イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/05/23

・プリパラ:第46話『でび&えん保育園!ケロ?』
アロマゲドン強化月間第二弾は、犬と少女と難病という『泣かせる三要素』全部詰め込みのいい話でした。
病気は病気でも中二病だけどな……しかも罹患者は中学二年生ですら無い、ガッチガッチの幼稚園児だ!
あろま&みかんの回想をメインにしつつ、境遇の重なる子供たちを現実世界に置くことで共感力を上げ、常時発情してるクソ犬で話を引っ掻き回して起伏を作り、最終的には『自分たちをここまで引っ張った憧れに、自分たち自身がなりつつある』という綺麗な落とし所でまとめる、かなり技巧を凝らした脚本だった気がする。

今回中学生組を切り離し、あろま&みかん&らぁらの小学生トリオだけで話を回していくことで、今まで敵役だったアロマゲドンの人間的な側面を掘り下げていくトレンドに、上手く合致した展開になりました。
やっぱり俺は、幼い日の約束だとか小さな勇気だとか、今回出された定番のネタに非常に弱い。
中二病アイドル』という、あろまが選びとった世界に対向する武器をずーっと支えてきたみかんは、キャラでも何でも無く天使すな。
あの身体能力と腹ぺこ加減から考えると、金隆山と同じミオスタチン関連筋肥大なのかもな、みかん。

前回から等身大の小学六年生視点で話が進んでいますが、彼女らは中等部のおねーさん達とも今回ゲストの幼女とも違う、子どもと思春期の中間地点にいる存在。
今回のお話はアロマゲドンのオリジンを回想しつつ、そこから成長しかつての自分たちを導けるようになった二人を描く話なので、中等部チームが出てくるとお姉さんぶれない。
主人公らぁらの『困った人がいると即座に首を突っ込む』特質を再確認する意味もあって、小学生+幼稚園児の幼いチームが小さい困難を乗り越えていく話にしたのは、なかなか良かったと思います。
とりあえず人助けに駆け出して、ガンガン他キャラに絡んでいくらぁらの積極性とお人好し加減は、やっぱ安心できるやね。

ゲスト幼女が如何にもな子供ではなく、このアニメらしいシニカルな賢さを兼ね備えていたのは、コメディを機能させるスパイスとして良かった。
初期イギーも真っ青なケロのクソ犬っぷりとか、いい話をベースに置きつつもピリッとした笑いを入れ込むのは、落差があって飽きない。
笑わせる所とシンミリさせる所のバランスの良さは、中村能子脚本の特徴なのかなぁ。
……過去エピリストを見返すと、ベビーターンする回はほとんど中村能子脚本だな……。

定番といえば定番の過去話なんですが、テクニカルでメッシーな脚本が巧く効いて、狙い通りアロマゲドンの好感度が上がるエピソードになりました。
プリパラは敵役のベビーターンが巧いアニメなのですが、アロマゲドンもかなり綺麗にやってくれていて有り難いです。
今回稼いだ好感度を今後どう使っていくのか、楽しみな所ですね。

 

・響け! ユーフォニアム:第7話『泣き虫サキソフォン
青春の激浪を駆け抜けていく北宇治吹奏楽部群像劇、七回目の今回は葵ちゃん起点で三年生の地雷が連鎖爆裂するお話。
『いつか碌でも無いことになるなぁ』と予感していた過去の遺物が掘り起こされ、去る人は去り、残る人は残る状況の中で、三年生四人のパーソナルが良く見えた話となりました。
明暗がクッキリと心情を写す演出は、如何にも武本演出だったなぁ。

葵ちゃんの退部はかなり丁寧に描写を積み上げて至った場所なので、唐突感は一切なく、それが引き起こした衝撃もまた素直に受け止められる展開でした。
主人公久美子を葵ちゃんと強く絡ませることで印象付け、今回の起爆に繋げる一連の流れは、スムーズで見事。
前回低音のメンバーを掘り下げたように、今回は三年生を掘り下げていくお話なので、要素を丁寧に扱った結果として個別の話が来る流れは、展開を素直に受け止められて気持ちが良いですね。

滝顧問の登場により変質してしまった北宇治の過去、第一話で垣間見せたゴミクズ軍団としての北宇治を象徴しているのが、後輩追い出し事件。
久美子達一年はこの事件の当事者ではなく、それ故一種の特権的な清潔さを保持しているわけですが、その時部活に居たメンバーは起きてしまった事件にダメージを負い(もしくは負わないことで特殊性を強調し)今に至っています。
それは見て見ぬふりが出来ない重大な傷であり、此処で対処をしておくのは組織モノとして、思春期の話として大事だと思います。

起爆剤になった葵ちゃんはしかし、犠牲にした後輩への改悛だけで部活をやめる聖人というわけではない。
葵ちゃん自身が口にしていたように、退部は受験優先という現実的な目線も、後輩への後ろめたさという感傷も、プラスもマイナスも綺麗も汚いも、弱いも強いも引っ括めての決断です。
それを一言で言い表したのが『吹部のこと、そこまで好きじゃなかったんだよ』という言葉であり、これは『たしかにそういう人もいるだろうね』という感慨を視聴者に、ただ弱いだけではない脱落者を出したことで作品世界の立体感に、それぞれ与えるいい言葉だな、と思います。
葵ちゃんが代表する、現実的で吹っ切ることが出来ない中途半端な存在がいてこそ、いろいろあっても吹奏楽部に残り、滝顧問のキッツい指導を進んで受ける連中に説得力が生まれてくるわけです。

