もしくは、灰かぶりノスタルジア
かくして、アイドルマスターシンデレラガールズのアニメも終わりました。終わって初めて見えてくる景色というものがあるわけで、今回の日記では、過去の日記における『○○じゃないかなあ』『○○だったら良いなぁ』という意見をピックアップし、それが叶ったのか、叶ったとしたらどうかなったのか、色々見ていこうと思います。せっかく感想日記書いているわけだし、こういう形で過去資源を活かすのも悪くないのかな、位の蛇足企画。
見返しながら『そんなこともあったねぇ』『いろいろ見当違いなこと言ってるねぇ』くらいに懐かしく思ってくれれば、望外の幸せであります。
早速第一話から見ていきましょう。
第一話
『このアニメは何をするのか』をアバンだけで感覚させる出だし。 『何者でもない存在が何者かになる』という物語類型(シンデレラ・ストーリーと言っていいかもしれない)の、基本的で圧倒的なパワー。 アバンだけで物語の骨格を強く感じられる、素晴らしい出だしだと思います。 これから登場人物たちが追いかけるであろう"夢"の具体的な形として、キラキラしてパワフルで美しいステージをしっかり見せたのも、目標がハッキリ見える演出でグッド。
アイドルマスターシンデレラガールズ 感想まとめ - イマワノキワ
第1話アバン、おねシンを歌うアイドルたちと未だアイドルになっていない女の子たちとの対比は、未来を予感させるのが巧いこのアニメでも白眉の演出。最終話で帰ってくる場所でもあるので、印象的に見せられたのはとても良かったと思います。
振り返ってみればこのお話は『何者でもない存在が何者かになる』以外の何者でもなかったわけで、そういうのを予感させられるシーンが頭にあるってのは、やっぱ巧く行ってるよね。CP一期を解散させた上で、『これから登場人物たちが追いかけるであろう"夢"の具体的な形として、キラキラしてパワフルで美しいステージ』に帰還させて終わらせるところも、始まりと終わりがくっついている良い終わり方だと思う。
『顔も名前もない存在が、何がしかになる』物語を駆け登っていくためのガラスの靴は、第一話の段階でその存在を明示されているわけです。
アイドルマスターシンデレラガールズ 感想まとめ - イマワノキワ
しまむーの笑顔は凛ちゃんが僕らの代理としてお話しの中に飛び込んでいく起因であるため、そこに強く共感できるか否かがお話全体に飛び込めるかに直結する、むっちゃ勝負のカット。あそこを超キラキラに描けた時点で、二割くらいは勝っていたんじゃなかろうか。
二期終盤たっぷり使って引っ張り上げられた島村さんの笑顔に対して、渋谷の笑顔はまだ主題にはなっていない。そこら辺、ほんとお願いしますスタッフさん。
このコール&レスポンスを見ていると、島村さんの気持ちを渋谷さんが支える瞬間も、必ずやってくるんだろうなと思えて期待が高まります。
アイドルマスターシンデレラガールズ 感想まとめ - イマワノキワ
折れかけた島村さんをギリギリん所で拾ったのはむしろ本田な気もするが、渋谷さんの身勝手なインパルスが自分を思っての発言だということを島村さんはしっかり解っていたので、「誤魔化さないでよ!」は『島村さんの気持ちを渋谷さんが支える瞬間』にカウントして良かろう。ホント渋谷なー、島村好き過ぎて頭おかしいからな。
ああ、俺もさ(狂人スマイル)。
表に立つ存在も、影で支える存在も、ともに偉大だと描いてくれればこそ、シンデレラ・ストーリーはシンデレラ・ストーリー足り得ると、僕は思います。
アイドルマスターシンデレラガールズ 感想まとめ - イマワノキワ
Pちゃんは影の存在というよりは、15人目のアイドルッ面で尺貰っていたので、扱いがなかなか難しい発言。
出しゃばり過ぎず、影響力がなさすぎず、シリーズ全体をコースアウトさせるほど目立たず、存在感が無くなるほど自分の物語を捨てずという危ういバランスは、最後まで維持しきって終わったと思う。
個人的な妄想を吐いておくと、『現在の笑顔』島村卯月、『未来の笑顔』渋谷凛と並べられているのなら、『過去の笑顔』はプロデューサー担当なのかなぁとか考えます。
アイドルマスターシンデレラガールズ 感想まとめ - イマワノキワ
結局Pちゃんの過去物語は匂わせる程度に抑えられたけども、アイドルの出番を考えるとそれで正解よね。
