イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うしとら!! ここがスゴい!! -TRPGゲーマー的視点から見るアニメ版『うしおととら』-

0) はじめに

7月から始まったアニメ『うしおととら』。
少年漫画の金字塔であり、様々な人の心に刻まれた少年と妖怪の旅路をどうアニメ化するのか。
期待と不安の入り混じった視線が注がれていましたが、実際に放送されたものは適切に再編集され、原作の優れた部分を取りこぼさない、見事な仕上がりとなりました。
映像化され元気に動き回る潮やとら、麻子や真由子を見ていくうちに、連載当時の熱が蘇ってきた人も多いのではないでしょうか。
もちろん、TVシリーズで初めてうしとらに触れ、ビビッときた方も多いと思います。

自分はTRPGという趣味を持っており、フィクションをその文脈で眺めることも多いです。
『今のシーンは実際の卓ではこういう感じで、こういうテクニックで処理されたな』
『コイツのプレイヤーはこういう趣味嗜好を持っていて、こういう描写に力入れてるな』
そんなことをついつい考えてしまうのは、ゲーマーの性ではないでしょうか。

うしとらもまた、ついついTRPGと関連させながら見ているわけですが、キャラクターたちの動きがあまりにゲーム的に『巧すぎる』動きで、毎回興奮してしまいます。
それはお話をダイナミックに回転させるために必要な動きであると同時に、非常にわかりやすく状況を説明し、他人(漫画版なら読者、アニメなら視聴者、TRPG見立てなら他PL・GM)に伝わりやすい動きでもあります。
今回の記事はそんな風な、自分が感じたうしとらのTRPG的にスゴい部分をまとめてみた記事であります。
うしとらにかこつけて、自分勝手なTRPG論のお話にもなると思いますが、少し見ていっていただけるとありがたい。


1) トス上げの巧さ
うしとらをTRPGの実プレイとしてみた時、潮やとらのPLが巧いのは、とにかく他の参加者を尊重し、尊敬していることです。
僕は『トス上げ』と呼んでいますが、他PLが発話しやすいように行動や会話の種を投げかけ、コミュニケーションを取ろうとする手腕がとても優れている。
これは(あらゆるTRPGのテクニックがそうであるように)技術であると同時に態度であり心持ちでもあって、ただ『こういう時はこういう風にすれば良い』という冷めた気持ちからよりも、とにかく楽しく、素晴らしい卓を共有して、いい時間にしようという気持ちから生まれてくるものです。

トス上げの例を挙げると、第6話『あやかしの海』でのとらが分かりやすいかと思います。
シナリオ真ん中でのBOSS戦闘、潮を戦闘シーンに引っ張り上げるためには分断されなければいけない状況で、連絡役になる海座頭に潮の名前を告げ、次のシーンでの情報共有をやりやすくしています。
ここで必要な状況を取りまとめず海座頭と分断されると、人間に興味が無い海座頭が潮を探し話しかける理由を製造するシーンが挟まったり、実際にあってからスムーズな情報/モチベーション交換が上手く行かなかったりします。
とらがあやかしに喰われながら「うしおって人間を探せ!」というトスを出したことで、海座頭は潮にトスを上げやすくなり、それを拾って潮がシナリオに合流する流れもスムーズになったわけです。

トスはスパイクを決めるために上げるわけで、『アイツならかっこ良く決めてくれる』という信頼感があってこそ、いいトス上げが出来ます。
実際うしとらのキメシーンは毎回非常に格好良く、〆る所を外さず確実にキメる。
そういう満足感があればこそ、一歩引いてトス上げに回るという、一見地味な作業が楽しくなってきます。
これもまた、テクニックというより信頼感が大事な部分かと思います。


うしとらキャンペーンでトス上げがうまく言っているのは、トスの上げ役が固定されず、『お前は脇役で喋らない』『俺は主役で毎回格好良い』という不平等が、あまり存在しないのが大きい気がします。
とらが活躍したエピソードの次は、潮が前に出る。
うしおがトス上げして脇に回った次のシーンは、とらがトス上げを担当する。
いい具合に見せ場と、見せ場を作るためには必須の前振りを分担していればこそ、不満感が少ない卓に仕上がり、そういう卓を作ってくれた仲間への信頼感も高まる。
結果、再び良いトスが上がる。
そういう正のフィードバックが、卓内に存在している感じがします。

