イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/05/18

・GO! プリンセスプリキュア:第16話『海への誓い! みなみの大切な宝物!』
みなみ会長二度目の個別回は家族ネタであり、完璧超人あこがれの人はもっと完璧だったというお話。
日常パート10分で終わって残り全部戦闘だったり、みなみさんが急に自然の戦士みたいにチャネった寝言を垂れ流しにし始めたり、海藤シティのあまりの支配っぷりに良くない想像を巡らしたり、ちょっと普段のプリプリとは違うテイストでしたね。
そして思い返せば、明堂院にしても四葉にしても、プリキュアの金持ちは大概あのぐらいのモノポリー加減だった。

お兄様は金持ちでありながら庶民目線を忘れず、自分と家のオリジンを大事にする、隙のない御仁でした。
『銭稼ぐ!』や『会社デカくする!!』といった即物的な夢ではなく、それを前提条件により普遍的な価値を目指していて、ナチュラルに意識高いなぁとか思ったよ。
そしてはるきら、仲の良い兄妹はともかくなんで君らも抱き合ってるの……。
やっぱ今回ちと変だったなぁ、会社ネタなのにバブルキーとかさ……嫌いじゃないけど。

そんなお兄様の『シャチ("海のギャング"を意味する隠語)になりたい!』という童心を叶えて大暴れさせたトワイ様ですが、露骨な兄フラグを回収していった。
やっぱカナタの妹かねぇ、今回出てきたし……バンダイの販促窓口と化してたけど。
クローズさんに比べキャラが薄い感じもあった幹部二名が、トワイを軸にキャイキャイすることで粒が立ってきたのは、なかなか面白いですね。

 

・プリパラ:第45話『となりのクラスの悪魔なの』
新! 展! 開! というわけで、あろま&げどんのJS6コンビ掘り下げ月間一発目。
あんま派手なことは怒らず、生身の二人をしっかり見せる回でした。
あっという間に天使と悪魔がフィーバーしているプリパラ世界は、相変わらず手首にモーター入ってるとしか思えないミーハーっぷりだ。

今までアヴァター姿で意地悪してたあろまですが、小学六年生フォームは年相応にちっこくて弱々しい。
というか、ツンデレな態度ながらも言ってることは『一緒に遊ぼう』でしか無いので、可愛げをむき出しにしてきた感じ。
タブー中のタブーをサラッと口に出してみれぃを一発論破した頭脳とか、キャラ維持に気合を入れている様子とか、ラジカセでムード熟成とか、ベビーターンに向けてしっかり積んでくるなぁ。
黒歴史を量産し授業中でも暴れまくる暴走超特急ぶりは、まぁ愛嬌ってところだ。

相方みかんの方は、やりたい放題し放題なあろまに付き合って天使キャラをかぶりつつ、幼なじみを大事にしている様子が透けて見えた。
無論天然な部分も大きいんだけど、思いの外頭いい子なんじゃないかな……倫理とか常識は置いてあるけど。
あろまのツンデレと合わせて、何処にお話を落ち着かせるか見えてきた感じがあります。

まぁ前回前々回で株を戻したと思ってたマスコットが、セクキャバにドはまりしてまたダメになったりとか、時間かかりそうな部分もあるけどね。
ニコンといい、このアニメのマスコットの生々しさは相変わらず異常。
一つ壁を超えられたら肉欲接待で泥沼に引きずり込むネコ姉さんの女っぷりは、怨念すら感じるレベルです。

とりあえずのご挨拶という感じで、元気にリアル・ワールドの二人が暴れまわる回でした。
落とし所は見えつつも、あまりの暴走超特急っぷりに手間と時間がかかりそうでもある。
どう取りまとめて行くのか、そしてどう掘り下げていくのか、先が楽しみになるお話でした。

 

SHOW BY ROCK!!:第7話『妖怪ストリート
ロックと青春と救世が交錯する欲張りアニメ、プラズマジカの話にも一段落して折り返したので、今回は男の子主人公シンガンのお話。
可愛いと青春にパラメーターを降っていたプラズマジカに比べ、笑いとバトル重点で住み分ける展開であり、シンガンのいいところが120%出たエピソードでした。
複数主人公でやると、キャラごとにお話のテイストをがらっと変えられるので色々出来ていいですね。