葵ちゃんの退部は葵ちゃんの弱さと強さが引き起こした個人的な事件ではあるのですが、その背景にあるものは先輩世代共通の傷であり、それ故晴香にも影響して一波乱起きる。
晴香の抱え込んでいるトラウマは、彼女自身が作中で素直に吐露しており、それをフォローする香織の言葉も、素直に晴香の強さと弱さを言葉にしています。
晴香は自分を『優しいだけ』と言いますが、崩壊寸前の部活を背負ってまとめようとする人の良さと、それで何とかまとまってしまう人徳は、間違いなく彼女の美点。
彼女が頼りなく思っている『優しさ』は、滝顧問という起爆装置が辿り着くまで北宇治を維持させ、何とか部活としての形を整えてきた強力な箍でもあるわけです。


弱さが強さになり得るなら、強さが弱さでもあるのは道理であり、そこら辺は秀一が電車の中で指摘していたとおり。
常に飄々とした人格で自分を鎧っているあすかはしかし、彼女の私室が示しているように、極限まで切り詰めた余裕のない内面を持っています。
『優しい』だけしか能が無い晴香がなんとか背負った、問題だらけの北宇治吹奏楽部を、完璧で余裕が有るように演じ続けているあすかは背負うことが出来ない。
晴香の弱さと強さだけではなく、あすかの強さと弱さも的確に捉え、伝え、呼び戻している香織は、後輩である高坂の実力を正当に認める描写引っ括めて、非常に人格的に成熟し、バランスの良い意識を保っていると言えます。

部活動の中でそう装っているように、あすかが本当に賢く、頭が良く、一切の隙がない成熟した人間であるのならば、二歳も下の久美子や秀一にその仮面を見ぬかれることはないでしょう。
香織が指摘しているように、あすかの完璧さは演奏に必要なモノ以外を全て切り捨てることで成り立っているギリギリの態度であり、そんな彼女が後輩追い出し問題という傷を抱え込み、膿を貯めこんでいく北宇治吹奏楽部という組織を背負えたかといえば、答えはNOでしょう。
そんな不完全な自分を把握しているからこそ、愚図る晴香に対してあすかはあまりにも正しい態度を取って一線を引いた。
葵ちゃんの退部を切っ掛けに爆発できた晴香よりも、ただ一人何もない部屋で演奏を繰り返すあすかのほうが、余裕はないのかも知れません。

中途半端さに耐え切れず部を去った葵ちゃん、優しくて便利な自分に激発する晴香、出来る先輩の仮面をかぶり続け自分を守るあすか、そして三人を冷静に暖かく見守る香織。
三年生四人、それぞれの人格と決断がよく見えるお話だったと言えます。
もう一人の当事者中川先輩と合わせて、このようにキャラクターの表情が掘り起こされていくと、群像劇としての魅力もグッと深まるわけで、とてもおもしろい、重要なエピソードでした。


メインは三年生ですが、サブカメラでもしっかりと人間の顔色を捉えていくのがこのアニメ。
葵ちゃんの退部を受けた滝顧問が、ブラスバンド育成マシーン以上の陰影を見せていたのは面白かったです。
『厳しくて過剰に正しい人間だが、北宇治が強くなっていくことに喜びがある』というのは練習でも見えるのですが、そこから当然こぼれ落ちていく人間になにか思いはあるのか無いのか、今までいまいち見えにくかったわけで。
今回そういう部分を描いたことで、感傷を切り捨てなければ自己を維持できないあすかの余裕の無さとの対比になっていたのも、仲々鮮烈な見せ方でした。

前回埋め込んだ葉月の恋心もしっかり進展させていて、去りゆく電車と幼馴染コンビを目で追うシーンは、あまりの少女漫画粒子濃度に頭の奥がキーンってなった。
久美子は秀一の前だと声のトーンが一個下がって、友人の前では見せない姿を見せているのが、油断してる感じで、とても良いですね。
あのレベルで敷居無く接していると、葉月に勝ち目がないような気がしてしょうがねぇが、それは来週以降かなぁ。

高い演奏技術を保った高嶺の花という立場はあすかと同じながら、また別の描かれ方をされている高坂さん。
今週もトランペット内部の軋轢を物ともせず独尊したり、なんとなく寂しいので幼なじみの合間に挟まってみたり、独特の動きをしていました。
話が進んでくるとキャラクターの様々な魅力が引き出されてきて、どのキャラが画面に写っても面白いですね。

そんなこんなで、葵ちゃんのグラウンドゼロでした。
『アリバイとしての部活動』という言葉の切れ味でこのアニメに前のめりになった身としては、葵ちゃんの退部は寂しくもあり、来るべきものが来たという気持ちもあり、これでよかったのだろうという諦念もあり、複雑な気持ちです。
葵ちゃんがいなくなっても、一度火の付いてしまった北宇治は止まらない。
来週は夏祭りです。
……こりゃ葉月の恋愛墓標の準備もしなきゃならんかな……。