イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ミリオンドール:第11話『目指せ、メジャーデビュー!』感想

アイドルアニメ戦国期に咲いた徒花、ついに最終回。
マリ子の咆哮を受けて他の主人公たちも奮起し、アイドル坂を登り始めた所で終わりました。
……終わってねーよ!
終わってねぇっつうか始まってすらいないけど、まぁ坂道の最初に付くまで、主人公たちが主人公になるまでがこのお話だったということなのでしょう。
そういう仕込みは最初にやっておけという話もあるけど、地下ドルやクソヲタを主人公に据える以上、マイナスからのスタートなのはしょうがない。
問題があるとすれば、マイナスからの巻き返しに熱や勢いがなく、筋書きを読み上げているうちに時間が出血しきったことだろう。

リューサンがイノイチ飛び出していくのは、現場に拘るヲタを表現するアツい絵だったと思う。
このアツさをもっと早い段階から出していれば、キャバ嬢に入れ込んで眼の色変えてるダメ人間のお話しという印象もかなり薄れたんじゃないであろうか。
ただでさえ時間のない5分アニメなのに、特番やらヲタ講座やらいろいろ挟まる構成で大変だったと思うが、リューサンを好きになれるイベントが最後に一回しか無いのはしんどい。
気持ち悪いけどヘンテコな清潔感があって、面白いキャラではあるんだけどね。

イトリオもスタートがかかっていたが、僕が見たいのはこの一歩先、泥の中から顔を出してようやく花が咲く瞬間なわけで、こっちも時間切れだ。
メジャーへの意欲を見せたマリ子にしても、アイドルサイドのお話が面白くなるのは確実にここから。
普通のアイドルフィクションが触らないバックヤードにあえてカメラを当てた、この作品の強みがお話の盛り上がりと絡み合うのもここから。
感情が爆発するイベントで加速がついた所でハイおしまい、というのは、いかにももったいない。
屈折した状態が長い(というか話のほぼすべてが折れ曲がった地下のジメジメしたお話だ)ので、こっからのカタルシスは気持ちいいと思うんだけどな。
まぁ無い物ねだりだ。

無い物ねだりといえば、在宅と現場の交錯が最後まで起きなかったのも惜しい。
現場の強みは、最後にリューサンが見せた即断でぎりぎり担保された感じあるけど、変なアイコンとピーチクおしゃべりしてただけでのすう子は、在宅の良さと強さを見せられたとは思わない。
『こいつは凄いんで、凄いことになりました』という真ん中をすっ飛ばした描写の弱さは、このアニメをずっと貫通するポイントだと思う。
時間が少ないのもあるが、それ以外の要因も確実にあるだろう。


というわけで、ミリオンドールのアニメは終わった。
面白くなりそうな要素を秘めつつも、仕上がりの雑さとタイムスケールの適当さで残念な仕上がりになるという、このアニメらしい終わり方だった。
『ここからが面白いのに!』といった所で流れたものは流れたものであり、この映像で見リオンドールは評価される。
もしくは評価すらされない。

『とりあえずアニメにして知名度を確保し、書籍売上を引っ張るカンフル剤にする』という手法は、アース・スター資本のアニメだと特に目立つ。
『響けユーフォニアム!』の葵ちゃんの言葉を借りれば、『アリバイとしてのアニメ化』なのだから出来なんてどうでもいいのかもしれない。
連動した三次元アイドルのイベントがグッダグダになり、監督が途中でクレジットから消えるのも、まぁしょうがないのかもしれない。
5分間のコマーシャル、『萌え絵のジャパネットたかた』がこのアニメの存在意義だ。

んなわけあるか。
平板なストーリー展開、絵的にも人物的にも愛せないキャラ描写、のっぺりとした演出。
つまらないアニメに人は夢中にならないし、それが宣伝として最大限の効果を発揮することもない。
わざわざ別角度からアイドルアニメに切り込んだ野心も、薄汚い部分を取り上げつつそれでもアイドルが大好きなんだという秘められた熱も、生かせないまま終わったなら虚しい炎だ。
ゼニの都合で作り上げられたアニメだとしても、視聴者の目に止まる以上、それは情状酌量の理由にはならない。

僕はこの面白くなりそうなアニメに、面白くなって欲しかった。
でもそうはならなかった。
面白くならなかった裏側には、一視聴者には知り得ないいろんな事情があるんだろう。
何しろ、OPテロップという一番目立つ看板から監督が消えてる異常事態なんだから。
五分アニメだから、資本元が熱心じゃないから、ニッチな題材だから。
言い訳は色いろあると思うが、僕はもうそこを見ない。

しっかりと作って欲しかった。
リューサンのアツさも、すう子の心変わりも、アイドルたちの泥まみれの生き方も、ちゃんと見せて欲しかった。
同じアース・スター資本の五分アニメで言えば、『ヤマノススメ』みたいな仕上がりに引っ張りあげて欲しかった。

でも、作品が人の胸に突き刺さるほど面白くなるというのは実は奇跡で、ストイックに頑張って頑張ってそれでも届かないかもしれない、危うい出来事なのだと、僕は忘れていたようだ。
幾度も繰り返した『無い物ねだり』が叶わなかったのも、それはしょうがない。
これは自分への慰めではない。
本当にしょうがないのだ。
一視聴者である僕からも見えるもの、製作者からしか見えないモノ。
いろんなことが組み合わさってアニメは世界に出現しており、そういう複雑なものが航路を上手くつかめず座礁することは、しょうがないのだ。

それでもミリオンドールを面白いアニメにしてほしかったという身勝手なお願いは、だから何処に流れ着くでもない未練だ。
良いアニメだったとは、口が裂けても言えない。
でも好きな作品だとは、もしかしたら言えるのかもしれない。