シンガンはとにかくバカガキどもが馬鹿やっている姿が輝いており、連発される楳図&水木絵といい、頻発する顔芸といい、可愛い可愛いマジカの四人には出来ない雑な扱いを受けていた。
前回のコメディリリーフといい、最高に美味しい立場を活かしきってるな、彼らは。
タイプの違う中二病を三つ並べる造りも笑いの素地になっていて、良く出来たメンバーだなぁと思います。

同時に笑いだけではなく、ロム兄さんを要にした熱血展開も出来れば、女の子には行使不可能なヴァイオレンスも炸裂させていて、欲張りアニメの面目躍如。
ダークモンスター戦でもロム兄さんが反撃の狼煙を上げていて、ホント頼りになるキャラが居るとお話がスムーズに、そして最高に盛り上がって進んで有り難いですね。
久々の3Dバトルはキレッキレで、あんなに馬鹿やっていたガキどもが頼もしく見えるから素晴らしい。
ていうかアイオーン君、君ほんとに雷とか出せたのね……ファッション神じゃなかったんだ。


メインはおとぼけ中二病熱血バンドのドタバタ活劇なのですが、妖怪ストリートという舞台を見せるのも、今回のエピソードの狙い。
このアニメ、MIDIシティという異世界の魅力を高めるデザインが本当に素晴らしくて、妖怪ストリートのホラーでキッチュでポップな感じも、とても良かったです。
バンドと世界観を巧く密接させて、ヴィジュアル的な説得力を両方から積み上げていく手腕は、さすがサンリオというべきかなぁ。
まりまりちゃんもいいヒロインしてたしね……シンガンとは全然絡んでねぇがな!

いい仕事といえば敵の中ボス・オガサワラさんがベーシックながら良いヘイトアーツをしていて、『いたいけな少年を悪のモンスターに変える』『自分では手を下さず、破壊の力をまき散らす』などなど、全身で『こいつは悪いやつなので、その内ぶっ飛ばしましょう!!』というサインを出していた。
今回の話はシアンの唯一性を分散させるというか、男の子チームも戦闘できるよ! というのを示して舵取りをちょっと変えていく展開なので、敵さんの内情が見えるようになるのは大事よね。
ダークモンスターが悪ければ悪いほど、それを打ち倒すシアンとシンガン、彼らの活躍を見守る視聴者の気持ちも盛り上がるわけで、悪役に尺を使うのはとても良いと思います。
やっぱヒーローモノの文法も、しっかり抑えてるなぁ。

今回シンガンがバトルゾーンに足を踏み入れたことで、今後VSダークモンスターに重点していく感じですが、その第一歩として選ばれたのはアイオーン。
悪落ちの前準備が非常に分かりやすいのが、とってもグッド。
今まである意味対岸の火事だったダークモンスター問題ですが、アイオーンに手がかかることでぐっと身近になるし、何よりアイオーンは可愛いやつ。
今までの描写の中でアイオーンが好きになっていればいるほど、次回起こる波乱はむっちゃ許せなくなるはずであり、良いチョイスだなぁと思います。
どーでもいい奴がひどい目にあっても、どーでもいいもんなぁ……。


世界救世編への進路変更第一弾として、我らのシンガンクリムゾンメイン回として、勢いと笑いに満ちた、いいお話だったと思います。
真っ直ぐに青春とバンドに立ち向かってきたプラズマジカがメインからサブに回っても、ちゃんと面白く骨のある展開を作れているのは、群像劇としてとても強い所です。
次回身内に被害が及ぶわけで、今回見せた熱血がどのようにさらなる炎上を見せるのか、今から楽しみですね。

 

・響け! ユーフォニアム:第6話『きらきらチューバ』
うっかり掲げちゃった全国大会という目標に向かい、反発炸裂ながらも何とか邁進してきた宇治川吹奏楽部。
折り返しの第六話はその歩みを少しゆるめて、初心者・葉月ちゃんを軸に低音パート全体の楽しい雰囲気を見せる回でした。
物語が始まった頃の緩んだ空気の『楽しい』ではなく、滝顧問によって競技集団へと変化しつつある今の『楽しい』を切り取った、ユッタリとガツガツが同居するお話。
非常にこのアニメらしい『休憩回』だったと思います。

