イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:第7話『いさなとり』感想

ガキどもが希望と絶望を鉄の巨人でキャッチボールするアニメ、七話目は木星ヤクザと派手にドンパチ。
鉄華団の在り方を確認する舌戦、組織力が試される艦隊戦、木星圏の特色を活かした速いMSとの空間戦闘と、色んな戦いが展開されました。
連戦の疲弊もあって第1話以来の苦戦となりましたが、敵の腹に飛び込んだオルガが交渉戦に持ち込んだおかげでなんとか水入り。
昭弘に死亡フラグが2.5本くらい立ったところで戦闘が止まったので、彼が好きな自分としては安心しましたよ。

今回相手取った木星マフィアは、政治的信条も差別意識も薄い鉄華団の同業者。
しかし銭と義理が絡めば敵対もするわけで、意見が対立して戦闘となってしまいました。
イデオロギーの縛り緩めに、自由気ままにやっているという意味では鉄華団の先輩みたいなもんなんだけどねぇ。
だからこそ、ボーディングからの交渉で休戦にもなったわけだけども、ここら辺の柔軟性は経済活動を重視するオルフェンズらしい流れだと思う。
ゼニとスジが通りさえすれば、敵も味方になるシビアな清潔さといいますか。

前回重度のミカコン(三日月コンプレックス)であることを暴露していたオルガですが、今回突っぱねたのは『(ミカがなんか面白いことしろって言ってる……そういう目をしてるッ!)』っていう強迫観念だけではなく、組織の長としての舵取りが関係している気がする。
弾除けの少年兵として筋の通らない世界にいたオルガとしては、わざわざクーデターぶっこんで組織を手に入れ、ようやく一旗揚げられる状態になったのに『筋が通らない』ことをするのは、承服しかねるところなのでしょう。
道徳的に認められた行動でなくとも、自分が納得できる正義を最優先に動き、我意を通すこと。
オルガにとってはそれが第一であり、その範疇に仲間の命やお嬢の依頼も入っていて譲れないという感じがします。
タービンとの第一次交渉が決裂したのも、オルガのスジとタービンのスジが相容れないものだったからでしょう。(第二次交渉がまとまったのは、マルバがガキを使い潰す外道だと分かったのでタービンの方のスジが方向を変えた結果かな?)

熱い思いを無軌道に迸らせるだけではなく、命がけの戦闘に部下を飛び込ませるための組織掌握に才を見せたり、高速すれ違いざまのボーディングという博打を成功させ、共倒れの危機を乗り越えたり、やっぱりオルガには才がある。
ユージンに操縦を任せてノセたところとか、人心掌握の手本を見るような動きでした。
スジと相反する利の部分は、実践的で頭の切れるビスケットが抑えてくれるわけで、組織としての鉄華団は情熱と現実性のバランスが良いように思います。
まぁ頭が無茶苦茶し続けるので、ビスケたんの胃は今後もキリキリし続けると思いますが。


そんな頭を前線で守り続けるミカと昭弘にとって、今回の戦闘は見せ所。
女の子ばっかりのタービンズもキャラが立っていて、迫力あるロボット戦闘となっていました。
木星圏は火星と環境が違うので、速度と目重視でMSを設計し、それを活かした戦術も洗練されている』という設定を言葉にすることなく、ミカとラフタの戦闘の中で見せていたのは素晴らしい。
ラフタはえっちな身体にバーサーカーソウルを詰め込み、しかもなんか爽やかという面白い化学反応してるキャラで、面白いなぁと思います。
木星は男の数が少ないのか、はたまたタービン個人の解消なのか気になりますね、あのハーレムっぷりは。

やっぱ今回株を上げたのはド根性の遅滞戦闘を戦い抜いた昭弘でして、ライバルからの信頼にこたえる獅子奮迅の大活躍。
ヒューマンデブリとして使い潰される人生を諦めていた昭弘ですが、オルガという信頼できる頭、肩を並べて恥じるところのないミカという戦友を手に入れ、人生に希望を取り戻したわけです。
そんな男たちから信頼されるということは、彼の短い人生の中で体験したことのなかった幸福であり、それに答えようと奮闘する姿は鉄華団が持っている希望そのものでもある気がしました。
あまりに頑張りすぎて死ぬんじゃないかと、おじさん気が気じゃなかったよ。

ミカが阿頼耶識3つ+ガンダム+漆黒の殺意で色々ブーストされてる中、ガチムチボディと純真ハートくらいしか売りがない昭弘は、やや置いて行かれがち。
しかしだからこそ、気持ちで戦況に食らいついて戦い続ける姿は輝いておりました。
ガッゴンガッゴン拳で殴るところとか、背負バズーカ展開して奇襲するところとか、殺陣も凝ってたなぁ。
その対手になったアミダ姉さんやアジーさんの株も上がるってのは、良い戦闘の素敵な副産物ですね。

オルフェンズの戦闘はダメージ表現が段階細かく描写できるところが良くて、『銃で打たれて少しヤバい』『ミサイルで撃たれてヤバい』『近接に持ち込まれてマジヤバい』と、武器によってヤバいレベルを切り替えられる。
コレによりある種のHP性といいますか、ある程度撃たれて緊迫感を出しつつ一発では死なない見せ場づくりと、近接一本でぶっ壊す爽快感、ボロボロになりながらの泥臭い戦闘を並列して表現できています。
ラミネートアーマーの設定を活かした戦闘描写は、設定のためにフィクションが奉仕するのではなく、設定を使いこなして見せ場を作るというフィクションの醍醐味をよく伝えてくれるので、とても好きです。

戦闘に絡むわけではないですが、お嬢とアトラも可愛いシーン多めでサービスしつつ、キメるところはキメてました。
一人ではスペーススーツの脱ぎ着も出来ないポンコツっぷりでポイント稼ぎつつ、鉄華団と旅をして変わりつつあるクーデリアの意思を強い目の描写で見せてくれて、お嬢好きにはたまらん回であった。
ボリュームのある髪の毛が無重力で暴れる様子とか、、鍋抑え用のゴムとかブリッジ収納ギミックとか、今回は細かい描写冴えていたなぁ。


というわけで、譲れない二つのスジがぶつかった末の戦闘、その果てにある二度目の交渉でありました。
今回鉄華団が捨て身でたどり着いた『殺さず話し合う』という勝利条件は、本質的には一番組に支払った退職金と同じように、オルガが貫きたい『正義』のラインにあるんだと思います。
その正しさも危うさも丁寧に描写されているアニメですが、今後少年たちは同じ方向を向いていられるのか、その『正義』にどんな壁が立ちふさがるのか。
期待が高まるお話でした。
いやー、面白いなぁ。