イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:第6話『彼等について』感想

ガチムチ☆きっす♪アニメ、今週は戦闘お休みでいろいろ解説回その二。
固有名詞の説明から鉄華団ボーイズの穏やかな日常、キャラクターの心情に至るまでいろいろ語る話だ。
戦いのない日々に見せるガキどもの年相応な顔はほんとうに心安らぐのだが、同時にそれがいつ消し飛んでもおかしくない過酷な世界なので、ほっこりしてばかりもいられない。
楽しいけど怖い、怖いけど見てしまう。
ぬうぅうう、鉄血のオルフェンズ、良いアニメだ……。

今回も世界設定をいろいろ喋っておりました。
単語だけでも『厄災戦』『ガンダム』『アリアドネ』『テイワズ』辺りを解説し、世界がこうなってしまった理由やら、そんな世界での政治的押し引きなど、情報てんこ盛り。
そんな回でも面白いのは、単純に世界設定自体が興味深いのと、カットの渡し会い(イザリビ←→ギャラルホルンで交互に、とか)をテンポよくやったり、楽しい鉄華団ボーイズの日常を見せながらやったり、いろいろ工夫してくれてるおかげだろうなぁ。
楽しく見れると情報も自然と入ってくるし、有り難い限りだ。

とはいうものの、自分の理解は『ガンダムが古代兵器でマジスゲェ』『世の中かなりぐちゃぐちゃになってて、色んな奴らが後ろからバッサリを狙ってる』『通信ややこしくなってる』くらいなので、偉そうなことは言えない。
そしてこのくらいの理解でもしっかりお話が伝わってくるわけで、もしかしたら十分な理解なのかもしれん。
いやね、ガキどもの日常がオモシロすぎて、設定語りあんま集中できんねん……。(言い訳マン爆誕)

設定関係の説明だけではなく、アバンで流れた『ギャラルホルンが鉄華団を追いかけない言い訳』のシーンがとても良かったです。
トドをエロ同人誌の被害者みたいな眼に合わせたおかげで、鉄華団の情報が的確に伝わるところ含めて、『お話しの都合』を通す流れがスムーズ。
キャラやら設定やらが注目されがち(そして注目されるに足りる魅力が確かにある)アニメなんですが、こういう地道な料理の上手さが僕は好きです。


そいでもって! 鉄華団ボーイズの楽しい日常がたくさん描かれてました。
一つの船に沢山ガキどもが乗り込み、大人は雪之丞オジサンしかいない中、飯をくったり整備をしたり文字を学んだり、慎ましやかながら人間らしい生活をしている姿は、見ているだけでなんだか楽しい。
どん底にいても自分を憐れまない少年たちの背筋の伸びた姿は、惨めなはずなんだけどとても眩しくて、オッサンの眼球を焼いてじわりと涙を滲ませてきます。
あんまりにもいい具合の日常っぷりに、『もうこのままなんかよく判んねぇけど火星の問題は片付いて、ガキどもはどう見ても日本じゃない日本で喫茶店開くでいいじゃん! チノちゃんと一緒に勉強とかラテアートとかしてりゃいいじゃん!!』とか思ってしまうわけですが、このアニメにつけられたご注文はうさぎじゃない哀しさ。
いやもうホント、今日をぽいっと投げ出さなくてすむ生活に、どうにかしてならんですかね……それ目指してお嬢とオルガは突っ走ってるんですかね、そうですかね……。

そんなガキどもの中に、飯と学習の二刀流で切り込んでいったクーデリアお嬢。
お嬢が戦うべきなのは圧政と無知なわけで、教育という要素をこの段階で入れてくれたのは、真摯さを感じてとっても良いです。
ただただ楽しそうに文字を学び、無邪気にお嬢になつくガキどもの姿を見ていると、お嬢も随分土に馴染んだなという安心感があります。
同時にミカの問いかけに迷わず是と答えたり、ガキどもが阿頼耶識を自慢する姿に複雑な顔をしたり、ただの教えて! クーデリア先生!! で終わらないところも強調されていた。
阿頼耶識自慢のシーンはまんまアフリカの少年兵がAK自慢しに来るドキュメンタリーであり、見ている俺の顔も曇った……幸せになってほしい、マジ。

