イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ガッチャマンクラウズ インサイト:第5話『halo effect』感想

宇宙人が二人も首相公選(投票手段はスマホ)に立候補できるアニメ、5話目は選挙と空気とボス猿。
どう見ても危ういゲルサドラ&ツバサコンビにジョーさんが付いた結果、風を受けてこの国のトップを一週間で明け渡しちゃいました。
ろくでもなさしか感じないが、クライシスパニックモノの序盤って、こんな感じに明るいよねウフフ……。

ジョーさんがゲルサドラに付く理由になったクラウズ廃止政策ですが、これは彼の異能によって場の空気を集積し、多数派の意見を取り入れたもの。
これが立川事件の直後、人類変革の機運盛り上がった時に集積していれば、間違いなくゲルサドラはクラウズを集積していたでしょう。
はじめちゃんが前回言っていた『姿変わりすぎっす』というのは外見だけではなく、周囲のニーズを最優先し行動の核がないゲルソサドラの内面にも当てはまる言葉です。

そんな風に芯のないゲルサドラに真っ先についていくのが、善意のヒーロー志願者ツバサだってのは、性格最悪な描写で素晴らしい。
彼女はIQと意識高いガッチャマンの『空気』に真っ先に反抗するキャラで、何も考えず目先の問題に飛びつくことを恥じてもいなければ、危うくも思っていない。
政治応援演説として『困ったことがあれば、全部自分が直接行って解決します!』と言葉にしてしまうことに、何の躊躇いもない。
自分が何億人いても足らないその理想を、理想と認識すらしていないツバサの危うさがいつ破裂するかは、これから先のお話かなぁ。
彼女たちの背中を後押ししたのが『無垢なる風』ってのは、皮肉効きすぎて中毒起こすレベルですね、思い直すと。

ゲルサドラ首相の成立には偏向的メディアも大活躍していて、ミリオネ屋の広報力、首相への足引っ張り力は相当なものでした。
ここら辺は悪意の交じる描写ながら、同時に『ああ、こういうことあった』『ああ、こういうことしそう』というゲンナリした生々しさがあって、見てて楽しく嫌な気分になりました。
メディアを象徴する立場にあるミリオが、私欲のためなら何でもする風見鶏なのも、ゲルサドラ陣営にはお似合いなのかなぁ……とにかく皮肉だなぁ。


こんな感じのイノセントな軍団に戦術を与え、高みに登らせてしまったのがジョーさん。
理想主義をこじらせてくすぶっていた一期を反省し、自分に出来ることを全力でやってみた結果に納得出来ない当たり、ジョーさんは相変わらず面倒くさい。
『クラウズ廃止のためなら、誤った手段でも正義を為す』という出発点自体は、理詰夢と近しいんだね。

ジョーさんと理詰夢が見切った現実は日本特有のものかといえば、けしてそうではないでしょう。
空気を捏造し、集団の意思を操ろうという試みは、日本以外の場所でも、今以外の時間でも行われ、成功してきた。
そこら辺は、ゆるじいが特攻隊員の弟の遺影を見つめるシーンを思い出しても意識されているところです。

その上で、世間を社会より重視する傾向が日本に目立っていて、今回露悪的に描写された自体にある程度以上の妥当性を感じるのも、また事実だと思います。
ノリで、空気で、勢いで。
よく計算されたムードの醸造と、メディアの後押しを受けてしまえば、新規性のある『誰か』が支持を受ける事例は、色んな例が挙げられます。
無論、それに抵抗した事例もあるわけですけども。
とまれ、イノセントな陣営が浮き彫りにしたガッチャマン世界の『今』は、極端だけどありそうな感じを巧く付いてきて面白いと思います。

世間がジョーさんの作った空気に押し流される中、はじめちゃんはいつも通り泰然自若としていた。
ゲルサドラ政権成立がトップニュースになる中、冷静に理詰夢に面会しに行こうと累に言える辺り、相変わらずの超人です。
そんな彼女の超人性が、空気に流される衆愚への共感性のなさとして描写され、状況に対する弱点に現状なっているのは、皮肉の効いた描写ですね。


なにはともあれ、これでゲルサドラは日本のトップに立ってしまったわけです。
持ち前の異能を用いて歴史上最適効率で民意を収集・変化させ、異質な精神故に統一された結果だけを求める、異形の首相。
彼が一体どういう為政を行い、どういう結果が生まれるかは今後の展開次第ですが、危ういのは間違いない。
それは無邪気で無知な正義を燃料に、彼と一緒に走っているツバサも同じです。

火の着いた爆弾を積んだトラックが暴走する中、賢いガッチャマンたちは原則論に囚われ、上手く行動できていません。
クラウズをどう扱うのが正しいのか以前に、クラウズを扱うにおいて必要とされる正しさはどんなものか、前提の段階をずっと話している感じ。
そこから飛び出したジョーさんは自分の行動に納得していないし、清音パイセンは女とチャラチャラするのに忙しい。

そんな中つばさと累が理詰夢に向い合い、対面で彼の考えを聞きに行ったのは、変化の兆しを感じささせる出来事でした。
稀代のテロリストとの接触で、理想主義者と天才が何を手に入れ、何処に動くのか。
幼い神を担ぎあげた世間が、どういう変節を見せるのか。
まだまだ、目が話せませんね。