イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/06/26

アイカツ!:第139話『ジョニーと花嫁』
『ユニットカップも終わったし、いっちょ設定総ざらいでもすんかー! キャラも現役勢フル回転、ドリアカも寝床から起こせ!!』と言わんばかりの、多分ジョニー回。
ドリアカ大復活祭も兼ねているので、とにかくキャラの多い回でして、何しろ名前付きだけで18人。
アイカツ!らしいワイワイと賑やかな回で、見ていて楽しいお話でした。

話の筋としては、頭の弱い中坊たちが勝手に吹き上がって、恩師の周辺で好き勝手暴れまわるっていう、単純なもんだったけどね。
すれ違いコメディは場面が忙しく移り変わるので、キャラが多い今回には良かったのかも知れん。
そして『ジャージとか着てっから結婚出来ねぇんだよ』とのたまうまどかが、全力でドブ色の汁を飛び散らしていて、ホントこの子だけ毛色違うなと思いました。

アイカツ8にも出てんだから、そろそろ思いだせよ!』と言わんばかりに唐突に復活したドリアカですが、凄い後付感で別に消えていたわけではないことをアピール。
このぐらいの強引な設定説明、慣れておかないと女児アニは見れないぜー!!
露悪的態度はさておき、きぃPが相変わらず可愛かったのと、マリアちゃんが『牛の人』なるいかがわしい呼び名で通っているのが良かった。
アイカツ!世界の闇ネットには、『マリア_搾乳.mpg.exe』とかいう詐欺ビデオが流れてんだろうなぁ……。


後のせサクサクといえばジョニーの妹設定もかなり唐突でしたが、すれ違いコメディをダシにして、織ジョニが加速してたのは有り難い。
他のネタが全体的にボケ倒しのギャグとして展開される中、ダンスパートナーに選ばれない織姫学園長のぷんすかはそれなりにマジで、色んな意味で希望が持てた。
……まぁ本命確実にりんごさんだけどな、あの三十路レズ。

あと久々に瀬名あかが供給されて、非常にグッドでした。
正直瀬名くんの都合良すぎる扱いには思う所あるが、今回みたいなロマンティシズムを供給してくれるので、ついつい期待してしまうのだ。
まーアイカツ!なので、最終的な結論は出さずにほのめかすままで終わるとは思う。

密度の高かったユニット&転校生編に比べ、非常にゆるーっとしたお話でした。
魅力的なキャラがみっしり詰まっってるのは間違いなくアイカツ!の強みだと思うので、そういう所を振り回す今回みたいな話、結構好き。
今回上がったドリアカ花火が果たして夏の幻なのか、はたまた逆襲の布石なのか。
それは先を見ないと分からんところですな。

 

放課後のプレアデス:第12話『渚にて
妖精と出会ったなら、いつかはさようならしなきゃいけない。
魔法使いになったなら、いつかは普通の子に戻らなきゃいけない。
そういうつもりで始めたんだから、そういうところで終わろう。
放課後のプレアデス、最終回でした。

お話としては三話連続で続いたすばる編の最終エピソードでして、みなと君を好きな気持ちだとか、まだ魔女でいたい気持ちだとか、みなと君の絶望だとか、過去二話で掘りあげた問題全てに答えを出す、綺麗な完結編。
であると同時に、六人の魔女とプレアデス星人のラストエピソードでもあるので、プレアデス星人の宇宙船だとか、運命線の開放だとか、約束されていた別れだとか、これまでのお話全部で掘りあげてきた問題にも、全ての答えを出していました。
一切不足はなく、たっぷりの情感と愛おしさがある、見事な最終回でした。
渚にて』というちょっとSFが好きな人なら『人類絶滅やんけ!』と色めき立つサブタイトルを、終わりではなく始まりの荒野に重ねて回収するセンスとか、マジ最高。


前々回のやりとり当たりから感じていたのですが、未発芽の可能性と一緒に、ブラックホールに墜落しようとするみなと君は、やはり突破ではなく自死を求めているように見えます。
宇宙規模のビルの縁に足をかけて飛び降りようとするみなと君に、幾度もすがりつき、しがみつき、自分の傍=生の川に帰還させようと奮闘するすばるは、魔女という幻想的な存在であると同時に、ニヒリズムの超越という普遍的な問題に立ち向かい、愛する人が生きる希望を失ってしまったらどうするのかという現実的な問題にも飛び込む、多重的な存在です。
こどもという単純な存在であることをやめて、複雑な立場に身を置く大人になったと言うことも出来るんでしょうが、まぁ子供は子供で複雑なので、あまり適切な比喩ではないでしょう。