TRPGはお話を追体験する特性上、主役/脇役の差異が生まれやすい傾向があります。(もちろん、あまり生まれないシステムもあります)
発言しやすい/しにくいというのは個人の性質による部分もあるので、あまり配慮せず展開していると、声のでかいやつがドンドン喋り、それに圧迫されて発言機会が少ない人が出てきてしまうこともある。
そうなると、自分が蔑ろにされたと感じセッションを楽しめない人も出てきて、あまり良いセッションとはいえなくなってしまいます。
オンラインにしろオフラインにしろ、卓を同じくして時間を共有し進む遊びである以上、誰か楽しめていない人がいると、たいがい卓全体に影響が及びます。
それはやはり避けたい。

そういう事態を避ける上で、いい位置にトスを上げ、他人の見せ場やシナリオの進行をアシストすることは、とても重要だと思います。
うしとらを見ていると楽しそうにトス上げをしていて、凄くいい方向に楽しさが回転している卓なんだろうなぁと感じます。
凄くパクりたくなる手腕です。


2)お話の都合の飲み方
TRPGは様々なお話を追体験するものであり、これを多人数で共有するものでもあります。
いろんな立場のキャラクターが、いろんな人間の趣味嗜好や思惑によって動きながら、一つの物語を生成していく。
これは非常に複雑で困難な作業であり、ハンドアウトや今回予告、各種チャートやHPに至るまで、TRPGの様々なシステムはそれを補助するために存在しています。

そんないろんな人の求めるお話を共有する上で、とても大事なのが『都合を飲み込む』ということです。
コイツはBOSSなので、お話の真ん中でのこの戦闘では脅威を見せて退場させたい。
今回のお話はこの女の子がひどい目に合うので、是非助けてほしい。
俺は今回ちょっと暴走気味に行きたいので、お前はいいタイミングで殴りつけてほしい。
GMや他PLが用意する物語を共有する上で、『都合』を積極的に飲み込んでいくことは、とても重要です。
そして、うしとらはこのお話の都合の飲み方が、とても上手い。
特にTV版は漫画版よりも展開が圧縮されているので、全体的にキャラクターの物分かりが良くくなっています。

例えば第三話『絵に棲む鬼』のシナリオヒロイン羽生礼子は、父の亡霊に取り付かれた死にたがりです。
接点のない彼女を潮が気にかけることでお話が進んでいくわけですが、潮は『絵を描くことが好き』という自分のキャラクター設定を活かすことで、絵のモデルとして礼子にモチベーションを持っていきます。
自分のキャラクターが持つ設定と、シナリオの都合を上手く絡ませることで、お仕着せのハンドアウトを事務的に処理するよりも、より熱があって叙情性も豊かなプレイが生まれるわけです。
潮が食らいついたのを見て、その決意を試すNPCである間垣先輩と喧嘩させるGMも、あのシナリオの巧いポイントだと思いますが。
あと、キャラ作成時のコネクションNPCである真由子と礼子に接点があったことにして、潮のお人好しな部分を加速させる演出を挟んでいる所とか。


他にも、負けブックの飲み方の巧さがあります。
うしとらは誰かが負けることで、それを解決する別のキャラクターが引き立つシーンが、とても多いです。
例えば第2話『とら街へ行く』でボコボコにされる潮がいればこそ、潮が叶わなかった餓眠様をぶっ倒すとらのカッコ良さが際立つ。
先ほど例に上げた第6話『あやかしの海』では、とらが負けることで潮に連絡が行き、最終的に巨大なあやかしをぶっ倒すカタルシスが生まれています。

その時に『油がヌルヌルして爪が刺さらない』とか、細かく負ける理由をつけているのは、結構技ありです。
最終的に勝てる相手に負けるのは『話の都合』であるのと同時に、お話の中での真実でもあります。
『ミドル戦闘だから負けときゃいいでしょ?』みたいな受け流しだと、卓全体の温度が知らぬ間に下がり、あまり面白いセッションにならないことがあります。
ここで一応でもロジックを挟むことで、お話の都合をただ飲んでいるのではなく、キャラクターには回避不能な『何か』があった結果として敗北したという、一種の言い訳が立つわけです。
このロジカルな言い訳は見た目よりも大事で、『よく判んないけど、とにかく話が進まないからそうなった』よりも、一応でも無茶苦茶でもロジックの筋道を用意することで、納得して『お話の都合』を飲み込むことが出来ます。
TRPGは自由意志の遊びなので、納得はとても大事であり、『俺達はなんでここで負けるのか』という都合にPLサイドから積極的に理由をつけていくうしとらは、とても巧いPLだなと思います。