『笑顔』の物語はあくまで島村卯月一本に絞られて、かつて巧く出来た笑顔を見失い、もう一度取り戻すという時間的運動が、彼女のエピソードの中にはあったと思う。この段階で後の崩壊を見越して『しまむースマイルマジ天使』という印象を脳みそに焼き付けてくる辺り、ホント性格悪くて計算高くてサイコー。
きっと、顔も名前もない存在だった彼女たちは、これから先展開される物語の中で様々な苦難と喜びを経験し、(それこそアバンで踊っていたシンデレラたちのように)顔と名前を手に入れていくのでしょう。 それは力強い物語ですし、この期待は多分裏切られない。
アイドルマスターシンデレラガールズ 感想まとめ - イマワノキワ
はい、裏切られませんでした。
島村さんは何も考えず浮かべている笑顔が素敵な女の子ではなく、足踏みもすればネガティブなことも考える、つくづく普通の女の子として描写されてんだなと。 そういう子が躊躇いや怖気を踏み越えて笑っているからこそ、彼女の笑顔には力と意味があるんじゃなかろうか。
アイドルマスターシンデレラガールズ 感想まとめ - イマワノキワ
島村さん周りの描写はトラップだらけで、なまじっか頼りになるからずっと大丈夫と思っていたという、本田の気持ちとおなじになるよう巧妙にいろいろ隠されてた。のだが、第1話の段階で島村さんを天使として描いていない以上、それは裏切りではなく巧妙な誘導の結果というのが、このアニメのズルいところだ。逆に言えば、第一話の段階でそういうマスクをかけているのならば、いつか炸裂する爆弾なんだろうなぁと防御姿勢を取っているのが透けて見える記述。
コバヤシくん、ほんとしまむー好きな。
第2話
アイドルとして経験を積んで、お城やお姫様憧れるだけではなく、足をつけて環境を使いこなすようになった三人は、将来見れるでしょう。
アニメ感想日記 15/01/17 - イマワノキワ
はい、しっかり見れました。ここでのうわっついた空気が、第3話の成功と第7話の失望の前風景になるわけで、とにかく二枚取り・三枚取りの演出がうまいアニメやね、ほんと。
輝くライトのしたで魅力を振りまくのはアイドル自身ですが、その魅力をどう引き出すか、そもそも何が魅力なのかを考える縁の下の力持ちという、プロデューサーの職分がしっかり描写されているのは、職業ドラマとしても今後に期待できる演出。
アニメ感想日記 15/01/17 - イマワノキワ
アイドル推しのドラマではあったんだけど、あの子達誰ひとりとしてPちゃん抜きで最終到達点までいけてはいないわけで、プロデューサーのかけがえのなさと言うのはよくかけていたと思う。職業ドラマとしてみると組織デカすぎ綺羅びやかすぎでやっぱりファンタジーなんだけど、そこは解ってて切り捨てた部分だし、ファンタジーながら役割分担の意味合いや『それっぽさ』は良くでていたように思う。
一話で『夢に出会うこと』、二話で『夢に飛び込むこと』を描いたシンデレラガールズが、『夢を叶えるために、しなければいけないこと』をどう描くのか。
アニメ感想日記 15/01/17 - イマワノキワ
と、第2話を見た当時では一種の『成功例』として使うと思っていた第3話が、第6話で仇になってくる構成はこちらの予想を遥かに飛び越えた、巧い作りだなぁと今でも思う。NG(というか本田未央)を軸に据えた一期のメインストーリーは本当に視聴者の上げ下げが良く考えられていて、手のひらの上でコロコロ転がされてたんだねというのがよく分かる。コロコロされるの、すんごく楽しい。
ED絵の甘え方と受け止め方がパーフェクトすぎて、この二人軸のエピソード早くお願いしますって感じだ。
アニメ感想日記 15/01/17 - イマワノキワ
『第18話まで我慢してろ!この萌えブタ!!』としか言い様がない願望だが、ぶら下がり杏ちゃんの描写はこの後、かなりの濃度で供給されることになる。
褒められて赤くなってる多田さんとか、何かというと目線を左右に振ってクローバーをいじる緒方さんとか、今後お話を広げていく足場になりそうな要素がみっしり詰まってたのも、俺の血圧を上げる重要なポイントであります
アニメ感想日記 15/01/17 - イマワノキワ
にわかロッカー多田の美味しいポインツは第11話、智絵里に関しては第9話でホップ、第12話でステップ、第18話でジャンプと、かなりのロングスパンでかなえられることになる願望。この段階ですでに、緒方のウジウジした態度がどっかでブレイクすることを望んでいたのね、僕は。
第3話