これまでのユーフォニアムは、ゴミクズ軍団北宇治吹奏楽部がから滝顧問というカンフル剤により、どのような曲折を経て高い所に上がっていくかという物語的運動に、非常に熱心に取り組んできました。
だらけた状態の描写あり、内部での意識の差あり、突然の変革への反発あり、物語を推進させていくための材料は、そこかしこに埋め込まれ、的確に機能していた。
お話がグイグイ進むことにとても貪欲であり、その意欲が空回りしないよう、意図を込めた演出がなされていたのがこれまでのお話。
言わば『早くて熱い』展開でした。


比較して今回は、『遅くて温い』展開です。
低音は副部長の囲い込み政策もあって、滝顧問投入以前から意欲が高いキャラクターが集合しており、カメラを低音だけに絞るとそこまで温度差は発生しません。
なので、反発から発奮したり、しっかりと音楽に取り組む楽しさの発見であったり、これまで物語を推進していた燃料は、こと低音だけに限ると思いの外少なかったりするわけです。
一見やる気なさげに見える中川先輩も、同パートの久美子に対抗意識を燃やし、個人練習に励むやる気を見せていますしね。

これまで物語を推進していた『むかつくけど正しい滝への、反発と共感』という燃料を使わない今回、お話の展開速度は下がります。
初心者葉月ちゃんの一歩ずつの成長に、低音パートが手を貸すというベースラインに、コメディチックな演出が随所に挟まるゆったりとした展開をすることで、何が見えるのか。
それは、彼らが過ごしている普段の部活風景が、どう『楽しいのか』という詳細です。

チュパカブラの整備シーンにしても、葉月のモチベーションアップ大作戦にしても、今回のお話はこれまで早い展開の中で取りこぼしてきた、『ブラスバンド部という部活動がどういう活動をしていて、何が面白いか』を具体的に、詳細に伝えてくるシーンが多いです。
とにかくクローズアップで、じっくり時間を使って、あまり劇的ではなく流れていく『部活の時間』はドラマチックな展開ではありませんが、むしろそれ故に落ち着いたリアリティと、小さな憧れを宿しています。
高校生らしいくだらないやりとりの中に、『あ、なんかイイな』と思えるような一瞬が、ちゃんと埋め込まれている。

そしてそれは、作中の物語に共感するための重要な足場であり、『このアニメは俺の話だな』と感じさせる核になる描写です。
『早くて熱い』これまでの展開の中でも、しっかりそういう感情を作ってきたからこそこのアニメは面白いわけですが、メインストーリーを劇的に進行させることを一時的に止め、あえてスローペースにテンポを落とした今回、笑いとともにこのような身近な共感が視聴者に届くよう、エピソードは組み立てられています。


今まで主役を張っていた久美子も滝顧問もそれほど目立たず、葉月がメインなのも、身近な共感を狙ってのことかと思います。
何しろ、吹奏楽に知識があったり、ブラスバンド部の活動を身をもって経験してきた視聴者のほうが、そうでない視聴者よりもはるかに少ないはずなのですから。
何も知らないけどブラスバンドが好きで、友達が好きで、今視聴者が見ているのと同じ、宇治川の素敵な光景が好きな葉月が、強い意志を持って何かを成し遂げようとする姿は、オーソドックスな成長の力に満ちています。
かなり『出来る』主人公(そして『やらない』主人公)だった久美子とは違う角度、違う速度でお話を回すことで、お話に緩急をつける意味合いも、勿論あるでしょう。

熱心な葉月を、要所要所でのボケを交えつつ低音パート全員で支えていく展開は、チームとしてまとまってきた時間の変化を感じさせ、充実感がありました。
先輩たちが主人公チームをアダ名で呼ぶところなど、硬さが取れて胸襟を開いてきた雰囲気がよく出ていて、このチームが困難に立ち向かうであろう未来を、ドッシリと待てる気持ちになった。
葉月を支える低音パートの姿を写すことで、時間経過とともに訪れた変化と成熟、これまで踏み込んだ描写のなかったキャラクターの地金を見せることも出来ていて、遅いペースを有効に使っていたと思います。

