イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/07/02

俺物語!!:第13話『今日は俺のおごりだ』
優しい世界をパワフル高校生が駆け抜けていくアニメも1クールを安定して終わらせ、折り返し点を通過。
といっても超劇的なことが起こるわけではなく、ハッピーハードコアな空気で砂川の誕生日を祝ったり、パーフェクトサイドキック砂姉担当の雄が出てきたり、ジワジワとした展開。
正直な話、前半の砂川誕生日だけで話が進むと『ゴリラが出てくるARIA』もしくは『暑苦しいスケッチブック』になってしまうので、浪川の登場はグッドタイミングである。
前半のゆっるくて大事な友人への敬意と愛情しかない展開、大好物ですけどね。

『気持の良い奴しか出てこない』つーのがこのアニメの強みなわけですが、いかにも『状況をかき回しに来ました! トリックスターとして最適化されてます!!』という織田くんもまた、例外ではなく。
うざい行動の根っこも砂姉恋しだし、凛子がMMランドに行きたがらない理由もサックリ解決するし、恋敵であるはずの猛男にも惚れ込んじゃうし。
部外者が一気に間合いを詰めるために、『同衾』というイベントを説得力満載で展開してたのは、一気にキャラ立って良いなと思います。
作品全体のトーンを崩さないように、良く調整されたポジションを取る手際の良さはこのアニメらしいところですな。

お泊りイベントは織田からの一方通行ではなく、心意気を感じ取るセンサーが鋭い猛男が織田を見直すイベントでもあり、こういう所の地ならしも上手い。
視聴者は主人公である猛夫を足場に作品に入っていくわけで、彼が好感を抱くなら、彼を通して俺らも好きになりやすいしね。
世界が猛男を好きなだけではなく、猛男が基本的に世界を好いている、前向きなキャラだってのも優しい世界を維持する大事なポイントなんだろうなぁ。
その上で、義憤するべき時にはするしな。


久々の登場となった砂姉は相変わらずのパーフェクト年上の女っぷりであり、あまりの都合の良さに申し訳なくなったスタッフが、今回の話を思いついたと邪推するレベル。
砂姉をメインに据えたエピソードがやって来たことで、姉さんのいい人っぷりが更に強化され、『どうしてこの人じゃなかったのかなぁ……』という切なさが加速する。
強引な織田の手筋だけど、実際むちゃくちゃ引きずっているわけで、こんぐらいのことしてケリつけないと、姉さんがもったいないわな。

そんなこんなで、一回で使い捨てるにはもったいなさ過ぎる砂姉メインのお話に、チャラ男がくっついて来る前編でした。
メイン三人のお話が安定してきてるタイミングで、こうして魅力的な脇役を掘り下げる話を展開できるのは、すっごく良い。
次回どういう風に引っ掻き回して、どういうふうに落ち着かせるのか、とても楽しみですね。

 

・響け! ユーフォニアム:第12話『さよならコンクール』
尖った個性がぶつかり合いながら進んできたこのアニメも、ついに最終回。
宇治高等学校吹奏楽部の熱い一日を追いかけることで、彼らが辿りついた場所を視聴者に見せる形で、このお話は終わりました。
ドッシリとした時間の使い方が非常にこのアニメらしく、最後まで特徴を活かしたアニメだったと思います。


このお話は集団の中の個性にクローズアップし、尖った感性が衝突して事件が起きることで進んできました。
しかし最終回にはまとまりがなければいけない訳で、メインカメラは横幅広く部員を捉え、北宇治全体の到達点を見せる造り。
これまで声も名前もなかったようなモブが画面に映ることで、北宇治全体の話という感じが出ていました。

幅がひろいのは人数だけではなく、時間に関しても作劇的な操作が少なく、北宇治が一つの目標として定めた地区予選をどう体験しているのか、じっくりと追体験するような造りになっています。
起床から登校、楽器の積み込みに移動、控室での緊張をはらんだ時間、舞台袖での待機。
晴れの舞台である演奏自体や、劇的な勝利の後ではなく、その前段階に尺を使ったのは、ちょっとドキュメンタリーめいた空気が出ていて良かったです。

