イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ゆるゆり さん☆ハイ!:第3話『自覚無し』感想


傷を負えば血の代わりに幸福が噴き出してくるような、ハッピーハードコア中学生ライフの第三話。
生徒会と娯楽部、それぞれの緩やかなスケッチと、ちなつ姉によるスーパー褒め殺しタイムの二本立てでした。
今日も今日とて、ゆるやかな時間が過ぎていく。

流石に三期+OVA幾つかまで続いておりますと、キャラクターどうしの関係性というのもある程度以上固まってくるものです。
停止した時間の中を永遠にたゆたっているあの子たちは特に、己の激情を以って世界を先にすすめることを許されておりませんので、結構同じことの繰り返し気味になる。
そういう意味では、三期は名も無き先生やらメインキャラクターの姉妹やらを積極的に使って、結構掻き回しに行っている感じがあります。

今週で言えばちなつ姉をクッションにして、京子に対する信頼感を見せる二本目ラストの流れはとても良かった。
ちなつは色々と根性汚いところもありますが、ゆるゆりの女の子らしいピュアネスをしっかり持っていて、見えない所で発散しているのだなぁと再確認できる、グッドナイスなエピソードでした。
いつものように調子に乗りつつ、ラストギリギリの線を超えない京子の目の良さも、巧く見せれていたと思う。


普段と別のアングルという意味では、綾乃の真似をする櫻子を追いかけることで、生徒会の穏やかな連帯感が見えたのも良かった。
ゆるゆりは恋の前風景といいますか、独占欲が発生する以前の麗しい友情が内破寸前で維持されている世界なわけで、メインカップリングを外して仲良くさせても、場が冷え込まない感じがあります。
アホ一歩手前まで行ってる櫻子の純真さを強調しつつ、悪気が一切ない綾乃への尊敬が感じ取れた今回のエピソードは、なかなか暖かい話だったなぁ。
脇道にそれつつ、何かと歳納京子を補給したがる綾乃だとか、アホの手綱を握っていたい向日葵の欲求だとか、メインの描写もしっかりしてたし。

娯楽部の方は軽快なBGMシャッフルを活かした部室コントを展開しつつ、生徒会と同じようにキャイキャイを繰り返す流れ。
三期は存在感のないあかりをいじるネタ(いわゆるアッカリーンネタ?)がほぼ見られず、逆に今回のツッコミラッシュのようなあかりを立てる見せ方が前面に出ていて、地味に変わったところの一つだなと思います。
自分はあかりの幼さや邪気のなさ、他人の幸せを願う心ってのはこの脆いユートピアを維持していく上で何よりも重要だと思っているので、そこを大事にしてくれている三期の扱いは嬉しい。

ネタのヴェールに隠して、何かと結衣の所有物でありたがる歳納さんは、ホントに友達依存度高いなと思います。
娯楽部の人間関係において、部員たちは京子のリーダーシップや計画能力やら、有形無形の恩恵に預かる側なのですが、京子は『楽しい』という感情以外受け取らない、実は結構ワリを食ったポジションにあると思います。
京子は王様ぶっていながら、その実一番コミュニティ維持のために気を使い、みんなを引っ張り、積極的に道化ぶって奉仕する働き者です。

一見何の配慮もなく持続しているように見える娯楽部が、あかりの優しさだとか、ちなつの溢れる精神的エナジーだとか、結衣の落ち着きだとか、いろんな心配りの綱引きでなんとか成り立っている、結構危うい場所だということ。
これは全体的なトーンが落ち着き、活発さの裏にある感情の肌理が見えやすくなった三期で、とくに目立つようになった部分だと思います。
今回『蛇と私』というスケッチブックボケを矢継ぎ早に繰り出す京子と、そこに素早くツッコミを入れるあかりを見て、そんなことを考えました。

ゆるゆりゆるゆりである(例えば"大室家"ではない)以上、その脆さというのは堅牢に守られ続けられる虚栄の脆さでもあるのですが、同時にそこを描かなければゆるゆりが持っているかけがえのなさみたいなものを損なう、扱いの難しいものでもあります。
けしてたどり着くことは出来ないが、それ抜きでは世界を構成するルールが破綻してしまうという、
『亀に追いつけないアキレス』のような静止した青春。
ゆるゆり第三期の強さは、儚さと影を強調した色彩と劇映画的なBGMの使い方によって、破綻を暗示しつつも永遠に続く友愛の世界を、うまく映像にしているところじゃないでしょうかね。
そんなことを考える、いつものゆるゆり第三話でした。