人公あかりちゃんが正解を持ってくるのではなく、スミレちゃんが正解に辿り着くまで見守るという選択をしたこと。
あかりちゃんはまぁいろいろ問題はありつつも、いざという時の行動力と根気、正解を直感するセンスの鋭さという武器を持っており、こと『隠された正解にたどり着く』能力に関してはあかりジェネレーション一と言えます。
彼女を主人公たらしめているその能力を使えば、『やりたい仕事』を選ぶことが正解なのは、直感的に理解できている。

しかしあずさお姉ちゃんが勇気を持って決断したように、自分の道は自分で発見したほうが、楽しく、力強く歩くことが出来るものです。
直感力と勇気に欠けるところがあるスミレちゃんにとって、今回の悩みは、アイドルとして独り立ちするためには、あくまで独力の決断と行動で解決しなければならない問題。
スターライト入学という夢は背中を押した妹大好きあずさお姉ちゃんも、頼もしい仲間の支えを信じて妹離れを決意し、その思いはちゃんとあかりちゃんに伝わる。
思いだけではなく、特性ハーブティのレシピという具体的なアイコンを継承させたのが、エピソードとしてのまとまりをグンっと上げている、グッドなポイントでしょう。

こうして『出来る事』よりも『やりたい事』を優先させることにしたスミレちゃんは、おそらくはじめて、周囲の期待を裏切ります。
『出来る事』より『やりたい事』というのは現実世界ではなかなか達成しづらく、それ故フィクションでは無条件に評価されがちな価値観ですが、今回の話ではその負の側面をしっかり描写していました。
『やりたい事』を押し通せば、必ずしわ寄せをもらう立場の人がいるわけで、それを無視せずしっかり謝罪にいく展開は、誠実かつ丁寧なものだったと思います。
スミレちゃんを一人では行かせず、かと言って大人だけが矢面に立って成長の機会を奪うでもない、背中と左右を守る大人代表のようなスーツ姿のジョニーが頼もしすぎる……。
こういう所でしっかりと、『この世界は、子供の夢が伸びていく理由のある世界ですよ』と細かく細かく見せてくるアイカツ! は、やっぱつえーなとつくづく思います。
まだ子供なスミレちゃんより、先生で大人なジョニーのほうが深く深く頭下げてる所とかね。

ステージはいつもの『タルト・タタン』でしたが、カメラワークが寄り気味になり、大きく変化したスミレちゃんの表情をクローズアップする構成になっていたのがグッド。
やっぱアイカツ!の、手指まで含めた表情の表現力は頭抜けてるなぁ。
ラストの演出も変わっていて、鏡に罅を入れるのではなく、合わせ鏡に映る無限のスミレちゃんを写してエンド。
これを『他人の眼に映る自分と、自分の中の自分両方が合わさってパーソナリティを形成しているのであり、それを受け入れることでバランスのとれた人格が成熟していく』というメッセージだと受け取ると、お話全体のテーマをステージで引き受けた形になって綺麗かな、と思います。
考え過ぎかもしれないですが、アイカツ! スタッフはそれぐらいの事はするんじゃないかなぁ。


最終的には自分の決断を信じ、邁進する強さを手に入れたスミレちゃんですが、それは無論仲間の支えあってこそ。
前回お天気レポーターという道を先に見つけたあかりちゃんが、今回は見守り支える側に回ります。
このようにお話の前面に立つキャラクターを丁寧に入れ替え、お互い支えあいながら前に進んでいく姿を積み上げていくことで、最終的に大きな達成感のあるエピソードが成功する。
なので、映画で見せた縦のバトンだけではなく、同世代の横のバトンの扱いが上手く行ってるのは、見ていて凄く安心感があります。

いちごとあおい姐さんは最初から親友として物語に登場し、その間合いを維持したまま物語を完走したわけですが、あかりちゃんとスミレちゃんは見知らぬ二人として出会った関係。
その二人が同じ時間を共有し、お互い支えあい前に進んでいく中で、強い友情を築き上げていくドラマは、あかりジェネレーション特有のものです。
友達のためにわざわざ姉の大学まで行って相談するあかりちゃんの友情が、真っ直ぐすぎてまともに見れないレベル。
あとルームメイトにおはよう言うためだけに朝四時に起きて寝癖を直す、スミレちゃんの女房気取りは既に危険領域。
開始一分の糖度高かったなぁ……素晴らしい。

芸能界の先達として余裕のある態度で支えるひなき&珠璃の描写や、涼しい顔を装いつつ頑張って妹離れしたあずさお姉ちゃんなど、ワキの描写も見事なものでした。
合格の報告をソワソワしながら待っているラストシーンは、妹好き好き過ぎて最高だった。
ひなきちゃんは個別回を貰う前に自分でケリを付けてましたが、そういう器用さや賢さのある子なので、結構納得の行く描写だったかと。
まぁ来週から一ヶ月、ゲストFrom京都の接待月間になるからね……ほんまアイカツ! は生き馬の目を抜くデスレースやで……。