ステージという非日常空間でも、本田さんが頑張って身にまとう『いつも元気な本田未央』を出せるようになったら、それはとても素敵な成長であり、その日は必ず来るだろうなぁと期待もしております。
アニメ感想日記 15/01/24 - イマワノキワ
これは第6-7話での大幅下げ、第12話での小さな迷走を踏まえて、二期でフル回転する部分。とくに島村さんがドン下がりした時の本田の人格強者っぷりはあまりにも頼もしく、何度本田にありがとうと言いながら本編視聴してたか判んないレベル。
最終話の『流れ星キセキ』前の軽口で、『いつも笑顔の本田未央』は完成に至った印象がありますな。
怒涛の後半で忘れられがちだと思いますが、今後の展開のためにタネを巻きまくっているのもこの回の見どころでして、渋谷さんの歌が初披露されるシーンは。サラッと流しつつ『いいか覚えとけよ、今後歌で話広げるかんな!!』という宣言と見た
アニメ感想日記 15/01/24 - イマワノキワ
これを再利用したのは二期になって、TPとの交流が増えてからですね。ここで強調された『NGの修行時代』の絵を、美嘉のポジションに立場を変えつつ『TPの修行自体』と重ねあわせる見せ方。今になって思うと、『お歌が巧い』という描写というよりも、『インパルスがピピっと走ったら、物怖じせずに前に出れるヤツ』という描写だったんだろうなぁ。
こういう人が雑草根性を見せ報われる展開大好きなので、前川さんの個別エピソード、早く見たいなぁ。
アニメ感想日記 15/01/24 - イマワノキワ
次の次の話でその女メイン張るし、『凡人の主張』が必要な側面ではとにかくカメラに映りまくる、超美味しい立ち位置ですよ!!(未来からの届かぬ声)実際、前川を凡人代表として印象づけたことで、CP全体の不公平感が巧く言語化出来たり、第16話でもう一人の凡人・ウサミン星人に広げたりと、使いでのある描写だった気がする。
『何行ってるのか分かり難いので、気持ちが伝わりにくい』という壁は、今週もワケワカンない言葉で喋ってた神崎さんと共通の問題だと思うので、早くあの子の言葉をメンバーが理解する話来て欲しいなぁ。
アニメ感想日記 15/01/24 - イマワノキワ
アーニャのロシア語は新田がソッコー張り付いたのもあってとくに問題なくクリアされたけど、蘭子の熊本弁は第8話、第12話、第13話、第21話と、蘭子が軸になる時は常に取り上げられ続けた。蘭子の言語は蘭子そのものであるので、安易に中二病を直させるのではなく、キャラを殺さないまま周囲が接近したり、蘭子がメンバーに近づいて行ったり、丁寧な扱いをしたのが良かったね。
周りが仲間の奮戦に興奮する中、特にリアクションのない杏ちゃんをいつ攻略するのか、マジ楽しみ。
アニメ感想日記 15/01/24 - イマワノキワ
この『周りがサイリウム振りまくりでNGを応援する中、やる気のない杏ちゃん』というシーンは、直接的には第22話で真逆の使い方で引用され、CPに馴染んだ杏ちゃんを強調する形になっている。やっぱりCIというユニットに入り、自分が面倒を見なきゃいけない子分二人がくっついたことで、杏の中のスイッチが入った感じがある。
とは言うものの、日々を過ごしていく中でじわじわ愛着を持っていく描写は隙間隙間で入っていて、分かりやすい形で発露したのが第9話というべきか。杏のやる気の無さよりも、杏の天才性により掛かり過ぎるCIが問題になって第18話に繋がるとは、この時欠片も予想していないのであった。
第4話
それが報われるのはしばらく先になるかもしれないけど、必ず報われて欲しいなと、僕は思っています。
アニメ感想日記 15/01/31 - イマワノキワ
"それ"ってのは前川の凡人性と、そこに賭ける意地なんだけど、次の話で騒動を引き起こし、*結成で仲間を手に入れ、ウサミン星人再起の鍵になるわけで、しっかり報われました。前川のみっともなさに関しては、けしてバカにすることなく丁寧に扱っていただいて、ほんとありがたい限り。
温かい世界が厳しい世界のスパイス(もしくはその逆)というわけではなく、相補的でどちらを欠くことも出来ない物語なのだというスタッフの認識は、第四話の構成から見て取れます。
アニメ感想日記 15/01/31 - イマワノキワ
結局最後まで、第4話で見せたシリアスネスと都合の良さのバランスというのは崩れず、相補的な関係は維持されたまま続いた気がします。僕は『誰得シリアス』って言葉が大嫌いでけして使わんよう心がけているわけですが、後の展開を見ると厳しい世界の描写、圧力とストレスのかかる展開がその後の成長に絶対必要になっており、不用意にシリアスな空気を弄ぶことは無かった。そういう所ちゃんとしてくれていたのは、キャラ萌え以上に大事でありがたいことだったと思います。
