イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツ!:第153話『とびだそう、広がる世界』感想

四年目を迎え、色んなモノを新しくしたアイカツ
その出だしは北海道の爆弾娘と、控えめな表情の奥に熱意を隠した少女のスタートダッシュでした。
運命を変えてしまうほどの輝きとの出会いが、凄く鮮烈に描写されていて、とっても良い第一話だった。

みやび&ここねによる実証実験の成功を受けて、四年目のアイカツは比較的短い期間でゲストアイドルと場所を取り替えつつ、全国ツアーを走り切る体制になりました。
長期IP特有の構造披露が視聴者サイドにも伝わってきていたので、ここで大きく舵を切るのは良いと思います。
他の女児アニのように世界観/年代リセットという手段を取らないのは、色んな意味でアイカツらしい。

『出たゲストをつまみ食いしてるだけ』『服と場所が変わるだけ』という刹那的な印象を与えないためには、各ステージごと、各ロコドルだけが持つドラマを丁寧に扱うことが、とっても大事だと思います。
みやび&ここねもそこで妥協しなかったからこそ、中盤を繋ぐリリーフとしての仕事をしっかり果たすことが出来た。
『では、四年目のスタートとなる北海道アイドルはどうなのか』と言われれば、すっごく良かったです。


今回顔見せしたアイドルは二人組で、一人は元気で開放的な大地のの。
もう一人は引っ込み思案な文学少女、白樺リサ。
前に出てガンガン話を引っ張っていくののと、後ろに控えつつも事態を真剣に飲み込んでいくリサとの対比が、バディものとして凄く仕上がってる。
やっぱ『机叩く刑事と、カツ丼出す刑事』というバランスは、お話は回るしお互いのキャラは引き立つしで、人間二人用意する時は基本にして至高だな。

今回のお話の牽引役は確実にのので、リサは時に暴走する彼女を抑えつつ、あかりちゃんたちのアイドル活動を静かに受け止める立場。
一見アイドルに熱心なのはのののように見えて、ファンを超えた感動を受け取っているのはリサというラストの対比は、本当に良かった。
リサが静かに覚悟を決めることで、心の芯にズドンと届く初期衝動に説得力が生まれるし、そういうインパルスを生み出したルミナスのアイドルとしての『格』みたいのも、的確に描写できていた。

学園に入ってから出会ったルミナスの三人に対して、ののリサはいちご&あおいにも似た昔からの心友。
既にある程度関係が出来上がっていて、『アイドル』としての活動も村に収まる範囲でやっていた、安定した関係。
その穏やかさは、だだっ広く美しい北海道の風景を巧く使って、無言で主張させていた。

しかしルミナスという『アイドル』と出会ってしまったことで、『ののが前でリサが後ろ』という二人の関係は大きく変化するし、弾みだしたリサの気持ちはもう北海道の片田舎には収まっていない。
神崎美月がマスカレードに、星宮いちごが神崎美月に、大空あかりが星宮いちごに出会い、胸に収まりきらない衝動が弾みだしたように、白樺リサもルミナスに出会って、足を止めてはいられないアツいアイカツへの思いを抱いた。
この共通した構図は、『伝説の継承』ということを凄く重視してきたアイカツ四年目の出だしにとってもしっくり来る、素晴らしいスタートだと思います。

自分たちがやってる『アイドル』とは全く違うルミナスの『アイドル』に衝撃を受けて走りだしたリサですけども、同時に二つの『アイドル』の根本的な共通点をちゃんと言葉にしていたのも、始まりのエピソードとして優れている所。
クソ田舎の土まみれロコドルも、全国区のスーパーアイドルも、誰かを元気にして笑顔にするという根っこは一緒だし、規模や人数に関係なく、観客の笑顔は尊い。
あかりちゃん達がそれを言葉にしたからこそ、リサは『アイドル』への強いあこがれと同時に共感を抱いたはずだし、それが初期衝動をさらに加速させてもいる。
リサが決断に至るまでの心の動きを丁寧に画面に封じ込めたからこそ、ラストシーンの「私も、真剣にやってみたい……アツいアイドル活動、アイカツを!」という宣言が鮮烈に見えるわけです。


