イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/06/03

血界戦線:第9話『Zの一番長い日 後編』
残り話数も少なくなってきた魔界都市<紐育>、もう一人のZが活躍するお話……というよりは、前回チラホラ見せていた黒白兄妹周りのネタばらしと、クライマックスへの地ならしがメインのエピソード。
久々にライブラ前線班全員集合の超人バトルもありましたが、あんま尺は取らなかったね。
とりあえずザップ先輩がゴミクズムーブをすれば、それを足場にして新人の人となりが見えてくる辺り、ほんと良いキャラだなあのゴミクズ。

前回師匠のインチキっぷりを見せていたので、炎と風が息を合わせることで凄まじい力が出てくる展開に、説得力が出てました。
逆に言うと、一人で両方使いこなす師匠のインチキっぷりが際立ったともいう。
カッチョイイ技設定をただのト書きに終わらせず、お話の中でどう魅せるか工夫しているのは、バトルアニメとして大事なところだと思います。
しかしツェットくんは生真面目っぽいので、コンビ打ちが決定している生来のゴミクズと、どう対応していくのか。
ここら辺は新キャラの掘り下げ含めて、次回しっかりやって欲しい所ですね。


カラーで明らかになった黒白兄妹の真相は、やっぱりレオくんの過去とオーバーラップする、哀しいものでした。
ホワイトが自分で言ってたけど、『圧倒的な存在を目の前にして動けず、身内の犠牲で生き延びた』という立場はレオとそっくりやね。
レオくんの義眼は人を助ける役に立っているけど、兄貴が悪魔と取引して手に入れた絶望王は、あんまいい事考えていないっぽいなぁ……。
ブラック兄貴への負い目を利用して、ホワイトちゃんがどんどん追い込まれている姿は、見ててシンドイやね。

『絶望王が具体的に何を企んでいるのか』という、クライマックスに直接繋がる描写は今回もなし。
第二のフォールダウンを引き起したくて、そのためにレオくんの目が必要というのは見て取れる。
一番気になる行動理念の部分がまだ隠されているので、絶望王周りの描写はまだまだ貯めこむ感じがある。
残り話数がそんなに多くないが、上手く見せて欲しい所。

今回時間を使ってたのは、黒白兄妹の過去。
失ってしまった時間だけど、それがあるからこそぎりぎり踏みとどまっているような、綺麗な思い出を視聴者に見せるのが、今回最大の狙いだったのかなぁ、とか思いました。
幸せそうな田園風景、暖かな父娘の時間と、後悔と涙にまみれた現在の対比は、全体的な色調変化で巧く表現されていて、なかなか良かった。

自分を守って変貌した兄、失われた父との約束、レオとの交流。
絶望王からの命令で、これまで描写されたホワイトの二律背反が綺麗にまとまった感じがあり、これを解決することでお話が収まるんだなという推測がつく。
ホワイトは本当にヒロイン力が高い、助けてほしいと思えるヒロインなので、レオくんの主人公力発露に期待。
オールドスクールな悩ましき姫君ヒロインも、ちゃんと土台を作って見せると良いもんだなぁと、ホワイトを見ていると痛感しますね。

 

・響け! ユーフォニアム:第9話『おねがいオーディション』
衝撃の夏祭りから一週間、ついにオーディションの日を迎えた北宇治吹奏楽部。
出来るやつ、出来ないやつ、余裕のあるやつ、余裕のないやつ。
少年少女の様々な表情を捉えつつ、選ばれることと選ばれないことの残酷さに踏み込んだお話でした。

とその前に、Aパートはほぼ葉月のお話。
前回面倒くさい高校1年生女子が赤い糸掴むダシにされた恨みを晴らすかのように、見せ場の多い前半となりました。
あまりの恋愛放火魔っぷりにビミョーに評価が下がっていたみどりにも尺が割り振られ、お祭りのフォローアップに、かなりの時間を使っていた印象です。

凹むみどりのフォローに走り回り、夏祭りが与えた衝撃を何とか吸収しようと奔走する葉月は、やっぱり良い子だ。
オーディションにしても、自分の合否より秀一のこと気にしてるしな……これは良し悪しか。
電車から降りようとして、秀一の姿を確認して踵を返す繊細さも引っ括めて、今回前半の描写は、前回クローズアップしきれなかった葉月の内面に深く踏み込んでいて、とても良かったです。
全部が割りきれているわけではないが、それはそれとして前に進もうと努力し、周囲を引っ張ろうとする前向きな気持は、やっぱり見ていて気持ちが良いですね。

葉月の仕事は主に二つあって、初心者という立場を活かして視聴者にブラスのよしなしを説明することと、我の強い久美子がお話をコースアウトしないよう修正することだと思います。
かなり損な役回りではあるのですが、彼女が持っている生粋の人柄の良さが丁寧に描かれているせいか、彼女の選択は彼女自身が望んだものであり、お話の都合で選ばされているという感じがあまりしません。
結果、葉月・久美子・みどりの一年トリオの描写も公平で気のおけないものになっていて、自然と憧憬を抱けるような描き方に繋がっている。
みどりからの電話を久美子が受けて、三人の関係をどうしたいのか話し合うシーンは、お互いがお互いを静かに思いやる優しさがみっしりとあって、とても好きなシーンです。


そんな『良い子』である葉月と対比されるように、相変わらず性格悪い久美子。
中川先輩の細かい描写を回収する形で、競い合うこと・選ばれることの怖さをしっかり見せたのは、競争の美点だけを見せ片手落ちになりそうなところを、巧く回避した描写でした。
かつて持ち前の性格の悪さで口に出してしまった、『本気で全国行けると思ってたの?』という言葉の残忍さを、半年遅れで突きつけられる構成になっているのは、なかなか面白い。
その言葉が高坂さんとの関係を前進させ、結果オーディション合格の力になっていることも引っ括めて、群像劇に必要な多角性を際立たせていると思います。

