イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Go! プリンセスプリキュア:第28話『心は一緒!プリキュアを照らす太陽の光!』感想

第22話から約一ヶ月半続いてきたトワちゃん社会復帰編、まとめの今回はまさかのゆいちゃん回。
どう足掻いても主役にはなれないゆいちゃんの鬱屈や挟持を真正面から取り上げ、物語の地盤を踏み固めるエピソードとなりました。
便利キャラを便利なまま使わないで、ちゃんと物語を割り振って掘り下げてくれるのは、誠実さを感じられてとても良いですね。

トワちゃんは沢城先輩声と可愛いエルフ耳で武装してますが、中身は洗脳された少年兵みたいなもんで、これまでの悪事に心を痛め、日常に馴染めないトラウマ持ちでした。
みんなの笑顔を護るために闘うプリキュアなのに、当の本人が一番笑顔ではないというジレンマを解消するべく、このアニメは地道にエピソードを積み上げてきました。
自分のことは自分でしなければいけない庶民の生活に慣れ、友と心を触れ合わせ、きららとは対等に笑いあい、みなみには怯える心をあずける勇気を教えてもらう。
色んなお話を積み上げて、トワちゃんはなんとか普通人としての幸せを受け入れられる寸前までやって来たわけです。

しかし最後の最後の一線を未だ超えられず、王族としてのプライドと過去への慙愧を振り切れていないという状況が、今回『カナヅチ』というポンコツネタに隠して表現されていました。
素直になりたいのに踏み出せないのは、何もトワ子がツンデレブラックベルトだというわけではなく、生粋の王族としての矜持を捨てきれず、仲間を信じきる気持ちを思いきれないという表現なわけです。
弱い自分を認めず、強い自分を演出したがるというのは、実は潜脳状態にあったトワイライト時代と同じ心理的状況なのであり、『カナヅチ』を言い出せないトワは未だ、トワイライトとディスピアの影を引きずっている。
逆に言えば、この一線を越えれば過去を振りきり、真の意味で四人目のプリキュアになる試練だとも言えます。


そんなトワに一線を越えさせるのが、主役を約束されたプリキュアの誰かではなく、プリキュアの語り部であるゆいちゃんなのは、面白い選択肢だと思います。
ゆいちゃんの仕事はプリキュアの隣にいることであり、飛んだり跳ねたり殴ったりの派手な仕事は、どう足掻いても担当できません。
逆に言えば不必要な強さを演出する必要がないということであり、弱い自分なりの存在価値を自分で見つけ、等身大の自分に価値を見出しています。
トワイライトの影響下にあるトワとは正反対のキャラクターであり、シメに持ってきたのは巧い構成だと言えます。

無論ゆいちゃんも脇役の傍観者・避難誘導のプロという立場に甘んじているわけではなく、『自分もプリキュアになりたい』という欲望を持っていることを、素直に認めます。
認めた上でプリキュアの語り部という、自分の能力や欲望に適した立場を選択し、そこにプライドを持っているゆいちゃんの描写は、どう足掻いてもヒーローとそれ以外が別れてしまうプリキュアという作品を、ビッと引き締める効果があったと思います。
(自分で悩んでいつの間にか解決しているのではなく、欲望と現状を掘り下げ、悩みを昇華するエピソードがあればベストでしたが、それこそ主役ではないゆいちゃんに制約の多い中、尺をこれ以上使うことは難しかったんでしょう。
むしろ制約の中であえてこの問題に触ってきたことに、僕は高い価値を感じます。)

トワが持っていないからこそ素直なゆいに憧れるように、ゆいも全てを持っているトワに憧れている。
しかしプリキュアでありプリンセスでもあるトワは傍観者ではいられないし、ゆいちゃんがプリキュアになることは様々な事情が許してくれない。
いくらでも歪みそうな無い物ねだりの鏡面を綺麗に整理し、プリキュア以外の価値を強く高める形でエピソードをまとめあげた終わり方は、とても心に響きました。
何も出来ないゆいちゃんの価値をしっかりと認め、戦わない人がいればこそ戦い続けられるという真実を見つけさせたのは、トワというキャラクターが完成するエピソードとして、とても完成度が高い気がします。
あとまぁ、この憧れのエコーがすんごいアドゥレ・サンスの気配を感じさせてで、ジャーゴン化してしまった『百合』ではない、オールドスクールな青春小説的百合を感じさせ、素晴らしかったですなウム。


持てるものと持たざるものの相克の間に、次回以降への布石も置いてありました。
クローズさんとディスピア様が退場している現在、どうしても圧力が足らないディスダーク班。
『人数が足らないなら分身すればいいじゃん』『ピンチが足らないなら変身アイテム盗めばいいじゃん』と、デキる大幹部ロック様が狡猾な所を見せてくれました。
シャットさんが凄い勢いで愛の戦士&コメディアンになってるので、悪いことはだいたいロックがやらんとイカンのは大変だ。

変身不能状態ってのは『変身できるから英雄なのか、変身できなきゃ戦士ではないのか』という問い掛けを自動的に引っ張ってくるので、ヒーロー物としては美味しいネタです。
しかしここら辺の問は今回、ゆいちゃんに仮託して答えてしまった感じもあるので、別のアプローチで攻めてくるのかなぁ。
先代プリキュア(もしくはキーの擬人化)みたいな子たちも出てきたし、結構早めに解決するかもな、プリキュア変身不能。

長い間苦しんできたトワがようやく、心の重石を完全に投げ捨てる完結編として、よく出来たエピソードでした。
プリプリは良い意味で風通しが良く、世界に対して開かれている作風が魅力だと感じているので、ゆいちゃんをクローズアップしてくれたのはとても嬉しかったです。
トワの物語が一段落付いたので、次回以降はまた別の方校に転がっていきそうなプリプリ。
さてはて、今度はどんな物語が待っているんでしょうか。
楽しみですね。