今回は珠璃ちゃんの扱いがとても巧く、意味の分からないテンションで画面を賑やかしつつ、メインキャラをしっかりと受け止める、頼りがいのある仲間っぷりを発揮してました。
『安定性のある飛び道具』という矛盾した強さは、ユリカ様にちょっと似てる感じ。
メインキャラクターの分厚い話だけではなく、それを補佐するサブキャラ・サブストーリーの堅牢さは、やっぱアイカツ!の強烈な武器ですね。


話の本道も側道も、キャラクター描写もテーマの扱いも一切隙のない、非常に堅牢なエピソードでした。
今回の話で見せたスミレちゃん(と、彼女を支えることで手に入れた他キャラクター)の成長を足場にして、アイカツ! は今後もさらなる飛躍を見せてくれるだろうなぁ、と確信できる話があるのはとにかく強い。
あかりジェネレーション、油乗りまくってますね。

 

アイドルマスターシンデレラガールズ:第3話『A ball is resplendent, enjoyable, and...』
夢のお値段ハウマッチ!! という訳で、三人のシンデレラが初の『舞踏場(Ball)』において上がったり下がったりして、そして『最高に楽しい時(A ball)』を経験して終わるお話でした。
ただメイン三人にクローズアップするのではなく、同期の仲間や頼もしい先輩、バックを支えるスタッフやステージ全体などなど、視野の広いカメラで色んなモノを捉えて、『アイドルってどんなもの?』という疑問にステージで答える造りになっていたと思います。
この貪欲な作り込みが、今後の展開への期待値をいや増してるのが本当に凄い。

 


今回も見るべき所が沢山あるアニメでしたが、やはり中心軸は渋谷・島村・本田の三羽烏
彼女たちが初ステージ・初仕事への期待に胸を躍らせ、緊張感に食い殺されかけ、それを突破してきらめく舞台に登るまでの、感情の上げ下げのコントロールは本当に見事でした。
昨今のアニメはストレス・コントロールの技量が問われるというか、視聴者の足腰が全体的に弱ってタメを受け止めきれない印象があります。

一話中に複数の上げ下げを繰返し入れることで物語の起伏を作り、それを助走にして『TOKIMEKIエスカレート』でのジャンプアップを見せる構成は、ストレスとカタルシスを制御しきった、華麗な業前でした。
ステージを終えた所でEDに入り、初めてのステージアクトの感動、感謝を島村さんに代表させる纏め方も、余韻があって素晴らしい。

全体テンションの上下を抜書きすると
・Aパート
仲間と楽しい時間を過ごす(上げ)→踊りきれないダンスレッスン(下げ)→衣装を来てテンションUP、レッスンも好調(上げ)→アナスタシアとパーフェクトコミュニケーション(上げ)
・Bパート
ついに本番、慣れないステージに喰われる(大きく下げ)→リハーサルでの着地失敗(底まで下げ)→緊張しきっている本田を見かね渋谷が前に出る(微上げ)→日野と小日向のトス上げで掛け声をする(上げ)→本番大成功(天井突破)
という感じでしょうか。
全体を気持ちよく終わらせるだけではなく、パート単位でも上げて終えているところが巧妙ですね。

 

こういう全体のテンションを操作するために、メイン三人が創るトライアングルを、細かく丁寧に操作していたことも、強く印象に残ります。
三人を襲っている緊張感を視聴者に体験させるために、前回ムードメイカーとしてお話を牽引していた本田さんを真っ先に凹ませたのは、本当に鋭い演出。
キャラクターが持っている『いつもの立ち位置』を意図的に崩し、フォワード担当の本田さんをバックスに下げ、代わりに普段は無愛想な渋谷さんが全面に出て最初の一歩を担当する作りは、三角形の中での小さな物語が生まれていて、見応えがありました。

一話アバンで『アイドルにならないものは、顔も名前もない』と強調し続けたこのアニメ、本田さんが折れる寸前も、意図的に目線を隠し、人間性を剥奪しています。
本田さん(二話であんなにキラキラ主役してたあの本田さん!)の顔が見えないシーンは思いのほか長く、この引っ張りが作中の緊張感を視聴者に伝える、重大な仕事をしているわけです。
あのまま緊張に喰われれ、『いつも元気な本田未央』を忘れた時、彼女はアイドル(見習い)ではなくなり、物語的な存在意義を失う。
『らしくないな』と逡巡しつつも、破綻寸前ギリギリのところで渋谷さんが声をかけ、ようやく本田さんの目線が画面に映る。
本田さんはアイドルを目指す女の子に戻ることが出来、やきもきし続けた視聴者(つーか僕)はようやく息を吐くことが出来るわけです。