 

3)他人のキャラシーを見る
トス上げするにしてもお話の都合を飲むにしても、他のプレイヤーがお話を共有するトークンであり、意志を反映させる窓でもあるキャラクターのことを気にかけるのは、とても大事でしょう。
クイックスタートのチョイスにしても、ライフパスの選択にしても、特技やデータの組み方にしても、そこにはプレイヤーが『これが面白いんだ!!』と見込んだ何かがあります。
他のPLがやりたいことはキャラクターシートにかなり埋め込まれているのであり、そこに注意をはらい尊重することは、とても大事です。

うしとら達はとにかく、他人のキャラシーをよく見たプレイングをしています。
例えば第8話『ヤツは空にいる』で潮が「衾をぶった切りたいけど、飛行機にダメージ入るし」と戸惑った時、とらは「獣の槍は化け物にしかダメージ入らない特技で強化してあるから、飛行機貫通してダメージはいるだろ」と提案する。
もしくは第5話『符呪師  鏢』でヒョウが暴走した時、『とらの爪って四本だったよね?』と確認し、最後の説得に活用する。
他のキャラクターの特徴をよく見て、それを引っ張りあげたトス上げをしてくれると、自分を尊重してくれているという感覚が生まれやすく、卓にポジティブな影響が及ぶわけです。

とらが妖怪の説明役を担当しているのも、潮のキャラシーをよく見た結果でしょう。
潮は設定として「妖怪の世界を知らない少年。槍を手にしたことで運命に巻き込まていく」という、妖怪に詳しいとおかしい要素を持っている。
対してとらは「100年以上を行きた大妖怪」という、潮に足らない知識を担当可能な設定を持っています。
それまで普通の少年として過ごしてきた潮がベラベラと化け物の知識を説明すると、彼が持っている普通さが薄れ、とらとの関係が変化していく様子だとか、その普通さこそが事態を打破していく爽快感だとか、色んなモノが傷つきます。
そこでとらが積極的に説明感を買って出て、キャラの役割や設定が崩れないよう、良い動きをしているわけです。

これはGMも同じで、キャラ作成時には『潮の家の蔵に封じられていた妖怪。長生きしているが、過去は謎に包まれている』と書いてあったとらのシートを見て、第6話で海座頭を出して伏線を張ったり、第9話『風狂い』で400歳のかがりに年上ロールをさせて反発を買ったりしています。
トス上げの話と少し被りますが、良いスパイクを決めてもらうためには、良い位置にトスを上げなければいけません。
GMからのネタ振りもその例外ではなく、何処に球を出せばいいのかの見取り図として、PLのキャラクターシートをしっかり見ておくのは大事だと思います。

 

4)敵と味方をしっかり演出する
うしとらは容赦の無いゴア表現が結構挟まり、毎回残忍な化け物が無辜の人々を食い殺すシーンが挟まります。
敵を『コイツは強くて悪い奴なんだ』『是非お前たちに倒して欲しいんだ』と印象づけ、しっかりとGMの意図を伝える上で、犠牲者を出すのはとても有効です。
餓眠様にしても、ふすまにしても、人食いシーンをしっかり見せることで、『アイツぶっ倒す!』というモチベーションがはっきりし、PLが迷うことが減ります。

敵がひどい目に合わせるのは名前の無いモブだけではなく、交流を持つNPCもそうです。
第3話の礼子は父の亡霊に自由を制限され、第2話の石喰いは真由子や麻子を手に掛ける。
ヒロインに圧迫を掛けピンチに陥らせることで、彼らの人間性や挟持を引き出し、PCが『良し、あいつら助けないとな!!』という気持ちになるので、敵が名前ありNPCをいびるのは大事です。
NPCは無力なりに脅威に抗い、頑張っているとモアベターであり、『こいつら座って助け待ってるだけじゃねぇか』と思われるより、『俺が手助けしてやんねぇと、こいつらの頑張りが無駄になっちまうぜ!!』と思われたほうが、PLはシナリオに前のめりになりがちでしょう。
そういう意味で、しっかりと芯を持って脅威に立ち向かっていくうしとらヒロインは、モチベーション生成装置として良い仕上がりだと言えます。


