イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dance with Devils:第7話『幻想と純真のパ・ド・ドゥ』感想

情報握りこみまくりのムッツリと賑やかし大好きイケメン軍団でお送りするゴシック・サスペンス、今回は犬とDV。
糸の切れた風船のようにフラフラしまくるリツカが、思いの外腹黒で忠義者だったポメラニアンに拐かされ、むっつり黙りこむかいきなり興奮するかの二択にさらされ、色々惑う話だった。
父にせよ兄にせよ、ダンデヴィ世界にはDVが溢れまくっているな、マジ。

前々からチラホラ動きを見せていたポメラニアンは、ダンデヴィボーイズらしい根性のネジ曲がり方をした忠犬。
レムとリンドがとにかく自分の握っている情報を開放しないので、グリモワールの詳しいところとかペラペラ喋って、悪魔の誘惑までしてくれた。
リツカ個人に恋愛感情を持っている感じもないし、お話の流れをスムーズにする良い邪魔者だと思う。
面白いお歌も歌うしな……一列になって吠え猛るお犬様の絵面は、ちょっと面白すぎる。

おそらくアニメ版ダンデヴィは、レムとリンドがWフィアンセで他は賑やかし、という構図なのだと思う。(脇役攻略したければゲーム買ってね! という動線も引けるし)
過剰な情報の握りこみは、真相を暴露したり頑ななレムが心を開くことで、お話しのダイナミズムを作るためのタメ。
だとは思うのだが、レムがムッツリ過ぎて『リツカをどう思っているのか』『本当は何をしたいのか』がリツカに伝わりにくい(視聴者には結構バレバレなように描かれていて、そこの切り分けは巧い)ので、話が転んでいかない。
兄貴は処女厨のシスコン極めすぎていて他の男がリツカに触れば即バーサークだし、とにかくメイン二人が話し通じないのだ。
そこが素直になってしまえばあっという間にお話が終わるポイントでもあるので、このディスコミュニケーションは終盤まで死守しないといけない部分でもあるんだけど。(ココらへんの苛々をどう楽しく飲み込ませるかが腕の見せ所であり、トンチキイケメンが賑やかに暴れまわる楽しさを詰め込んだ中盤は、巧く状況をプールしつづけたと思う)
なので、賑やかしの他メンバーがガンガン情報を漏洩したり、『リツカ取っちゃうよ? ん? レムくん指くわえて見てるだけ?』と挑発したり、色々しなければいけないわけだ。

リツカの直情径行もその一貫であり、彼女が無責任にフラフラしないと事件にエンカウントできず、真相の一部も公開されず、自分もピンチになれない。
ココらへんのお話の都合をアズナとの『絶対に一人になんなよ漫才』に変えて一笑取ってくる当たり、計算高くて好きだ。
マジでコントだからなぁ、リツカの単独行動→情報入手→乙女のピンチコンボ。
それがあればこそ、色んなイケメンの顔立ちを紹介しつつ、細かく世界設定や事件の背景を公開し、視聴者に食える速度でネタが出てくる体制を維持できているわけだけども。


レムのムッツリはお話全体を支える屋台骨でもあり、魔界の王子のプライドを打ち捨て、策士としての陰謀を捨て去ってリツカに全部喋ってしまえば、この話は終わりである。
気位の高い王子が平民の娘への愛に素直になり、真実の自分自身を認める。
ロマンスとしては古典的かつオーソドックスな構造がこのお話を貫いているわけで、安易に出れず情報を握りこみまくるレムの動きは正しいし、それで物語が停滞しないよう色々事件を用意する脇役たちも必要なことをやっている。

真意の見えないムッツリレムに対し、リツカが疑念を掻き立てる今の動きもまた、オーソドックスなロマンスの構図を踏襲している。
疑えば疑うほど、悩めば悩むほどそれが開放された時のカタルシスは大きいわけで、ここらへんのタメを強くする意味でも、レムはそうそう簡単に素直にはなれない。
今回ポメがベラっベラとグリモワールの設定を喋っていたのも、レムがリツカを求める対外的な理由を強化するためであり、その裏に隠されたリツカ好き好き病が公開された時の気持ち良さを高めるための仕掛けでもあるわけだな。
戯れと焦らしが恋物語の本文であるとすれば、頼りがいのない王子様と直結ヒロインの組み合わせは非常に効果的なのだ。
チラホラ見せている『レムとリツカは実の兄弟』設定が本命なのかミスリードなのかによって、勝者と勝ち方は変わると思うけど。

こうして見てみると、リツカへの恋心を暴走させまくった結果顔に傷まで付けてしまったリンドが、ほぼ恋愛コースアウト状態にいることがわかる。
レムは(それこそストーリー進行に障りがあるほどに)恋心を隠しまくって、鬼札が表になる瞬間の威力でメインヒロインを掻っ攫う体制が出来上がっているけど、兄貴はリツカが好き過ぎて頭がおかしい人状態であり、その発露もリツカを傷つける荒々しいモノ。
恋心という伏せ札を公開しても視聴者は『うん、知ってたしピュアじゃないよねアンタの恋』となるだけだし、リツカとしても『嬉しい……ずっと待ってたのお兄ちゃん!』となるほど、このアニメシスプリしてない。
こっからのリカバリー次第だとは思うが、本命レムの当て馬以上の位置を掴むためには何かウルトラCが欲しいところである。
……本音言えば、メイジで良いんじゃね? とか思うがな。

というわけで、『言いたい言えないでも言いたい』状態が維持されつつ、お話がジリジリと転がる展開でした。
『調子に乗ってアズナを取り囲む悪魔三人→聖水で撃退→うわ アズナ つよい』とか、思わず笑ってしまうシーンをちゃんと入れてくれる当たり、サービス精神旺盛なアニメだと思う。
『すっげー真面目にやってるんだけど、結果としてネタの方向に転がっていく』力み方というのは、ダンデヴィ最大の魅力だと思うわけで、お話を巧く操りつつも楽しい部分を盛れるだけ盛ってくれるのは、見ている側としては嬉しいわけです。

個別エピも終わってお話を大きく動かすタイミングなのか、来週は舞踏会。
『○○と××の△△』というサブタイトル・ルールから離れた回なのを見ても、リツカとレム、リンドの三角関係に変化が起こる予感がします。
まーた兄貴の目が赤くなってメガバイオレンスが炸裂する流れでも良いんですが、DV被害にあった仲間として、むっつりレムが一皮むける姿がそろそろ見たいですな。
んーむ、楽しみだ。