イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/04/22

血界戦線:第3話『世界と世界のゲーム』
『あざといおじさん』ことライブラのリーダー、クラウスおじさんが異界チェスに命を張る話。
マインド・ゲームものであると同時に、情報収集ですら死にかけるライブラの厳しい戦いを見せる回出会ったように思う。
第2話もそうなんですが、単純にドンドンバンバン殴り合い重点ではなく、途中経過をしっかり描く、どころかそれで一話保たせちゃうのは、仕事人ものとしての緊迫感と変化が見れてとても良い。

話の構造としては『フリーの事件屋が事件解決のため、マフィア・ボスの道楽に付き合う』というものでして、必要なのは緊張感と凄み、そして異質感。
飯塚昭三の艶のある演技、トンチキな所から音が飛び出してくる音響と、サウンドで異質感を作ってきたのは、なかなか面白かった。
美術もジーっと見てると気持ち悪くなるような奇っ怪な建築物になってて、やっぱ街の話として好きだな、このアニメ。

おじさんが指していたゲームのルールはさっぱり判らんが、気づけば球形の盤面すら増えてる意味の解らなさは、異界の二文字に相応しいイミワカンなさだった。
『妖神グルメ』とかもそうなんですけど、異質な存在を異質なまま読者に近づけていくにおいて、一見生死と関係ない文化からアプローチする手法は好きだな。
腕が飛んだり人が死んだりのバトルで見せれる凄みというのもあると思うけど、今回のように別角度からキャラの強さを見せる回があると、お話が立体的になっていいわね。

おじさんは声が力ちゃんで土壇場でも紳士的で、さらっと命をベットテーブルに乗っけるところがあざといと思います。
キャラの魅力という意味では、『異界の実力者は寿命が別レベルなので、基本勝てない』という線引は、人間の守護者としてのライブラの特徴を引き出していて、なかなかいい。
何でもかんでもスーパー必殺技でぶっ飛ばして解決じゃ、メリハリ効かないもんな。

あ、レオ君はホワイトちゃんと仲良くなったみたいで、とても良いです。
丁寧に隙間を作って毎週描写があるので、ホワイトちゃんのお話がバラエティ豊かな構成を貫く背骨ってのは、あんま間違った見方でもなさそうだ。
今積み上げている描写が今後どう生きるかも、なかなか楽しみですね。


・響け! ユーフォニアム:第3話『はじめてアンサンブル』
平和な北宇治吹奏楽部にとんでもない爆弾が投げ込まれた! というわけで、前回みんなで決めた『全国大会』という金看板が部活の軋みを加速していく第3回。
想像より少し下の方向に吹奏楽部は崩壊寸前であり、前回感じていた滝先生への危機感も……まぁ炸裂したには炸裂したが、同時にそれもしょうがねぇと思える描写がてんこ盛り。
問題山積、全員棘々な吹奏楽部アニメは一体どこに行くのか……何しろ大会とか試合とかの目立つ目標以前に、練習すら始まっていねぇからな!

今回表に出てきたのは、エンジョイ勢とガチ勢の落差という、格ゲーでもTRPGでも他の競技/遊戯でも全てにおいて起こりうる、普遍的な問題。
コレに葵ちゃんが言っていた『アリバイとしての部活動』と高校生の面倒くさいプライドがからみ合って、滝顧問言うところの『合奏できるレベル』に辿り着くための土台作りは相当な大工事になりそう。
プライド捨てて『ああは言ったけどガチる気ないんで。ゆるっと放課後集まる言い訳があればいいんで。ゆるっとお願いします』と言い直せば、事が収まる状態じゃねぇしなぁ。

この話登場人物全員が自分なりの身勝手さというものを持っていて、『お前らが掲げた看板なんだから、それは守れ』と言う滝顧問も、『滝うっぜーな……今までどおりユルっとやりたいな』という一般生徒も、『ちゃんとやりたい。エンジョイ勢邪魔』と思っている少数派(?)も、それぞれに生臭い。
多様な生臭さを腹に抱えた個人が、集団として集まった時どのように同意を形成し、行動を強調させていくかつーのが、群像劇としてのこのアニメの独自性だと思います。
アニメ……というか創作物だと、触らない作品では徹底的に触らない部分だからねぇ。

