イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:第1話『鉄と血と』感想

ロボアニメの代名詞、サンライズの金看板、天下の"GUNDAM"を背負う新作、期待の第一話。
ビッグタイトル特有のハードルの高さとやっかみを受けて漕ぎだした形でしたが、中身の方は良い、スッゴク良い!!
適切に背景を説明しつつガンガン進む状況、パット見で判る人間関係、キャラクターとして立ってるロボットたち。
ワクワクとドキドキを詰め込んだ、素晴らしい第一話だったと思います。

いろいろと良いところがある新シリーズですが、まず良いのは主役たち。
伊藤悠の眼力のあるデザインを活かし、誰がどういう奴なのか初見でわかりやすいデザイン。
そしてその第一印象をいい意味で裏切る、キャラクターの転がし方。
期待通りのところに来るところと、期待を裏切ってストライクを取ってくるバランスが良くて、キャラを好きになれる出だしでした。
まさかビスケたんが超絶切れ者で、窮地を乗り切る策を全て出してくるとは……。(海のリハクッ面)

無骨ながら頼れるエース・三日月オーガス、苦境でも味方を鼓舞するカリスマ、オルガ・イツカ、そしておデブの切れ者参謀、ビスケット・グリフォン
個別のキャラが立っているのも良いんですが、各キャラの得意分野がはっきりしていて、出だしから組織として参番組が機能しているのが、見ていて気持ちよかったです。
少年兵としてそれなりに経験を積んでいる以上、鉄火場に巻き込まれてもギャーギャー騒がず、逆転のチャンスを狡猾に狙う姿勢は、なかなか魅力的でした。

親もいない、まともに文字が読めるのはビスケたんだけ、パイロットスーツも支給されないという悲惨な境遇の参番組。
しかし孤独故に支えあい、しかし同時に小さな見栄や対抗心などもちゃんとあって、なかなか良い描き方だったと思います。
『大人たちにイビられつつ、反目も交えた子供たちの絆で地獄に立ち向かっていく』という構図は、ガンダムというより"ロミオの青い空"っぽいなぁと思った。
人種国籍豊かな三番組と、ほぼ白人でまとめられたギャラルホルンの対比は、ハイブリッド雑種軍団VSエリート軍人という感じが良く出ていて、面白いところだ。
『銃と自分の体しか与えられなかった孤児』という参番組の描き方を見てると、『鉄血のオルフェンズ』っていうタイトルは、そのものズバリで良いタイトルだなぁ。

そんな社会のボトムズに飛び込んできた理想主義者のお姉ちゃんがヒロインなわけですが、こっちもバランスの良い書き方だったと思います。
世界を良く『してあげる』という善意は同時に、上から目線の傲慢でもある。
そこら辺の格差を三日月とのやり取りでコンパクトに見せつつ、それに感情的に対処するのではなく、まず自分を反省するスジの良さも感じ取れる。
イヤなやつ成分とイイ人成分を適度に配分した、魅力的なヒロインだと思います。
鉄火場でもパニックにならず、ビスケたんの誘導に素直に従い自分がやれることを探すところとか、健気かつ真面目でいい。
これからバッタバッタと人が死ぬんでしょうが、心のなかの光を消すことなく顔を上げていて欲しいと思います。


お話の展開としては、説明と活劇のハイブリッド加減がうまく行っていて、興奮しつつ世界観がするっと入り込んでくる仕上がり。
たった一話の中に火星と地球の関係、植民地としての火星の歪な現状、三番組の虐げられた現状、発掘兵器としてのガンダムの強さなどなど、いろんなことが盛り込まれている。
その上で、キャラクターどうしの感情のやり取りもちゃんとあり、虐げられたモノの逆転のドラマも埋め込まれ、さらにはかっちょいいロボアクションまで入っている。
これだけ盛り込んでしっかり食べ切れるお話にまとめてくれているのは、とっても有り難いです。