お互い支えあう久美子、みどり、葉月の三角形を見ているのが気持ち良くて、なんとも言えない甘酢っぽい気持ちにさせてくれました。
やっぱり本気でやっている子を見捨てず支える真心というのは、理屈を超えた暖かさがあるもので、キグルミだの抹茶ソフトだので笑いを取りつつも、最後はきらきら星で綺麗に落とす話運びには
安定感があった。
主役サイドを低音にまとめつつ、久美子の成長を写す鏡である高坂さんをペットに離す構図も明瞭に見えて、人間関係への理解が深まったのも良かったですね。
一話から比べると、高坂さんとの間合いはとても良い変化をしているなぁ。

今回ドッシリと話しを運んだ恩恵を一番受けていたのは、梨子&後藤先輩の二年生チーム。
後藤先輩は外見より熱く面白い人であるのが感じ取れたし、梨子は穏やかな気性とふっくらした体格が強調され、ともにキャラクターの顔がより良く見える描写でした。
梨子の生々しい肉っぽさは、京アニっぽさ全開のフェティッシュだなぁ……ぱつぱつみっしり。
こうしてサブに光を当てるエピソードをやることで、低音チーム全体をしっかり描き、信頼感を醸成することが出来るわけで、ただ緩くやるだけではない鋭さも感じました。


北宇治全体を捉えていた今までに比べて、舞台に上がるキャラ数を絞った(といっても7人活写してんだけど)今回ですが、低音パートを接写したことは全体の描写にも生きています。
低音パートは『北宇治の上澄み』とも言えるやる気勢の住処ですが、今回描写された空気と多少の差異はあれど、『海兵隊』とマーチングバンドを経て、滝顧問の誘導に従って変化しつつある北宇治は、同じようなやる気に満ちているはず。
低音に絞って描写することで逆に、『今他の連中もこんなかんじかな』という想像に骨肉がしっかり付いてくる結果に繋がって、今の北宇治の状況が判る効果が出ていたと思います。

それを補助するべく、ちゃんと他パートの人々の描写も、セリフや掛け合いはなくとも挟んでいましたしね。
早い展開の中で緩くて身近な描写が共感の足場になっていたように、今回見せた楽しそうな低音パートのクローズアップが、今後また速度を上げていくであろう北宇治に説得力を準備する役割を持っているわけです。
ただ緩くやるのではなく、早く熱くやるために必要な準備をひっそりと、しかし確かに積んでおく周到さは、このアニメらしいなと思います。

しかしその速度についていけないキャラクターも勿論いるわけで、そこで一波乱起こすためのオーディション制度の導入、何度も下克上の可能性を強調するセリフ、その具現者としての高坂さんなどなど、今後の展開のためのギャップづくりにも余念がありません。
ずっと早く強く真面目に走って行く北宇治と対比されていた葵ちゃんにも勿論今回出番があって、大きく息を吸って決意を込めた「オーディション、頑張りなよ」となるわけです。
「頑張ろうね」ではなく「頑張りなよ」な辺り、もう一つの決意を決めている感じもしますが、次週辺り埋めてた地雷が炸裂する気配ですね。

伏線といえば、葉月に恋心がインストールされるシーンがしっとりと描かれていて、今後はラブの方向にも掘り下げていくのか、気になるところです。
秀一は久美子との気の置けない間柄がしっかり描写されているので、ちと切ない恋になるのか、はたまた触っている時間はないのか。
ここら辺は全然読めないところですが、どう転がすにしても面白そうではあります。


『遅くて温い』展開だからこそ出来るお話をしっかり展開し、必要な描写と伏線を積み上げたエピソードでした。
緩いお話に相応しい笑いと弛緩をキッチリ準備しつつも、襟を正して見せるべきものを見せ、次のペースアップの準備をする。
こうして緩急がつくと、真面目一辺倒ではない豊かさが生まれ、作品世界の奥行きがグイッと広がるわけで、必要だし面白いエピソードでした。
うーむ、やっぱ面白いな、このアニメ。

 

うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレボリューションズ:第7話『ONLY ONE』
もう折り返しを過ぎたアイドル×乙女アニメ、今回は黒崎蘭丸パイセンのお話。
キャラの要素をしっかり拾い、凹ませる所を凹ませてお話の広がりを作る、素直で魅力的なお話でした。
ぶっ飛んだ部分だけで突っ走るより、ストーリーの中での交流を通してキャラが変化していく泥臭い話のほうが、結局俺ァ好きだな。


うたプリのキャラが持っている固定イメージといいますか、『この子はこういうことしてくれたら嬉しい』みたいなイメージは、さすがに長く続いているだけあって堅牢で、なかなか崩しにくいのかな、というのをカミュ回を見ていて思いました。
あの話はあまりに完璧なカミュを主人公が崩しに行って、結局崩せないことで完璧さを強調する作りなわけですが、やっぱ登場人物の働きかけが目に見えた効果を出さない展開は、自分的にはカタルシスに欠けるわけです。
固体化したキャライメージ、『こいつはそういうもんだし』という固定ファンからの期待に答えるのも大事だとは思うけど、新しいお話という体で放送されている以上、キャラクターの決断と働きかけで、小さくてもいいから何かが変化するお話が見たい、と僕は感じています。

少し崩した角度から光を当てることで、キャラが元来持っている魅力も強調されるし、新しい輝きももしかしたら見えるかもしれないわけで。
まぁこれは俺がアニメしか追っかけてないクソにわかで、首までどっぷりうたプリに入り込む熱心さがないからこそ、醒めた視線で彼らを見てる証明なのかもしれんですが。
軸足に体重を預けてうたプリを好きでいる人にとっては、『キャラらしさ』最優先の姿勢というのはとても嬉しいものなのかもしれんですね。


とまれ、今回のお話はお話の主役・蘭丸先輩が『全てを否定しきれないが、一部明確に間違っている観念』を抱いていて、それをシリーズ全体の主役・はるちゃんが正していくという、分かりやすい構造で展開します。
アイドルという現在に全力投球する蘭丸先輩の姿勢は好感が持てますが、そのためにロックという過去を全否定するのは、誰がどう見ても分かりやすく間違っている。
蘭丸一番のキャラ要素である『ロック』を出だしから封印することで、『おいおい、なんか違うんじゃねーの?』という違和感を一発で植え付けているのは、巧い運び方でした。

そういう論理的な不実だけではなく、蘭丸自体が過去に強い愛着を持っているため、今アイドルとして輝こうとしている自分自身の否定につながるという、感情的な不実も盛り込まれています。
論理的にも、感情的にも訂正するべきポイントがはっきり分かることで、それを是正していくというお話の流れも手早く飲み込め、本筋もそれを裏切ること無く素直に進みます。
非常にオーソドックスな筋運びですが、ぶっきらぼうに見えて熱血漢な蘭丸のお話としては、この素直な進め方が嬉しい。
二人はアイドルと作曲家なので、『新曲』という明確かつ情緒的な接点があることも、お話の強度を高めていますね。

素直な筋立てを迷わせないために、今回のお話はキャラクターの数が絞られています。
迷える主人公蘭丸と、戸惑いつつも道を考え、蘭丸に示していくはるちゃんがメインを張り、他のメンバーの出番は、あくまでオマケ程度に抑えられている。
役者の数が増えすぎると、お話がどういう形でどう進むのかも混乱してくる傾向が強いわけで、思い切って『主役とヒロイン』というミニマムな構成に絞ったのは、個人的にはとても良い印象を受けます。

同時にサブアクターもただ突っ立っているだけではなく、嶺二が空回りしつつも人の良さを見せて気を使ったり、かつて教え子として恩を受けたレン&聖川さんが心配役を担当したり、今までの関係性を踏まえた見せ方がされていました。
あくまで本筋に関わる人数は絞りつつ、見ていて気持ちよくなる小さな見せ場を盛り込む今回の見せ方は、お話とファンサービスのバランスが良く、見ていて盛り上がる作りだったように思います。
このバランス感覚は第4話でも見えたものなので、脚本として共通して関わっている、関根アユミによる所が大なのかなぁ……。