緊張のステージを終えて、三人はお互いをかけがえのない仲間としてセレブレイトし合います。
此処でのコミュニケーションの順番はステージ前の渋谷・島村・本田というシフトから、島村・本田・渋谷を経て、本田・島村・渋谷という『いつもの立ち位置』に戻っています。
渋谷さんが先頭に立つシフトはステージという非日常のものであり、次回以降は本田さんが引っ張る形に戻すというサインかな、と思いました。
ステージという非日常空間でも、本田さんが頑張って身にまとう『いつも元気な本田未央』を出せるようになったら、それはとても素敵な成長であり、その日は必ず来るだろうなぁと期待もしております。


これは穿った見方なのかもしれませんが、島村さんが心理的プレッシャーを受けると大概『自分は経験者である』という話を持ち出すのが、生々しい防衛行動として魅力的でした。
『自分はアイドルとして、ある程度の準備をしている……はず』という小さな足場に頼り、逆風の中なんとか立とうとしている島村さんは、ガンバリマスマシーンでも天使でもなく、アイドルを目指す一人の女の子として、等身大の弱さと強さを持っていた。
見るもの聞くこと全てが初めてで、全てが自分を飲み込もうとしている楽屋で『前物販で~』と言いかけてぶった切られるシーンの残忍さと無様さを、映像の中にねじ込んでくる劇作の姿勢は、すごく信頼が置けると思います。

そういう意味では、『いつも元気な本田未央』という虚飾を剥ぎ取り、強がりの奥には一人の女の子がいるんだという当然の事実をしっかり確認させた本田さんも、等身大の姿を見せた回だったのかも。
ラブライブ!の矢澤・東条といい、アイカツ!の有栖川・新条といい、『傷つきやすく感受性豊かな中身を、社会が必要とするキャラクターの鎧で庇いながら走り続ける子』が、僕は好きすぎるネ。
逆にずーっと等身大で、よくも悪くも自然体だった渋谷さんが『らしくないな』という部分を出してきたのは、身の丈に隠れていた本性が窮地で覚醒した感じもあり、うまーく第一印象の背中にカメラを回したなと思います。

怒涛の後半で忘れられがちだと思いますが、今後の展開のためにタネを巻きまくっているのもこの回の見どころでして、渋谷さんの歌が初披露されるシーンは。サラッと流しつつ『いいか覚えとけよ、今後歌で話広げるかんな!!』という宣言と見た。
『笑顔』という魅力的な、しかし抽象的な武器しか保たない三人に、ようやく名前のついた武器が手渡される瞬間を、サラッと見せておく手際の良さは、見ていて気持ちが良いです。
本田さんに声をかけたシーンといい、『何の準備もない主人公』である渋谷凛が自分の強さを発見していく描写が多く、成長物語として必要な階段を、着実に踏んでいることが嬉しいですね。


キャラ以外の演出の話をすると、ライティングによる感情導線の作り込みが、このアニメの強さ。
本番始まってからの明暗使い分けは非常にクリアかつ強烈で、同じ場所とは思えないくらい気分が沈んでいるときは照明も暗く、上り調子の時はピーカンに照らす演出プランが徹底されていました。
常時影に潜みつつ、時に見守り時に魔法をかけるプロデューサーの立場を強調する意味でも、やっぱり光と闇が仕事をするアニメだなと、つくづく感じ入る。

Bパート入ってからの舞台裏の描写も非常に作りこまれていて、バックステージのピリピリとした空気、ステージ入ってからの熱狂、ともに真に迫った仕上がりでした。
三人はあくまでバックダンサーに過ぎないわけで、目の前の仕事をこなして行くスタッフが淡々と仕事を進める様子が、三人の緊張を増幅させる効果を産んでもいた。
二話で美城ビルを一つのキャラクターとして個性豊かに描いたように、ステージの表と裏両方に人格を埋め込んで描写しているのは、『こういう世界ですよ』と視聴者に伝える仕事をしっかり果たしていると思います。


下がる仕事を三人が担当しているとしたら、彼女らを引き上げ、『アイドルの天井』がどれだけ高いかを見せていたのが、五人の先輩たち。
直接指導を行いステージでも一緒だった城ヶ崎パイセンは当然として、積極的な性格を活かして元気にコンタクトしてくれた日野さん、穏やかな気性そのままに優しく声をかけてくれた小日向さんと、頼りになる人たちでした。
目立たないポジションの川島さん、佐久間さんですが、部長が偉い人を連れてきた時まっさきに仕事の顔をしたのは川島さんですし、まゆは優しいし可愛いから全部OK。
アイドル世界の泳ぎ方を一切判っていない三人が挨拶に出遅れる描写とか、説得力あって良かったですね。