印象的なのはリサの決意を受けて意外そうな表情を見せたののも同じで、彼女はリサより元気に喜びつつ、あくまでファンとしてルミナスを見続けている。
自分が同じステージに上ることを考えもしないからこそ、簡単に握手もできるし、ワイワイ騒ぎもする。
リサが遠い『アイドル』を凄く間近なところに引き寄せていく物語を今回泳いだのとは対照的に、ののはファンとして身近に感じていたはずの『アイドル』との間にある距離を、リサが離れていくことで痛感する立場にいます。

芋を選別し畑で歌う、コンパクトで幸せな日々の中で、『ののが前でリサが後ろ』という間柄は自然と生まれてきたのだと思います。
それは15年間ずっと崩れることのない、北海道の大地のように安定した関係だったのでしょう。
しかしルミナスというアウトサイダーの襲撃を受け、リサはアイドルの稲妻に撃たれて走りだし、前に立つはずのののは置いて行かれる。
この位置変化のドラマは凄く鮮烈だし、この後ののが置いて行かれたままなのかという一抹の不安も煽る。
スパイスが効いているという意味でも、四年目の出だしに最適なお話だったなぁと感じます。

変化は安定を前景においてこそ強調されるわけで、やっぱり今回は、北海道の広大でのどかな風景をしっかり描いたことがよく効いている。
田舎をただの風景ではなく、物語的意味を強く付与されたキャラクターとして描写する方法論は、ちょっと"のんのんびより"に似てる気がしますね。
……そういや、ののの中の人れんちょんか……自転車にも乗ってたしな。(二期十話を思い出す度涙ぐむマン)


新入りをとても魅力的に描くことで、結果的に旧キャラたちも輝いていたのは、いい化学反応だったように思います。
のののミーハーな視線も、リサの控えめな憧れもどっしりと受け止め、まるで全国区のスーパーアイドルのように対応するルミナスの姿は、とても頼もしかった。
4年目が始まり、あかりジェネレーションもその総括が視界に入ってきた以上、成長に説得力を出すことはとても大事だと思います。
今回のルミナスの描き方は、『とにかく成長して、立派なアイドルになったから』という題目ではなく、ファンの感情のうねりを引き出し、人生をポジティブに変えていくアイドルとしての重力が巧く出ていて、とても魅力的でした。

ココらへんの描き方は凛&まどかを投入した時に踏み込みかけて、上手く貫通できなかったポイントだと思います。
今回は完全に白紙の状態からアイカツに飛び込んでくるののリサの描写が鮮烈であること、ユニットカップ(特にVSルミナスを前にしたガッツ路線)を経由したことで、ルミナスが持つアイドルとしての『強さ』に説得力が生まれていることから、かなりいい方向に転がっていくんじゃないでしょうか。
大物感や『格』を出すためには、早い段階で『仲間』というフラットな関係になっちゃうのはあんま良くないよね。
そういう意味では、ルミナスとののリサにはいい意味での『埋まらない距離』みたいなものを、上手く維持してほしいキモチ。

あかりちゃん達の立場が変わったのに合わせて、OP/EDも変化しました。
正統派アイドルアニメ主題歌って感じのOPも、元気なパーティーチューンのEDも、とってもグッド。
これまで物語を積み重ねてきたアイドルの『今』を切り取るOPアニメは、いかにもアニメのOPって感じの映像なのに奇妙なメランコリーを感じる。
つーかみくる、ソロでアイドル復帰があるのか……美月と1ONやって欲しい……。

新しいアイドルたちの胎動として、ルミナスが辿り着いた場所の描写として。
四年目の足場になる、とても優れたエピソードだったと思います。

新旧両方のアイドルにとっても『広がる世界』が、的確に表現されていたのではないでしょうか。
リサっぺに先行されたののがこの後、どういう反応を見せるのかが楽しみで仕方ないですね。