ただの構図だけでは視聴者は心を動かされにくいわけで、大事なのはその中身に感情の変化が埋め込まれているか、否かになります。
蘭丸先輩はぶっきらぼうで人の意見を受け入れない印象を持ったキャラですが、アイドルという仕事には常に真剣だし、変化を受け入れる誠実さをしっかり持っているキャラクターです。(だから好きなんだけど)
ツンツンと相手を拒絶する外側だけではなく、本物の気持ちなら受け入れ変化する柔らかな内面も蘭丸は持っていて、はるちゃんは外側を乗り越えて内面にたどり着かなければいけません。

今回蘭丸の障壁を乗り越えて変化をもたらす鍵は、相手を思う真心になります。
序盤、はるちゃんは持ち前の内気さを発揮して蘭丸のツンツンした外側に跳ね返される描写が続きますが、これは後半のための伏線でもある。
内気さという短所は思慮深さという長所でもあって、蘭丸の側で彼が抱えている正しさと間違いを見つめ、それについて真剣に考え、新曲という答えを携えて帰ってくる展開は、実は序盤のアワアワした描写がないと生きてこない。
無論その展開に最大の説得力を持たせるのはキャラクターが抱えている気持ちであり、それを表現し視聴者に届ける表情・演技・情景の描写も今回は良く出来ていました。
蘭丸が隠している本心をはるちゃんが指摘するシーンは、ベタながら、というかベタ故に良く響くシーンだった。

ナイーブなはるちゃんのトスを受ける蘭丸も相当ナイーブな存在で、作中ずっと心は揺れているし、その動揺が大きな変化を受け入れる素地にもなっている。
完璧に完成されすぎた存在は、自分の感情の変化だけではなく、物語のダイナミズムと盛り上がりも受け入れる隙間を巧く作れないことがあります。
蘭丸が女々しく悩みまくっているからこそ、隠した本心を指摘したはるちゃんの真心を受け入れ、矛盾を解決してお話を収める所に収められるわけです。
そして、この拒絶と受容の揺れ動きこそが、今回のお話の盛り上がり、視聴者が感じる『面白さ』の源泉だと、僕は感じました。
主役とサブのバランスだけではなく、構造と内実のバランス取りも巧い話ですね。


演出面の話をすると、ロックフェス開催地の描写が良かったです。
ロックという過去と、アイドルという現在が交錯する状態を、非常に上手く見せていました。

蘭丸がかつて持っていて、今も心に秘めている夢そのものといえる場所が取り壊されるのは、SSS開催のためです。
作中蘭丸が口にするように、SSSはアイドルとしての蘭丸が全力で取り組まなければいけない現在なわけですが、その『今』がかつての(そして実は今の)夢を食いつぶそうとする構図を、看板一枚で見せたのはとても良かった。

SSSはお話全体が収束する重要なイベントなので、その凄みを見せ、『SSSがついにやってくる!! お話も終わりに向かって最高に盛り上がってきた!!』という気持ちを作っていかないと、シリーズ全体が収まりません。
今回のように、派手さはないが情緒的な見せ方をSSSに対して行うことで、直接的に盛り上がりはしなくても、その準備になる土台作りはしっかり出来ていたと思います。
今回の気の利いた演出を上手く膨らませて、ST☆RISH三度目のお話がちゃんと盛り上がり、ちゃんと収まる器を大きく仕上げて欲しい所です。


メインとサブ、情動と構造、ストーリーと演出。
色んなバランスが良く取れた、安定感のあるお話だったと思います。
自分としてはこういう話をクロスユニットでも見たいのですが、今ん所先輩の話のほうがおもしれーのがなぁ……。

とまれ今回の話が良く出来ていたのは事実であり、この良さを単発で終わらせるのではなく、シリーズ全体の楽しさに繋げて欲しいところです。
『色々あるけど、俺は蘭丸とはるちゃんとうたプリ好きだな』と再確認できた回でした。
いやホントね、ST☆RISH関係の描写が弱すぎて、このままじゃ本筋全然盛り上がらんよホント……。(老害っ面で愚痴垂れ流しマシーンにトランスフォーム。以降は聞き苦しいので終わり)