今まで『アリバイとしての部活動』で巧く行ってたんだから、これからもそれでいいじゃん、という三年の一部の意見は、部内にしっかりやりたいと考えている層(主人公含む)がいる以上、万能の解決策ではないわけで。
この問題を棚上げしたり、過去に衝突した際に後輩を退部させたりして解決してきた北宇治吹奏楽部は、控えめに言って同調圧力が蔓延する腐った組織なわけです。
しかしまぁ、低きに流れたい気持ちにも本音の部分では共感できてしまえるよう作っていて、この痛し痒しというか、さてどうしようか感がお話を進める原動力にもなっている。
お話なんだから、そういう腐った部分を描写したら、風が吹いて変化していく様子を気持ちよく見せてもらいたいものだけど。(そして多分、そこは気持よく描写するのだろうけど)

演奏集団以前に人間集団としてスタートラインに立っていない北宇治吹奏楽部ですけども、その病巣を切り取って姿勢を作るのが、しばらくの課題になるのかしら。
滝先生に正論ぶつけられた瞬間部長を吊し上げにかかる三年とか、演奏ミスって舌出してる生徒とか、生臭かったなぁ……。
各々のズルさと弱さを抱えた登場人物たちが、それをどう乗り越えどう活躍しどう変革していくかというのは、やっぱ楽しみね。


問題ありなのは滝顧問もそうで、常に正しいことを言い続ける割に、面倒くせぇ高校生の機微に付き合うつもりはない真っ直ぐさは、どうにも痛し痒しです。
演奏集団として北宇治吹奏楽部を見た時どう切り盛りするか、という視点においては、滝顧問は的確な行動を取り続けている。
しかし『お前らはブラスバンド以前だ。やるなら最低限のところまでは来てくれ』という正論は、『アリバイとしての部活動』をやっているつもりな高校生には、一番突きつけて欲しくない言葉でもあるわけです。
箸の上げ下げから懇切丁寧に教えて……という方法もないわけじゃないんでしょうが、相手もう高校生だし、そもそも滝顧問はそういうことするつもりがない。

一度ガチる体制が整えば、技術指導は的確だし、余計な根性論は持ち出さないし、良い指導者だと思うんだけどなぁ……。
最低限の課題を与えつつ、コンタクトは最低限にする今の距離感、やる気ない輩が自主的に辞めざるを得ない状況を整えているようにも見えるけど、そこまで計算高い人間なのかなぁ、滝先生。
今回はたくさんの問題を見せ、少しの解決策を示唆する回だったので、滝顧問の価値観に関しては次回以降見えてくることでしょう。


今回顕になったのは北宇治の問題点だけではなく、作品の窓たる主人公のスタンスもそう。
「本気で全国行けると思っていたの?」と考えていながら(そしてそれを実際口に出しながら)も、高坂さんを傷つけたことを気にし、今の腐った北宇治に同調も出来ない中途半端な立場の久美子は、まさに作品全体と同じように中途半端な立場。
練習ボイコットに対して怒る麗奈や、ふわっとした外見に情熱を秘めた緑はガチる方向で固まっていますが、今回久美子は、その緑から「久美子ちゃんはどっち?」と問われても、答えることが出来ない。
姉との会話でもチラホラ見えましたが、吹奏楽というものに対しての久美子のスタンスは、北宇治吹奏楽部がそうであるように、真剣さと楽しさの間でゆらゆらしている。

それは多分、この話が真剣さと楽しさを対立させた上で、真剣にやることで見える楽しさ、遊びの中にある真面目さに辿り着く話だからだと思う。
『一見分離しているものが、実は同一である』と示すのは創作物の基本だし、根本的なカタルシスを生むものだと思うわけですが、それを効果的に見せるためには一般的な状態、つまり分離している状態をしっかり見せなければ行けないわけです。
宙ぶらりんな久美子と北宇治吹奏楽部が今回描写されたのは、やっぱ今後この中途半端さを解決し、物語的に確かな手応えのある展開を引っ張り込むためじゃないかなぁ。

その上で、主人公の友人としてポジティブな立場を与えられてる二人が『真剣にやりたい』と表明しているのは、作品全体が『ガチりに行く』という意思表明に見えて、ちょっと先が見えた気がした。
分裂を見せつつも、細かく作品全体の行く末にガイドを引いてくれる描写があるのは、視聴体験が迷わずに済むので有り難いです。
ここら辺は、当りはキツいけど間違ったことは言っていない滝顧問の描写も、おんなじ仕事をしていると思う。
『この人らについて行ってもいいかな』と感じられる要素、というか。
そういうファクターが存在してる作品って、やっぱ安心できると思います。

色んな人の色んな問題と、それをどう転がしていくのかという指針が見える、第3話でした。
想像してたよりじっくりと問題に分け入っていくようで、作品全体の時間の流れ方を感得出来た気がします。
そして、僕はこのお話のリズム、結構好きです。
来週以降もじわじわお腹が痛い展開が続くと思いますが、楽しみであります。