引っ込み思案で前に出ることが苦手だったすばるは、これまで僕達も追体験させてもらった、魔女四人+宇宙人一人との奇跡のような日々を通して、自分のやりたいことを言葉にすることを憶えました。
すばるがみなと君に願う、死の欲求に引きずり込まれないで、自分と一緒に生き残って欲しいという言葉は、みなと君が渚で呟いたように、身勝手で残酷です。
しかし、エゴまみれの自分の気持を表に出すことでしか、他人を引き止めることが出来ない瞬間が、必ず来る。
その瞬間、自分の身勝手を信じて飛び込み引き止める強さを、すばるはようやく手に入れたのだと、今回見ていて思いました。

過去のすばるが自分を強く主張できなかったのは、自己主張に秘められているエゴを見抜けるほどに賢く、それを他人に押し付けて傷つけることに怯える優しさを持っていたからでしょう。
しかし、賢く優しい子供のすばるのままで、重度の昏睡状態という重たい現実に押しつぶされ、死を望んでいたみなと君の重たさは、背負えない。
同時に、ただ生きろと押し付けるのではなく、重荷を一緒に背負っていく覚悟と優しさは、子供であるすばるの美点を消すことなく維持した結果生まれたものです。
スペクタクル溢れる宇宙大冒険を繰り広げ、仲間と気持ちをつないだこれまでのお話の結果、すばるはとても的確な成長を果たし、男の子一人の人生に肩をかせるくらい、立派な女の子になりました。

魔法の世界から帰った後、そこではあまり関係していなかった様々な人と繋がっていくすばるの姿は、可能性を感じさせて良かったです。
あおいちゃんの今の相方は超めんどくさそうなオーラムンムン出してるいじわるガールっぽいですが、四人の魔女と同じように、いろいろあって仲良く慣れるでしょう。
前回希望の種を巻いてくれた名前の無い少年もちゃんといて、運命に選ばれて主役になった者たちだけではなく、平凡で普通な人々にも愛情に満ちた視線を向けていたのは、可能性に向けて開けていった終わり方に相応しい目配せだなとおもいます。
しっかしあの赤毛、すんごい正妻っ面だったなぁ……すげーめんどくさそう。(面倒くさい中学生女子大好きおじさん)


『自分の気持を的確に表すことで、誰かとより良く繋がることが出来る』というすばるの成長は、帰還した後の行動によく現れています。
天文研究会のビラを臆さず配るのもそうですし、『なにものでもないもの』として魔女に選ばれるきっかけになったあおいとのすれ違いが、小さな勇気で解決するところもそうです。

『制服が可愛かったから中学を選んだ』
『そんな恥ずかしい理由を、すばるには言えなかった』
あおいとすばるの離別の理由は、とても下らなくて普通で、ありふれたものです。
事象の地平線を突破することに比べればケシ粒のような悩みかもしれませんが、過去のすばるにとっては世界を飛び越えるくらい大きな悩み。
その小さくて大きな断絶を、穏やかに踏み越えてあおいと再び出会えたことは、40億年の時間を遡るより、立派な魔法だったと僕は思います。

魔法がなくなってしまったすばるは、もう宇宙を飛ぶことはない。
普通の女の子として学び、部活をし、文化祭をして、そのうちみなとくんとも再開する彼女の前の問題は、エピローグで示されたような小さな勇気で解決していける、小さくて大きな問題なのでしょう。
変わった彼女の姿を希望的に示すことで、魔法がなくなっても美しい現実がしっかり捉えられていて、あの終わり方はとても良かったです。

みなと君が『健常者』になってハッピーエンドってのもちょっと怖いなと内心思っていた身としては、呼吸補助具が取れて一般病棟に移った小さな奇跡も、すごく素敵だなと思いました。
魔法を効かせすぎないことで、すばるたちが戻った(そして多分、僕達の世界と繋がっている)普通の世界が真に迫っている感じが良く出ているし、生病老死というとてもシリアスな問題を、簡単には解決しない誠実さが感じられた。
そういうナイーブさは、このお話にはとても合っているし、必要だとも思う。


