イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/06/25

俺物語!!:第12話『俺の偏差値』
凛子の心臓が破裂寸前まで追い込まれる恋バナが連続した俺物語!!、今回は学生らしい勉強エピソード。
無論凛子と猛男は今週もイチャイチャしてたんだけど、主眼はあくまで苦手なことも頑張る猛男と、それを支えるスナ&凛子、そして息子の初カノにウキウキな両親の姿。
メインである恋愛話を外しても、しっかり面白い話が展開できる横幅の広さは、このアニメのたくさんある良いところの一つだなと思います。

今週まず良かったのは、両親の描写。
凛子にあそこまで構うのは、無論凛子が気遣いできるいい子だってのもあるんでしょうけど、猛男の事を常に気にかけているからこそ。
アバンの球技大会でもそうなんですが、猛男があらゆる層に愛されている描写が何度も繰り返されることで、凄くハッピーな気分になります。
過剰にするべきストロングポイントをしっかり見切って、ちゃんと強調してるから安定感があるんだね、多分。

そんな愛され系ボーイ猛男が勉強に挑む姿は、何でも肉体で突破する普段のやり方ではなく、地道な努力を積み重ねるスタイル。
無論パワーで押し切るいつもの笑いも盛り込まれるんだけど、苦手分野でも相手に合わせ我慢する粘り強さが見えて、とても良かった。
何かを言語化する能力が弱くても、物事の本質を直感的に把握し、より善い方向に導くためにはどうしたら良いかも把握できるイメージ力という、パワーで勝負してたら見えてこない猛男の強さも、説得力出てたし。

スナも言ってたけど、『テストで間違えても、人生を間違えない』男だよね、猛男。
そして間違えないためにガムシャラに走り回る愚直さが、笑いと憧れを産んでる好循環ですわ。
ラブ主眼の話じゃなくても見たくなるのは、やっぱ主人公猛男の真っ直ぐな性格が、見ている人を強く惹きつけるからだなぁ。


そして相変わらずの冷静な話捌きを見せるスナも、非常に頼もしい。
猛男の勘違いを放置して最後まで走らせたのは、苦手な勉学に全力を出す、いい機会だと思ったからじゃないかなぁ(スナへの好感度高いので、なんでもいい方に捉えるマン)
猛男の尖った特性に合わせた勉強方法を適切に指示している当り、教師適正高いよなぁ。
凛子という人参の与え方、タイミングも巧いし。

オチは非常に古典的な勘違いギャグなのですが、一年秋というまだギャグで済む頃合い季節設定が、とても良い。
これが三年春とかだとシャレになんない訳で、偶然かもしれないけど、コメディとしてベストタイミングで挟まれたエピソードだよなぁ。
この話『こうあって欲しいなぁ』という願望を全力で拾い上げてくれるという意味でファンタジーだと思うわけですが、そこに濁りがないのは、こういう風に『いや、洒落にならんでしょソレ』と真顔になる展開を、巧く回避してるからだと思います。

恋をやっても面白い、恋以外をやっても面白い。
このアニメらしい横幅の広さが最大限に出た、いいお話でした。
ストライク取れる球が複数種類あるってのは、やっぱ強みですな。

 

・響け! ユーフォニアム:第12話『わたしのユーフォニアム
吹奏楽青春幻燈もクライマックス直前、最後の最後の個別エピソードは、主人公黄前久美子にカメラを寄せた話しとなりました。
これまで北宇治吹奏楽部員の豊かな個性をピックアップし、時にぶつけ時に馴染ませて話を作ってきたこのアニメ。
お話がまとまる直前で、『主人公にとってのユーフォニアムとはなにか』という。シンプルで大事なテーマを取り上げる流れは、とても良かったです。

今回明らかになるのは久美子が『ユーフォニアムが好きだ』ということと、『特別になりたい』ということです。
この答えは(よく出来たお話は全てそうですが)唐突に現れたわけではなく、既に様々な見せ方で視聴者の前に提示/暗示されてきた答えです。
それは、第一話で久美子が口にした印象的な言葉、『本気で全国行けると思ってたんだ』という一言に、このタイミングで帰還することからも分かります。
逆に言えば、ここに辿りつくために久美子の描写があったとも言える造りになっているので、彼女が主人公を張ってきたこのお話をまとめるためにも、大事なエピソードだと言えます。

お話の出だしを思い出すと、北宇治吹奏楽部がそうであったように、久美子にとっても吹奏楽は特別なものではありませんでした。
久美子にとっての吹奏楽は、葵ちゃんが言っていた『アリバイとしての部活』であり、高坂さんやみどりやあすかのような、狂的な情熱を持っていないところから、このお話ははじまっている。
心的エネルギーの低いその状態を表すのに、『本気で全国行けると思ってたんだ』という言葉はとても適切でした。

しかしやる気のない態度を見せていても、久美子にとって吹奏楽ユーフォニアムは特別なものであり、簡単に諦められるものではない。
久美子がヒネた態度の奥に熾き火のような情熱を秘めているというのは、これまでの描写からも見て取れる。
同時に、吹奏楽を本気でやること、『特別になる』ことに飛び込み、傷つく覚悟が固まりきらないことも。
情熱と冷静という両極の間で、情熱(と、それを女子高生の形にした高坂麗奈)に傾きつつも決定打がないというのが、久美子のこれまでの物語と言えます。


