イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

俺物語!!:第23話『うちの春休み』感想

ぴゅあぴゅあパワフルラブコメも気づけば作中で一年が過ぎ、ラストエピソードの開始であります。
前回はスナの恋愛だったので、今回は猛男と凛子にガッツリ絡んでくる勘違いボーイのお話を二年目の夏休みから一年目の春休みにずらして展開。
空回り描写で笑いを取る手腕が冴えていて、面白いお話になりました。
有り余る情熱を暴走させるのは猛男の仕事だったはずなのに、話が進むと落ち着くシーンが増えるのは興味深い。

今回のゲストキャラ一之瀬さんは、凛子の天使っぷりに勘違いして大暴走ボーイ。
いくらでも嫌なやつに描けそうなんですが、パティシエの仕事には本気な部分とか、他人と距離がある人格が凛子のおかげで矯正されていく様子とか、俺物語!!らしいライバル描写がされてました。
書き文字と絶妙な間の取り方、福山さんの熱演を巧く活かしたコメディ演出も活き活きしていて、一之瀬さんは面白い生き物になってました。
気持よく笑ってしまうとそいつのことが嫌いになれないというのは、コメディが表現として一番強い所だと思います。

一之瀬さんを笑ってみてられるのは、凛子からの脈がマジで一切ないのをしっかり見せていることと、これまで培った凛子と猛男の絆の深さがあるから。
万が一にも負けない試合だからこそ、結果ではなく過程や対戦相手のキャラに目を向ける余裕が有るというか、視聴者の見どころそういう風に誘導する演出がうまいというか。
最後のシーンはストップモーションにナレ被せと、非常に少女漫画力高くなってましたけど、これまで見てきていれば『あ、別れるんだ』とは思わない。
思わないんだけど、演出の切れ味が鋭いので一瞬『え、何、別れんの?』と疑問には感じる。
ここの調整がやっぱり上手いなぁなどと、最終話間近で思った。


一之瀬さんを鏡にして見えてくるのは、いつもどおり純真で真面目だからこそ勘違いを生む凛子と、いつもと違って嫉妬深い側面を見せる猛男。
一之瀬さんパートが過度にシリアスにならないのは、凛子とのスレ違いがギャグになっているからなので、凛子は天使でOK。
『パティシエのことに一生懸命だから、嫌いになれない』という部分は、一之瀬さんと共通なのだな。

普段は熱血の権化している猛男ですが、今回は弱い部分を見せました。
スナ姉も言ってましたが、自分のことはいくら耐えられる超人でも、他人のことは自由には出来ないし、揺れたりもする。
ここら辺は悠紀華ちゃんや弟子のエピソードでも語ってきた、このお話共通のテーマなんだと思います。
ここを忽せにしないからこそ、猛男は舞台装置ではなく一高校生として感情を持つことができるし、お話に成長物語の要素を持たせることも出来るわけで。
せっかくの二話エピソードなんだから、ズドーンと沈み込むこと、ネガティブな感情を肯定することのは大事よね。

そしてお話が沈み込み過ぎないように調整をかけるのが名脇役の仕事であり、そういう時頼りになるのはやっぱスナ。
今回も一緒に海に行ったり、姉に相談したり、うまい具合に空気を抜いていました。
一之瀬さんと猛男が話している時に、軽くキレそうなオーラ出しているスナが俺は好き。
猛男と凛子自身だけではなく、『猛男を幸せにしてくれる凛子』と『凛子のことが好きな猛男』両方が好きなスナにとって、二人の関係に水挿しそうな人には警戒しちゃうよね。
そして、そういう計算が働かないことが猛男というキャラクターの一貫性であり、ものがt理進行に必要なクレバーな部分はスナが担当するという。
バディものとしても良く出来てんだな、このアニメ。

『お話のコントロールの巧みさ』という、このアニメの長所がよく出たエピソードでした。
無論笑いの切れ味、ラブなシーンのトキメキなど、他の武器も冴えていた。
2クール最初から最後まで、おんなじ塩梅で武器を使い続けることって、見ているとなかなか気づかないけど、凄いことだと思う。
そして、その凄いことを気づかせないでやりきって、このアニメは終わってくれるんだろうなぁという信頼もあります。
良いアニメだ、本当に。