特に会場についてからの独特の空気の切り取り方は、生っぽく学生生活と部活動を描いてきた、このアニメの真骨頂。
控室のふわっとした空気、地面に足がつかない緊張感が音響とライティングでよく出ていて、得難い生っぽさになっていました。
音合せで一つになった音波がボトルの水を揺らす所とか、なかなか象徴的で印象的なシーンだったと思います。
滝顧問の『何も考えてきてない』という割には感動的で効果的な演説を聞くだに、北宇治だけではなく、滝顧問も色々変わったのだとわかったのも良かった。

最終到達点である演奏に関しては、想像を絶する作画カロリーを注ぎ込んでの素晴らしい仕上がり。
『ここをキメないでどこキメるの!!』というクライマックスをしっかり仕上げて、達成感を与えてくれる劇作はやっぱり最高に気持ちがいいです。
演奏組の細やかな仕草も良いんだけど、スポットライトで焼かれている滝顧問のしんどそうな動きが好きです。


北宇治吹奏楽部全体をとらえることもお話を俯瞰する上で大事ですが、クローズアップされた個性の強い面々の到達点を、しっかり見せるのも重要。
部長が言うように『色々あった』北宇治の、そのエピソード一つ一つの主役たちも、印象的にシーンをもらっていました。
入れ物である北宇治にも愛着あるけど、やっぱドラマを担当した名あり顔ありキャラに愛着持っちゃうのが人情というものなので、台詞に頼らずキャラの心情を見せるシーンを、細かく入れてくれたのは有りがたかったです。

そんな中でもやっぱり軸になっているのは久美子で、主人公として物語の中心にいた以上、終わりもまた彼女が真ん中で進むのは道理。
最後までイチャイチャキャイキャイして特別な関係であることを強調した高坂さんとか、高坂さんとは違う場所にいるからこそ出来る落ち着かせ方を見せた秀一とか、観客として『北宇治の演奏がどう凄いのか』を表現しつつ色んな人と絡んでた中川先輩とか、別れてしまった道を強調する立華の子とか色々いましたが、個人的に気になったのはあすかでした。

この段階まで来て弱音かよと思える彼女の語りですが、これまで見せていた割り切りの良さと冷静な観察眼からして、『練習段階では』北宇治が大会を突破することは出来ないというのが、客観的な位置だったんだと思います。
彼女が『負けるかもしんねーな』と言うことで、白黒どっちに転ぶかというサスペンスが強調され、勝負モノとしての面白さが強調されるわけで、北宇治の熱狂から遠い位置に自分をおいていた彼女だからこそ、こういう仕事も出来るわなと見てました。
その上で終わってしまうことへの寂しさも匂わせていて、ユーフォ以外の世界を切り捨てると決めてもなお割り切れない、じっとりと湿った人間らしさがかいま見えたのが良かったです。
あすかに関しては、彼女の空虚にあえて踏み込まず、周辺を匂わせるだけで尺が尽きてしまったのが非常に惜しいので、仮に続編があるとしたら掘り下げて欲しいキャラ、NO1ですね。


他のキャラを写す鏡としてだけではなく、自分自身の物語をまとめる意味合いでも、久美子は主役の仕事をしっかりしていました。
第1話以来のポニーテルに戻ること。
再び金賞をとること。
今回のお話の造りは、お話がはじまった地点に意図的に立ち返ることで、そこから何が変わったのかということ、このアニメが久美子と喜多宇治にどういう変化を与えてきたのかということを、印象的に見せる造りになっています。