なぜ今週、プレアデス星人はエルナトに変化した(戻った、とは言わない。どんなに姿が変わっても、プレアデス星人はななこのプレアデス星人でもあるのだ)のか。
すばるとの交流によって希望を取り戻したみなとくんは、自分の過去のトラウマと正面から向い合い、エルナトに捨てられたという記憶を克服することが出来たからでしょうか。

もちろんそうでもあるのですが、プレアデス星人にとっても、みなと君と一緒にエンジンを探しまわった日々は大事な過去で、取り戻さなければならない思い出です。
エルナトの姿と記憶を取り戻すことで、魔女たちと一緒にエンジンを探求する前の物語、失敗に終わってしまった物語を、みなと君もエルナトも肯定的に捉え直すことが、大団円たる今回には必要だったのだと、僕は思います。
しっかしキャイキャイしてたな……成長してしまったみなと君は、もう王子様を抱きしめる側の立場なのがなんつーかこう、痛ぇ。

そして、みなと君が感じていた『プレアデス星人は一生バクステこすってるだけなんじゃないの? 超量子的ひきこもりなんじゃないの?』という疑問は視聴者の疑問でもあります。
そこを完膚なきまでに突破したのは、禍根を残さない見事な回収でした。
観測それ自体を諦めるのではなく、別の世界で希望を観測するための突破というのは、裸の特異点まで辿りついたこのお話に相応しい、スケールの大きな解決策だったなぁと。
『シンギュラリティ観測して終わるジュブナイルSFアニメ』って意味では、トップ2の娘みたいなもんなのか、このアニメ。


『上手くいかない現実を肯定するために過去に立ち返り、自分の本質を再度確認することで未来に飛び込む勇気を手に入れ、世界を前向きに捉えていく』というのは、このお話の基本的なロジックです。
エルナトとみなと君の再会もまたこの文法に則ったものですが、今回のエピソード全体が、放課後のプレアデスというお話をこの文法でまとめ上げる仕事を果たしたように、僕には見えました。

『なにものでもない』中途半端な存在として、各々の悩みを抱えて集められた六人の魔女。
妖精に導かれるままに宇宙を駆け抜け、奇跡がより集めた親友との交流を通して、楽しい時間を過ごす。
しかしその時間もまた、いつかは決別しなければいけない過去であるということは、ブラックホールに立ち向かう前の会話で見て取れます。

これまで魔女として過ごした日々があればこそ、運命線を飛び越えて現実に帰還しても、未来をたぐり寄せる力を出せる。
プレアデス星人の加護を失い、制服に戻った彼女たちの生き方がそういう、希望に満ちた勇気と観測の物語になるということ。
これまで僕達が見ていた彼女たちの冒険こそが、彼女たちが未来を生きていくためのかけがえの無い過去になったのだということは、その冒険に共感させてもらった僕たちは、どうしようもないほどに判っている。

ひかるが書き足した音符を認められたように。
いつきが額の傷を受け入れられたように。
あおいがこぐま座のキーホルダーを再獲得したように。
ななこが母と弟から手紙を受け取れたように
すばるがみなと君との思い出を取り戻したように。
みなと君が生きる希望をもう一度胸に抱けたように。

これまでの六人の魔女たちの冒険、このアニメーションが描いてきたこと全てが、魔法を失って普通の存在になった彼女たちが、ありきたりで険しい未来を進んでいくエンジンになるということを、僕は信じられる。
というか、その一端をすばるが既に見せてくれている。
宇宙を駆け巡る魔女だった過去を笑い飛ばすのでも、忘れてしまうのでも、それに溺れてしまうのでもなく、懐かしく思い出しながら小さな奇跡を起こしていく成長の可能性も、しっかり映像になっている。
そういう終わり方ができている物語って、なかなか無いって、僕は思います。


しっかりとした調査と考察をしつつも、衒学に溺れることなく適切に盛り込まれたSF要素と各種引用。
宇宙規模に広がっていく冒険のスペクタクルと、それに振り回されない繊細な心理描写。
いくども繰り返される基本構造が生み出す、テーマへの信頼性。
絶望や失望をちゃんと受け止めつつも、成長への希望と未来への勇気に満ちていた制作姿勢。
良いところがたくさんある、好きになれるところが幾らでも見つかる、とても立派なアニメだったと思います。

良いアニメでした。
そういうアニメを見ることが出来て、僕はとても嬉しい。
ありがとうございました。