第一話で印象的だったのは、三番組が歩織り込まれているサビとホコリまみれの地の底と、お嬢の綺麗なお家、そして清潔極まるギャラルホルンの『正義の軍隊』っぷりの対比でした。
地球と火星、火星と火星の間にある格差こそが主人公たちを苦境に追い込む原因なわけで、それを説明ではなく絵のパワーによる説得で見せてくれるのは、世界を手際よく飲み込む上ですっごく大事。
おそらくメキシコあたりの風景を参考にしたであろう、乾いて汚れた三番組の世界はしかし、奇妙な反骨の生命力に満ち溢れていて、彼らが敵対する圧制者達の世界よりも、魅力的に見えたりする。
そこら辺の加減がとっても良く出来ていて、世界を目で感じられるのは大事だなぁと思いました。

子供をイビるイヤーな大人たちが、オルガとビスケの知略で一杯食わされる流れが、爽快感があって良いですね。
やっぱり『負け犬たちのワンスアゲイン』は物語類型として凄く強力で、地の果てでなお虐げられている子供たちが耐えて耐えて、自分たちに出来ることを全てやった上で、囮を囮にする知略、ガンダムというブレイクスルーを手に入れるまでを一話にまとめたことが、満足感に強く繋がっていると思います。
徹底的に大人サイドをゴミクズ以下の我利我利亡者として描いたおかげで、囮にされてぶっ殺されても当然というふうに思えるのは、なかなかありがたい。
同時に子供に優しいオジサンもメカニックとして配置されていて、単純な『大人VS子供』にはしていないのも良い。

子供たちが半裸でポンコツロボに乗り込む絵面は、腐女子受けだの媚だの以前に、奴隷闘士としての悲惨さと矜持を感じました。
全てを奪われている現状を説明するのに、素裸で鉄の棺桶に乗る絵面以上に説得力があるものはないし、服を奪われている状況に文句を言うでもなく、むしろ胸を張って死地に赴く少年たちの潔さは、スカッとするものがありました。
その爽やかさはクソみたいな収奪構造の産物なので、お嬢と協力してひっくり返してほしいものでもありますけどね。
彼らが半裸の奴隷であることを止め、パイロットスーツを着る瞬間があれば多分、僕達強いカタルシスを感じるんじゃないかなぁ。


そしてガンダムでありロボットアニメである以上、メカニックや技術的ギミックはキャラクターと同じくらい、もしくはそれ以上に大事な要素です。
埃臭い世界観に沿うように徹底的に小さく描かれたモビルワーカーと、発掘超兵器であるMS、それをさらに超える切り札ガンダムという食物連鎖は、とても鋭く機能していました。
三種類のメカニックが持つ『強さのサイズ差』が絵的な説得力を持っているからこそ、ラストでガンダムバルバドスが横殴りを決めた瞬間の爽快感が生まれるわけで。
そしてMSに蹴り飛ばされて木っ端と消えるモビルワーカーですらも、三番組の少年にとっては憧れの対象ってのが、どうにもやりきれねぇ……。

殺陣に関しても、ギャラルホルンの物量で押しつぶす戦術と、三日月&昭弘のWエースが見せた混戦の対比が切れ味鋭かったです。
物量に追いつめられつつも指揮を続けるオルガの姿勢や、『メイスで押しつぶす』というインパクトの有るバルバドスの戦闘法もグッド。
仲間が死んでも取り乱すことはなく、しかし痛みを感じはする三番組の姿も相まって、ロボットの中の人間がよく見えるアクションだったと思います。

他にもトンチキ通信制限やら、基地のエネルギー炉として活用できてしまうバルバドスの大出力とか、細かいギミックの魅せ方も良かった。
ロボットという『鉄』の魅力と、人間ドラマの絡み合いという『血』の魅力が両方あって、まさに『鉄血のオルフェンズ』に恥じない扱いだったなぁ。
今後敵さんのトンチキガンダムが大暴れするっぽいので、そっち方面も期待。

というわけで、24分間にドラマと情報がみっしり詰まった、満足度爆発の第一話でした。
子供たちがみんな兵士であり、同時に子供でもある描き方が魅力的で、同時に痛ましくてよかった。
『鉄』も『血』も知らないクーデリアお嬢もただのポンコツではない魅力を放っていたので、衝突や対立を経て仲良くなっていってほしいものです。
キャラとしてはビスケたんとオルガ、お嬢、カッサバのオジサンあたりが特に好きだなぁ。
2015年の新たなるガンダム、すっげー面白いぞ!