それに対比するように、もしくは呼応するように描かれていたのは主人公三日月。
お嬢に冷たい、というかどうでもよさ気な態度を取りつつも、文字を学んで本を読みたいという欲望を前に出して逆さ文字を書く姿には、親しみを抱ける人間性が出ていました。
最初は冷血な戦争兵器と思わせておいて、ギャラルホルン組への対応で狼のように群れの仲間とそれ以外を分ける生き方の少年兵士なのだと、アトラへの態度で歳相応の穏やかな側面もあるのだと、段階を踏んで視聴者に分からせてくる見せ方は、なかなか面白い。
ミカは結構複雑な少年であり、その多層性を段階踏んで食わせる計画性は、このお話しの面白さの根っこに関わってくるポイントで、すっげーグッドだと思います。

ミカが複雑なように、もう一人の主人公オルガもまた複雑な人間性を持っている。
これまでも鉄火場で気丈に振る舞いつつ冷や汗が出ていたり、彼が決して無敵の軍神ではないということは示されていたわけですが、俺のビスケたんとの会話の中で三日月へのアンビバレントな感情が吹き出ていました。
三日月の真っ直ぐな目を誇りに思い、それに相応しい自分になろうと胸を張るポジティブな関係。
あまりにも真っ直ぐ過ぎる信頼を重荷に思い、生き急ぐように(このハードな世界だと『死に急ぐ』のほうが的確かもな)鉄華団を巻き込んで走る危うい側面。
色々なものを孕みつつ、オルガとミカの関係は動き出し、変化してきている。
これまでオルガ一本だったミカが『文字』という外界とコンタクトするメディアに強い興味を示し、それに部外者であるクーデリアが答えているところなど、非常に明確なる暗示といえるのではないでしょうか。
オルガの声が細谷さんだからか、力ちゃん声になった明彦に『たわけぇ。ミカ一人の目が怖くて仲間を裏切るよーな人間に、俺が負けるかよ。』って言われないか、今から心配です。(軽やかなうしとらのネタバレ)

鉄火場からカメラを外し、戦闘のテンポから日常の時間にBPMを落とすことで、各員の生き様を静かに語る時間が確保される。
ただショタ共の健気な整備風景や、明彦のガチムチ☆いっしょにトレーニングやらのサービスシーンを流すだけではなく、ストーリー展開に必要な要素を貪欲に拾いに行くお話の作りは非常に良かったです。
テンポを落とした結果、SF作品である以上用意しないとマズい、長尺でべらべら喋って設定トークのお時間も確保できるしね。
非常にグッドナイス。


今後の展開に関わりそうなところだと、『なんか火星のギャラルホルンたくさん死んだし、キャラ増やそうぜ』オーラとともに現れた木星マフィアが気になる。
チョコの人との追いかけっこだけだと話の燃料が尽きるわけで、ここで第三勢力登場!! はなかなか嬉しい展開。
火星や地球とは異なる文明圏の匂いを巧く漂わせてくれると、SF野郎としてはヨダレダラダラな感じでありますが、登場は少し先かな、来週は社長とドンパチっぽいし。

あと、露骨に怪しげなフラグを立てまくったフミタンも気になる。
ギャラルホルン謹製の回線クラックして通信しましょう。傍受? 暗号化されてるから全然OKですよ』という安心情報が、全てフミタンから出てて確認のしようがないのがマジやべぇ。
これでスパイじゃなかったら土下座ってレベルで怪しい人ですけども、一体どうなるんでしょうね。

そんな感じで、第二回! ペースを少し落として鉄華団構成員の内面とか色々見てみよう回でした。
俺はオルフェンズの戦闘してない回が好きで、ガキどものコンパクトな世界のコンパクトな幸せみたいなものが、すっげぇ大事にされてる感じを受け取るのです。
それは飯のシーンを疎かにせず、『良いか! こいつらは喰うぞ、お前らとおんなじように喰うんだぞ!!』という迫力のあるメッセージが、アニメに埋め込まれているせいかもしれん。
そんな風に喰ったり学んだりしているガキどもが『♪(ポーンピローン ポロローンピローン ヘェヘェヘーイ ドドンドン!)オールフェンズ 涙ァ♪』というMISIAのいい声とともにいつ散華してもおかしくないアニメ、鉄血のオルフェンズ。
来週もまた、怖くて楽しみですね。
……"オルフェンズの涙"、良い曲だよなぁマジ。