滝顧問という劇薬で、よくも悪くも真剣で真面目な部活に変わった北宇治。
今回のオーディションはその結果も重要なのですが、そこに向かう姿勢で生徒の変化やキャラクターが見えるという、一種の鏡の仕事をしていると思います。
如何にも気だるげに描かれていた中川先輩が真剣に個人練習に挑む描写は、なにも今回だけではなく、北宇治の変化を象徴するように随所に挟み込まれていました。
闘争心剥き出しの中川先輩の姿を見て初めて、久美子の能力が結果として他人を蹴落とす事にもなるという『才能の凶器性』に気づくという描写は、ボディーブローのようにその姿を蓄積させた結果よく効くものとなっています。

結果としてオーディションに落ちた中川先輩ですが、飄々とした態度の中に真剣さがかいま見える彼女の描き方は、僕はとても好きです。
部を去っていった葵ちゃんにしてもそうなのですが、『才能の凶器性』に傷つけられる側、久美子や高坂さんとは違い、けして選ばれないモノに対する視線をしっかり持っているのは、このアニメの優しいところであり、強いところでもあると思います。

敗者と位置づけられた存在にも輝きはあるし、勝者となった存在にも責任と欠落が在る。
才能があることは必ずしも良いことばかりではなく、何かを失う原因になったり、望まぬ結末を引っ張り込む理由にもなり得る。
そういう立体感の在る見方をお話の中に組み込み、様々な立場にいる、様々な人々の気持ちと態度の変化をしっかり写しだしているのは、とても立派な物語だと思うのです。

加えて言えば、久美子と中川先輩の間に確かに存在する、七年間と半年間の時間的差異に沿った結論が出たのは、このアニメが演奏という行為に向けているシリアスさを損なわず、むしろ増幅して見せており、とても良かったです。
ソロを一年生である高坂さんが取ったことと相まって、費やした時間と才能との距離感を多角的に見せていて、とてもしっかりした描写だと思いました。
55人枠あっても53人しか埋めない滝顧問の態度といい、青春の楽しさを描きつつも、音楽表現に対してしっかり背筋を伸ばすこのアニメのスタンスは、やっぱ好きだなぁ。


『才能の凶器性』をどのように扱うかというモチーフは、高坂さんと香織のトランペット・ソロにまつわる描写にも見えますし、相変わらず余裕のないあすかにも感じ取れます。
前回『特別になりたい』という欲望を久美子に(そして視聴者に)見せた高坂さんは、その望みのままにソロパート担当という特別な存在に選ばれる。
一方香織も、北宇治が変化する中で演奏に対する態度を変え、選ばれ弾くことに強い意志を見せるようになっている。
とは言えソロの椅子は一つでしかないわけで、残酷な選別の結果選ばれるもの・選ばれないたものは明確に分かれてしまう。
この二人の問題は次回に引き継ぐと思うわけですが、彼女たちの描写次第で、このアニメーションが『才能の凶器性』をどう見せたいのか、よりクリアになるでしょう。
リボン吉川がどのくらい暴れるか、だな……。

『才能の凶器性』に怯える久美子に比して、あすかは一切迷いなく他人を切り捨てながら、ユーフォニウムだけを恋人にすることを選択しています。
色恋(というか、それを炊きつけた結果葉月を動揺させたこと)に迷うみどりを一蹴する姿は、ややコメディチックでしたが、彼女が持っている欠落を強調するシーンでした。
お話も後半にさしかかり、前半あすかを鎧っていた見せかけの社交性が剥がれ、空疎で余裕のない地金が見えてきた感じがあります。

久美子と秀一の恋は、無論高校1年生という季節の甘酸っぱさを強調する意味もあるのでしょうが、音楽以外に目を向ける余裕のないあすかの欠損、選ばれるために何かを切り捨てなければいけない余裕の無さを、より強調する仕事も期待されていると思います。
視線の演出が多いこのアニメですが、久美子の恋もまたそうであり、葉月によって秀一を強く意識されて以来、彼女の目線はずっと彼を探している。
そうして余計なものを探すことで、中川先輩という懸命に努力する弱者の姿を捕まえ、『才能の凶器性』と向かい合う成長も可能になったわけです。
そして多分、あすかにそういう視野の広さは無いし、その必要性も感じていない。
その欠落が埋まることもまた大きな物語だとは思いますが、残り時間を考えると触ってる余裕はないかなぁ……。

まぁ、『才能の凶器性』に怯える久美子のピンチを救い、緊張をほぐす時脳裏に浮かんだのは秀一ではなく、高坂さんなんですがね!
あれを『恋より友情が優先する、ちょっと幼い15歳』の描写としてみるか、はたまた『あまりにも特別な関係性は、恋愛を弾き飛ばすほど強い』ということなのか、悩むところだ。
高坂さんは初めて親友が出来て舞い上がっているのか、相変わらず距離感無視のグイグイ系女子で最高でした。
前回の白ワンピといい、ブレーキの付いていない女だなホント。


オーディションという共通の試練を背景に、北宇治の少年少女たちがどのように変わったのかを見せる、大事なエピソードでした。
才能のあるもの、ないもの、ずっと努力してきたもの、時間を費やさなかったもの。
様々な人の様々な立場がよく見えて、お話の立体感の出るいいエピソードだったと思います。

今回決着のつかなかった秀一との甘酸っぱい恋模様、そして高坂さんのソロ就任がもたらす波紋。
まだまだ気になる要素も沢山あって、本当に面白いアニメだと思います。
さーて、来週はどんな嵐がやってくるやら。