今回、シンデレラプロジェクトが目指すべきアイドルとして完璧なアクティングを見せた"Happy Princess"の五人ですが、彼女たちにも新人の頃があり、苦労を乗り越えてここまで来たんだ、という描写を、小日向さんを介して入れていたのは良かったです。
日野さんと城ヶ崎パイセンのちょっと体育会ノリな挨拶だとか、ユニットの絆が効率よく見えるシーンを挟むことで、『アイドルの天井』という物語機能だけではなく、息をして血を流すキャラクターとしての魅力が生まれているのは、とても良い。
そういう人が声をかけ、苦境を乗り越える手助けをしてくれるからこそ、『有り難いな』『いい人達だな』という思い入れが、視聴者に(というか僕に)生まれるわけで。
キャラを活かすのが非常に上手いアニメだなぁと、再確認させられました。

三人を緊張の縁から引っ張りあげた日野&小日向の声掛けですが、彼女たちも完璧アイドルではないので、プロデューサに依頼されての行動。
無制限に『アイドルの天井』を上げると、人間に戻すのに放送二年と劇場版かかった美月さんみたいになるので、隙を用意してくれるのはグッド。
これは同時に、影の中から三人を見守り、本当に必要なタイミングで助け舟を出すプロデューサーの魅力を強調するシーンでもあるわけで、演出効果の二枚取り、三枚取りが巧く行ってるなぁ。

 

とまぁ非常に見事に『名前の無い三人の、アイドル初挑戦~上がったり下がったり、色々ありました!~』を描写した本筋ですが、側道にも美味しい要素を大量にぶち込んでいるのがこのアニメ。
サブキャラクターの筆頭は、やはり前川さんでしょう。
あれだけ人数がいれば、最後の席をとってすぐさま出世頭になった三人に、「俺達は天使じゃねぇんだ!!」となるのが自然。
そこで感情的なリアリティを担当しつつ、ちょっと間抜けな挑戦で場の雰囲気を和らげ、後の緊張を際立たせる仕事までしてる前川さんのPC4力の高さに涙出てくる。

前川さんは『凡人である自分を自覚し、それ故焦り、自分の武器を探している』という意味で、『ダイの大冒険』のポップみたいだなぁと思います。
あのお話も優等生のPC1代表であるダイだけだったら、親しみやすさを感じない上ッ滑りしたお話になってたかもしれないわけで、前川さんの剥き出しの感情表現は、視聴者をグイッとモニターの中に引き寄せたなぁと関心。
こういう人が雑草根性を見せ報われる展開大好きなので、前川さんの個別エピソード、早く見たいなぁ。

無論暖かく見守ってくれる人もいるし、力強く励ましてくれる人、その姿に『自分もッ!』と意気込む人もいる。
保護者にぶら下げられたまま、特に上がることもない子もいる。
一足先にステージを踏んだ三人に、十一人それぞれの反応を変えさせることで、個人の魅力、それが寄り集まっているシンデレラプロジェクトの魅力を手際よく伝えていました。


前川さん以外にも掘り下げられたプロジェクトメンバーはいて、たどたどしい日本語で自分の気持を伝えようとするアナスタシアや、その背中を支える新田さんの姿は、とても暖かいものでした。
『何行ってるのか分かり難いので、気持ちが伝わりにくい』という壁は、今週もワケワカンない言葉で喋ってた神崎さんと共通の問題だと思うので、早くあの子の言葉をメンバーが理解する話来て欲しいなぁ。
脇キャラを輝かすのが上手いので、マジで個別エピ消化待ちが脳内ハイウェイで渋滞起こしてるね。

取れる尺が少ないキャラも効果的に見せていて、前回オドオドしてた緒方さんが前川さんに軽く意地悪してたり、杏ちゃん担当と思ってた諸星さんが多田さんにコンタクトしてたり、二話で見せたのとはまた別の魅力が引っ張りだされてました。
周りが仲間の奮戦に興奮する中、特にリアクションのない杏ちゃんをいつ攻略するのか、マジ楽しみ。
コンビ打ち相手の諸星さんとの身長差が40cm強あるので、顔を同一フレームに収めるために常時携帯杏ちゃん状態なのが、俺の何かを刺激するわけよウン。


という訳で、今週も盛りだくさん、かつ的確すぎるほどに的確なシンデレラガールズでした。
初めてのステージアクトを迫力の作画で見せ、これからアイドルという星目指して駆け上がっていく女の子たちが、どういう輝きを目指し、その途中には何が待ち構えていて、どんな素晴らしい光景が見れるのか、シンデレラガールズが考える『アイドルってどんなもの?』を、視聴者に分からせた三話だったと思います。
本筋を回しつつ各キャラの掘り下げ、相互の関係性の強調もしっかりやって、時間を無駄にしないギッシリな作りが素晴らしい。
はー、有り難いアニメですよホント……。