明らかに高坂さんと香織のお話だったオーディション編を、高坂麗奈の特別な友達として真っ向から受け止めた結果、久美子の極は情熱に一気に振り切れます。
映像の中に閉じ込められた7月の熱気は、そのまま久美子の気持ちです。
それは演奏を成功させる必須要素であると同時に、強い暴力性を持った危険なものでもあり、久美子が流した鼻血はその分かりやすい発露だと言えます。
このお話において、『才能がある』とか、『強い情熱がある』ということは必ずしも良いことばかりではなく、他人や自分を傷つける可能性を持った、慎重に扱うべき要素なのです。

危険な温度に高まった情熱は巧く導かれず、久美子は苦悩していく。
結果は簡単には出ず、滝顧問得意の言葉足らずが誤作動して、選ばれない苦しみを感じ取ったりもする。
ここら辺の苦しい空気が画面に漂う『夏感』に後押しされていたのは、とても良かった。

今回滝顧問に『お前はいいです』と言われたのは、9年という時間的アドバンテージを持ち、これまでそれなりに順当に選ばれてきた久美子が、『才能の暴力性』に踏みつけにされる側に立つ、大事なイベントでしょう。
ここで『負ける』ことによって、例えば吹き続ける理由がなくなってしまった葵ちゃんだとか、姉だとか、もしくはオーディションで選ばれなかった中川や香織や、秀一にフラれた葉月の気持ちに近づくことが出来る。
無論久美子は主人公なので、滝顧問の真意を偶然の助けを得て確認し『勝つ』ことが出来るわけですが、『特別である』側だけではなく『特別ではない』側の痛みや弱さも描写してきたこのアニメで主人公を張るためには、今回の『負け』は大事だったと思います。
泣きダッシュと、秀一との道路越しの掛け合いのシーンは、久美子が『負け』で受けた傷をこっ恥ずかしいくらい真正面から表現しにいったパワーの有るシーンで、とても素晴らしかったですね。


今回久美子が見せた情熱は高坂さんへの気持ちから生まれるものであり、夏祭りから大きく変わった関係の産物と言えます。
『なんだか近寄りがたい人』から『それでも近づきたい人』へ、そして『お互いにとって特別な人』へと変わっていった二人の関係ですが、今回久美子が高坂さんへのあこがれを明確にしたことで、また一つ変化したように感じました。
ただの友達ではなく間に『演奏』という要素が挟まることで、ライバルとしてもお互いを認め合った感じといいますか。

一方みどりと葉月との関係は一話の段階からほぼ変化していない、とても良い仲間関係のままです。
ずっとフラットに繋がる仲良し三人組に、低いところから登っていく高坂さんとの関係が対比されることで、変化の強さを巧く表現しているように思います。
今回で言えば、久美子の個人練習という聖域に踏み込めているのが、高坂さんだけであるところとか。

聖域に踏み込んでいるのはもう一人いて、秀一も久美子の個人的な音を聞くことを許されている立場です。
しかし久美子と秀一の練習が熱気の収まった夕方に、お互い距離を置いて行われているのに対し、高坂さんは太陽照りつける学校で、とても近い位置で交流している。
もし仮に二期があるのなら秀一との距離が詰まるエピソードで追いつく余裕もあるんでしょうが、今のところ心の近さは高坂さんが圧倒している感じです。


今回久美子を引っ張ったエンジンは高坂さんだけではなく、久美子自身に宿った『ユーフォニアムが好き』という気持ちでもあります。
姉の『なんでユーフォ続けるの?』という煽りに、無意識に答える形で言った『だってユーフォ好きだもん!』という気持ちは、怒りに我を忘れて出た言葉だからこそ、久美子の(そして彼女が主人公を務めるこの作品の)真実をえぐっている。
高坂さんという人格化された『特別になること』だけではなく、自分の中にある『うまくなりたい』『特別になりたい』『ユーフォニアムが好き』という、暴走する衝動。
それこそが、『アリバイとしての部活』と決別した今回のエピソードに、久美子が辿りついた原動力です。

高坂さんのように『特別になりたい』という対外的な欲求。
ただただ『ユーフォニアムが好き』という内面的な欲求。
これまで暗示や描写されてきた二つの欲求が、とてもストレートで力のある演出で素直に表現され、真っ直ぐな台詞で言葉に出される今回は、久美子の物語が辿りついたひとまずの終わりとして、とても素晴しかったと思います。

お話の大半を久美子1人に回しつつも、久美子が辿りついた『勝ち』に届かなかった葵ちゃんをワンポイントで出したり、前回心をざわつかせたオーディションの始末を丁寧につけたり、周辺への気配りもありがたかったですね。
中川×吉川の川川コンビの距離感は、高坂×久美子の引力コンビとはまた違った間合いがあって、もっと見ていたくなるなぁ……。
脇役が好きになれるのは、群像劇としてとても良いと思います。


醒めた場所からはじまった久美子の物語が、圧倒的な青春の熱気に後押しされて決意に辿りつく、とても良いエピソードでした。
次回で一桜の終りを迎えるこのアニメにとって、最高のラス一手前だったと思います。
生々しく、熱苦しく走ってきた北宇治吹奏楽部が、今回の盛り上がりを背中に受けて、どういうゴールを迎えるのか。
とても楽しみです。