お話の出だしで高坂さんにぶつけてしまった『本気で全国出れると思ってたの?』という言葉。
それは巡り巡って久美子自身に叩きつけられて、あの時の高坂さんと同じ気持で、久美子は大会に望む。
あの時も一緒に隣にいたはずの高坂さんは、しかしあの時のような『良く分からない高嶺の花』ではなく、夏祭りの特別な契約を経て、特別な存在として向かい合っている。
こうしてまとめてみると、ホント高坂さんと久美子の話だな、このアニメ。

吹奏楽を真正面から受け止めなかった/受け止めることが出来なかった久美子が、吹奏楽を通じて『特別でありたい』という本当の願いに立ち返ること。(モノローグでココらへんガッツリ言わせたのは、個人的な好みからするとどうかなぁ……って感じですが、わかり易さ優先ですかね)
そこに辿りつくために、色々な、ほんとうに色々な青春の波風をくぐり抜けていくこと。
このアニメが12話ある理由がしっかり判る、いい最終回だったと思います。

 

終わってみると、良い群像劇でした。
身勝手で個性的な高校生たちが閉じ込められた北宇治吹奏楽部が、時々フラフラしつつも、本気でどこかを目指していくお話として、とても面白かった。
こんだけ『魅力的なイヤな奴』のバリエーションが多いアニメも、なかなか珍しいんじゃないでしょうか。
『エゴとエゴとの正面衝突をつうじて、集団が前進していくドラマを描く』という、ある意味古臭いストレスフルなお話を、真っ向からじっくりと料理したのは、いい意味で『京アニらしくない』と感じられる姿勢でした。

久美子と高坂さんを筆頭に、面倒くさい思春期の迸りを叩きつけ合う姿も、魅力的に描かれてました。
軸はもちろん二人のスペシャルな関係構築なんですが、香織とかあすかとか葵ちゃんとか中川パイセンとかリボンとか、面倒くさい子たちの面倒くさい所をちゃんとドラマに組み込んで、置物にしなかったのが良かったです。
一番完成しているように見えて、一番重力抱え込んでたのが香織ってのは、本当に自分好みであり有り難い限り。

『空気を切り取ってくることの巧さ』という京アニの武器が存分に発揮され、春から夏にかけての熱気がそのまま、キャラクターたちが走っている季節に反映されるような画面作りも、非常にグッド。
特に第8話の湿気の多い絵作りは本当に凄くて、思春期の恍惚と不安を巧く映像にした、良い回だったなぁと思います。

『才能が有ることは良いことだ』『本気で何かに取り組むことは良いことだ』ろ、よく題目に掲げられがちなテーマを扱いつつ、それが持っている負の側面から逃げなかったことも、個人的には買いたいポイントです。
『アリバイとしての部活動』を望んでいた葵ちゃん、急にやる気になっても追いつけなかった中川先輩、『特別であること』を望んで叶わなかった香織などなど、負け犬の姿をちゃんと画面に写して、勝ち残る主人公だけではなく、その対岸にいる人々の価値と意味を切り取ろうとしたのは、平等で誠実な視点だと思います。
勝ってる側にいるはずなのに、全然幸せに見えないあすかも含めてね。

色んな要素をたっぷり盛りつつ、全体の見取り図をはっきりと定めて、ブレない進行そしていた良いアニメだったと思います。
要素要素へのフェティッシュな愛情もしっかり感じ取れ、細部と全体両方に拘った、良い仕上がりでした。
『さすが京アニ』ってのは脳みその代わりに麸が入ってる人の感想だと思いますが、京アニらしいのに京アニらしくない、さらなる一歩を感じさせるお話でした。

そして、よく出来ていただけではなくて、好きになれるアニメでもあった。
北宇治のどーしようもない子たちのみっともない足掻きは、どこか僕達のそれと似ていて、もう彼女たちの季節を取り戻せない歳になった僕としては、羨ましいような懐かしいような、ヘンテコな気持ちで毎週見てました。
好きだったなぁあの子達……。
良いアニメでした。
ありがとうございました。