イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

影鰐 -KAGEWANI-:第5話『深淵』感想

奇っ怪なる異形生物と人類の接触にまつわるアニメ、今回は『南極のニンゲン』ネタ。
最近は奇獣たちも人間の生息圏に近づいていましたが、今回の舞台になったのは南極の深海という極地。
お話自体は核心から少し遠のいたものの、番場先生の専門知識が直接奇獣対策に役に立つという展開もあり、面白い展開となりました。

やっぱりホラーとしての見せ方が巧いアニメで、ニンゲンとのサイズ差を活かした初見だとか、潜水艇の小さな窓であるとか、いかに視界を限定し心拍数を上げていくかをよく考えてくれています。
視界が狭まれば危機に対応する能力は低下するわけで、本能的に恐怖は増幅する。
毎回手を変え品を変え、舞台設定にあったやり方で狭い画面を実現する工夫は、このショートアニメにピリッとしたテイストを与えてくれていて、本当に素晴らしい。
潜水艇と奇獣のサイズ比の見せ方も、ハッタリが効いていて良かったです。デカいのは無条件に怖いね。

工夫は奇獣の設定にも見えて、今回のソナーにしても第2回の赤外線視界にしても、どうやら光学的視界に頼らないのが、奇獣の共通点のように思える。
これを利して危機を脱する流れが、良いカタルシスになっているわけです。(もちろん第3話みたいな『勝たない』お話もちゃんとあって、それはそれで負のカタルシスがある)
まともにやりあったんじゃ殺されるだけの怪物相手に、知恵と幸運でどう立ち向かうかというのが見どころでもあるので、視界という共通点から勝ちの足場を作る構造がちゃんと用意されているのは、シリーズとして良いと思います。

潜水艇の中という場所設定もいい具合に危機感を煽っていて、やっぱ閉鎖空間の作り方はホラーでは大事だなと確認。
『狭い・寒い・外でたら水』という三重苦があればこそ、奇獣に迫られる緊迫感も増すし、被害者の恐怖にもシンクロできるわけで、こういうところにピリッとした工夫があるのは、ショートアニメとしても、ホラーアニメとしても有り難い。
南極というロケーションを活かして『当たったら死ぬ』ってサイズの氷山を落とす所とか、危機感の煽り方が鋭かったですね。
しかし超ピンチ状態なのに冷静に潜水艇(初見)を操縦し切り、嫁さんを地上に返したヨシキはプロポーズ大成功だな……濡れるわ。

今回は番場先生の専門知識が良い方向に働き、奇獣から人命を守るヒロイックな活躍をしていました。
奇獣が物語の核心に近づくに連れ、望んでいたとおり番場先生の活躍も増えていくのは、欲しいところに欲しいタマが来ている感じで素晴らしい。
しかし南極海でスーツ一張とは、番場先生寒さ耐性凄いね。

そんなわけで、窮地とそこからの脱出に様々な工夫が見れる、サスペンス回となりました。
独特な表現方法ながらも、見せ方や話の組み立てを工夫し短い時間で盛り上げてくれる影鰐は、ショートアニメの一つの理想形かもしれん。
一回一回の話が面白いだけではなく、『番場先生の活躍』と『街に迫り来る奇獣』というシリーズ全体を貫く要素もちゃんとあるので、ロングスパンの見応えもあるし。
おもしれーなマジこのアニメ。