倒すべき敵、守るべき味方がハッキリしている以外にも、良いやつだけど倒さなきゃいけないとか、暴れ狂ってるけど根は良い人だとか、少し捻った展開があります。
前者は第9話の十郎、後者は第5話のヒョウさんが代表格です。
これを分ける上でうしとらでは、『人間(もしくは話の分かる妖怪)を殺してしまったか、否か』という明確な基準を用意しています。
『ヒョウさんは化け物以外殺さないよ。上手く説得してね』というサイン、もしくは『十郎はもう人殺しだよ。良い奴だけど倒して終わりだよ』というサインを演出の中で出すのは、PLがどうお話しを解決するのかと惑わない、重要な支援でしょう。
アニメ版だと第9話は冒頭30秒で『十郎は色々あったけどもう戻れないですよー』というサインを手早く出していて、上手い見せ方だなぁと思いました。

十郎はあまりにも良く出来た敵というか、人情味がある部分を見せすぎたせいで潮が「コイツ殺さなくていいんじゃないすか、話し合いでどうにかならないすか?」と言いかねない空気でした。
そこで「獣の槍は妖怪絶対殺すランスだから、襲いかかると暴走して殺しちゃうぜ」と宣言し、殺す方向で話を収めたGMは、想定外の展開にも動揺しないイイGMだと思います。
TRPGだと話し合った末に「んじゃあ十郎は死にません。殺した人を償うために、悪い妖怪を狩って生きることになります」みたいな結論でも、勿論いいでしょう。
殺して終わる展開にしても、「GMとしては一度人間を手に掛けた十郎が生き残って、ハッピーエンドでハイおしまいというのはあまり納得出来ない」としっかり伝え、PLとのズレを細かく修正するのが大事だと思います。
この後助けられなかった十郎のことを覚えていて、要所要所でロールに活かす潮の姿を見ていると、ここのズレは的確に対処された感じがします。

 

5)時々はスパイスを効かす
基本的に、TRPGは信頼と善意のゲームです。
キャラクター同士の関係は友好的な方が取り回しやすいし、シナリオは善をなすほうが素直です。
オーソドックスな遊び方が持っている安定性と強さを踏まえた上で、同じことをやり続けていくとプレイから瑞々しさが失われ、卓がくすんでいくこともあります。

そういう時に、キャラクター同士をヒリついた関係にしてみたり、悪人という設定を付けてみるのは、良いスパイスになります。
とらは潮と並ぶ主役ですが、彼とは異なり自分の欲望を大事にする『妖怪』で、かつては日本中を荒らしまわっていた暴れん坊です。
潮とつるみつつも隙あらば食ってやると意気込み、気に食わない相手には暴れまわる。
潮が前任で真っ直ぐな性根を持っていればこそ、とらの悪漢ぶりはより目立ち、面白い要素として受け入れられます。
また、とらの『妖怪』さが強調されることで潮の『人間』性が浮かび上がり、『人間』と『妖怪』の関係性というキャンペーンテーマがくっきり見えるという作用も、とらのきゃrカウター描写にはあります。

その上で、効きすぎたスパイスは物語の共有の妨げになったりします。
「とらは人食いの妖怪だから」という設定を押し通して、第4話で真由子を食べてしまったら、潮との関係は修復不可能になるでしょう。
潮のことなんて記にしていないから、死にかけても助けないと言っていては、信頼関係は壊れてしまうかもしれません。
都合の飲み込み方とも関係する話ですが、スパイスの効いたキャラクターや対応をする場合、同時に卓全体で共有されているお話がどんなもので、そこからはみ出ないで(もしくは共有できる程度にはみ出して)プレイするには、どのくらいの加減が良いのか見極める目が必要になってきます。


とらは色々なセーフティをキャラに用意し、『人食いの妖怪』という設定を維持したまま、潮との物語を共有し、前進させていく準備をしています。
先程述べた妖怪の知識もそうですし、『獣の槍が怖いから』『今は気が乗らないから』『コイツは俺が食うから』と理由を用意して行動を曲げる自然さもそうです。
とらはお話で要求されるモティベーションを素直に受け取りつつ、とらの魅力的なキャラクターを維持できる範囲で乗りこなしていて、上手いと思えるシーンが多いですね。