舞踏会の主役としてCDデビューした五人ではなく、壁の花にならざるを得ない『選ばれなかった人』にカメラが寄ることを思わせるタイトルです。
アニメ感想日記 15/01/31 - イマワノキワ
これを書いた当時、その『選ばれなかった人』の不器用な姿にガツンとやられ、普通を飛び越えた愛着を抱き始めるとは思いもしないのであった。
第5話
大人の世界のやり方を何も知らない壁の花達は、当然のことながら夢を突き返され、『このやり方では』夢が叶わないと思い知らされるわけですが、それは今現在のこと。 世界と自分を適応させる手段を学習し、衝動を現実に帰る方法を手に入れていくのが成長ならば、成長譚であるこのアニメにおいて、今回見せた夢はいつか必ず叶う、叶って欲しいと、強く思います。
アニメ感想日記 15/02/10 - イマワノキワ
既にいろんな人に指摘されてることですが、第5話のこのシーンで子供たちが書いた頑是ない夢は、第11話までで残らず叶っており、予感と期待作成の使い方がやっぱり巧いアニメだなぁなどと思う。みんなでワイワイとガキっぽい夢について盛り上がるこのシーンは凄く脆いシーンではあるのだけれども、お伽話である以上その脆さを守ってくださいという願いこそが話を見続ける重大な原動力なわけで、そういう柔らかい部分を徹底的にプロテクトし、実現させてくれたことが信頼感につながっていく。大事にするべきものをちゃんと大事にすることは、すっげー大事。
あらゆる状況で孤立してる子に声をかけまくり、穏当な解決策を提案し続けるきらりが、人格的な成長度という意味では一番大人なのかなぁ……。
アニメ感想日記 15/02/10 - イマワノキワ
きらりは確かに、常にCPの背中を支え続け、一番傷ついてるユニットを即座に補給していくホスピタリティの権化なのだけれども、『理想の母性』みてーなイメージが固定化しないよう、いいタイミングで崩すことがキャラクターの凸凹した質感を維持している。具体的に言えば第10話で優しさゆえに折れかけるところと、第12話で優しさゆえに折れかける所。優しすぎて世界を憎むことが一切できないきらりちゃんは、アイカツ世界だとあっという間にトップに上がる人材だと思います……とか一瞬思うが、きらりは世界の残酷さを『知らない』わけではなく、『知ってなお染まらない』女の子なわけで、やっぱ世界律全然ちげーわ。
その上で、前川みくがおそらくは無意識に触れた『愛されるものの条件』には、正面からの答えが出ていません。 これが今後扱われるのか、それともテクニカルに真っ向勝負を避けて進んでいくのかは、先の展開を見なければどうとも言えない所です。
アニメ感想日記 15/02/10 - イマワノキワ
この『愛されるものの条件』という問題は、二期になっての前川個別エピである第16話で、かなり真正面から扱われることになります。年齢詐称で経歴詐称、前川よりイタいキャラ付けのウサミン星人を真ん中に据え、無様さの中で本気であがいている彼女の光を描いた第16話は、単純に前川がでているからという以上に、第1エピソードでは掘りきれなかったテーマの再発掘という意味で、正しく第2エピソードなわけだな。
そして、物語を構成する上で非常に重要なピースをしっかり支えた、前川みくという偉大なる凡人には、掌が腫れ上がるまで拍手したいです。
アニメ感想日記 15/02/10 - イマワノキワ
コバヤシくん、前川好き過ぎ。
残りのメンバーも、早く戦闘服支給されねぇかな……。
アニメ感想日記 15/02/10 - イマワノキワ
ここから6-7話を挟んで壁の花共の躍進が始まるので、この期待が叶うのは結構先。第8話はプライベートの蘭子に接近していく話だし、第9話は晴れの舞台というには生臭い場所なので、第10話でPPPの衣装を着込んでファンの前に顔を出した凸レーションが、個人的に『来たッ……』という印象を受けた最初のタイミングだった。
でもやっぱり、第12話で一話○丸使って期待感を上げた上で、第13話の『Goin'!!!』でOP衣装を着込んだあのシーンが、ここでの期待感が最高に炸裂したシーンだったと思う。キャラ全員大事にしてくれたのは、アニメから入った腐れにわかのDDとしては非常に有り難いポイント。