スパイスは香ばしさを失ってしまっては意味が無いので、対立や喧嘩を時々するのは大事です。
第2話や第5話の冒頭、潮ととらが血を見る戦闘をするのは、二人の間柄が慣れ合いじゃないと確認する上で、大事なシーンだと言えます。
まぁすぐツンデレキャイキャイするんで、そういう建前だって感じもしますけど、やっぱりああいうシーンがあることで『とら=妖怪』というキャラクター性が崩れずにいる。
悪人は悪人っぽいことをするシーンがあった方が、当然物語的に目立つことが出来るわけです。

基本的にTRPGはお互い助け合い、一つの物語を共有しながら自分のゴールにたどり着くゲームです。
PC間の対立というスパイスはその目的に一見反するので、協調的な関係よりも慎重な取り扱いが必要になります。
とらと潮も対立シーンをやる前には「俺、そろそろお前を襲いたいんだけど」「んじゃあ喧嘩別れして、一時的に関係が冷え込む感じで」とか、PL間でしっかり意思疎通してると思います。
変化球は決まると気持ちいいですし、普通の遊び方に飽きたら投げたくなるものですが、同時に難しいのでしっかり準備し取扱いたいところですね。

 

6)熱意を持ってシナリオに入り込む
うしとらは藤田先生らしい熱血がキャラに入り込んでいて、良く泣きよく笑う、感情が表に出たお話になっています。
TRPGを楽しみ、その楽しさを共有する上で、自分の楽しいという気持を表面に出すのは、とても大事です。
用意された(シナリオをプレイ中にプロッティングするなら、用意されつつある)物語を自分のものとして受け取り、そこに血肉を通い合わせて前のめりになる姿勢は、プレイ時間を共有する上で、非常に大事な燃料になるでしょう。

潮は他人に対しての共感能力がとても高い、気立てがよく優しい男の子です。
十郎にしても、礼子にしても、ヒョウさんにしても、第6話のタツヤにしても、見ず知らずの人に積極的に話しかけ、彼らの問題を自分のものとして受け取っています。
この『他人の物語を自分のものとして、積極的に受け取っていく姿勢』は、TPRGをやる上でとても大事だと思います。

TPRGのシナリオは基本的にGM以外に閲覧できず、先の見えないものとしてPLに提示されます。
見えないものを『先が見えないから、俺のものじゃないからどうでもいいや』と投げ捨ててしまっていては、会話で頭の中身を共有していくTRPGというゲームが成り立ちません。
まずは相手が投げてくる物語や設定、キャラクターを受け止め、他PLやGMがやりたいことを積極的に飲み込んでいくことで、卓の温度は上がっていくし、他人を尊重する姿勢を見せることで柔らかくもなる。
先ほど『悪人はあくまでスパイス。基本は善人』と書いたのも、他人にわざわざ積極的に係るお人好しの方が、他の人の物語への積極的関与がしやすく、TRPGのキャラクターとしては機能的だからです。
そういう意味で、潮の真っ直ぐさ、前のめりな姿勢、誠実な態度というのは、見習うところがとても大きい。

クールでニヒルなとらも、「しょうがねぇなぁ」という態度を取りつつもお話から脱落することなく、必要なタイミングで積極的に前に出ている。
その上で、歳相応に達観したキャラクターではなく、子どもじみた部分のあるノリの良さを全面に押し出すことで、情熱を持って話に突っ込んでいくタイミングにも対応できている。
直球の潮、変化球のとら、どちらにしても物語への強い感情を持ち続け、それぞれのやり方で熱くプレイしているのは視聴という形で物語を共有している僕達にとっても、ありがたく嬉しい事だと思います。
熱意は画面越しに(TRPGにおいては卓を挟んで)、しっかり伝わるわけです。
それを燃料にして卓は加速し、盛り上がり、楽しい経験が共有されるのであれば、やっぱりシナリオへの積極性というのは、とても大事なんじゃないでしょうか。


7)まとめ
卓の風景を幻視しつつ、妄想混じりに色々と喋らさせていただきました。
うしおととら』は少年漫画としての素直なストーリーライン、人間性の高いテーマ、魅力的なキャラクター、他人を尊重したプレイングと、オーソドックスなTRPGの参考になる要素が、たっぷり詰まっています。
藤田先生という情熱のあるクリエーターが生み出しただけあって、テクニックとハートのバランスが良いことも、TRPGの技術を考える上で勉強になります。
こうやって刺激を受けるうしとら、やっぱすっげー良いアニメだと思いますね。