イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スタミュ -高校星歌劇-:第8話感想

夏休みも終わり本格的に文化祭に向かって動くミュージカル青春アニメ、今回は題目決めと陰謀。
爽やかに自分らしさを貫き学園に風を起こしつつあるチーム鳳と、柊くん好き過ぎて頭がおかしい新キャラ暁くんが好対照なお話でした。
チーム鳳←鳳←柊←暁という男の欲望デイジーチェーンが、良く分かる回でしたね。

主人公であるチーム鳳は、度胸MAX人間星谷を筆頭にしてガンガン前に進む、気持ちの良い流れ。
プレッシャーを楽しみ、ウジウジした空気にならないのは星谷の前向きなキャラ性のおかげであり、ありがたい。
お披露目公演の破天荒な演技が大衆の支持を得て、負け犬どもがだんだん期待を集めていく描写は、このアニメらしい手堅い盛り上がりだ。
いかにも乙女ゲーなヴィジュアルをした綾薙学園が与える、『なんか凄いけど、風通し悪そう』という第一印象を活かして、主人公たちに改革者の役目を与えるのは巧いね。
ライバルであるチーム柊もコンパクトながら出番を作り、油断しない強敵オーラを維持してたのも良かった。

『改革者なら、生徒会って特権階級のパトロンいるのおかしくね?』って意見をうまく拾って、一回野に放たれるフラグをしっかり立てているのも良い。
野外ステージが『舞台としては貧弱だけど、当てればデカい』という賭けの場所であるという説明を、アバンでちゃんとやってる所とかね。
暁の暗躍もあってチーム鳳は一回スター枠の外に出そうだけども、そういう試練があればこそ、一発当てた時気持ち良いわけで。
『思う存分調子に乗って、思いっきり地べたに叩きつけられて、そこから高く飛ぶ』という上下運動をちゃんと予感させて、今後の展開への心構えを作らせるのは地味ながら大事だ。

チーム鳳の凸凹加減って本当に早い段階(大体4話)で解消しきっちゃってるんですが、彼らが持っている可愛げを細かく挿入して、安定した後の気持ち良さを届けてくれてるのも良い。
キャラの持ってる記号の膨らませ方というか、関係性が水平になっていくドラマではなく、水平になった後のスムーズなやり取りの気持ち良さを軸にするというか。
気持ちのいい連中が仲良くやっているのは、見ていて気持ちが良いもんですし、題目で色々揉める中キャラ性が出てくる展開は良いファンサービスだったなぁ。

毎週恒例のお歌ですが、星谷の前フリが良く聞いて、いい感じに感情の起伏とシンクロする出し方だと思う。
『笑顔がなくなっていた』と気づいて顔を上げる動きと、青空をフォーカスし前向きな歌詞のPVは相性が良かった。
お話と関係ない異世界のPVが問題なんじゃなくて、それが入り込むまでの流れの作り方が大事なのだな。
そこら辺のノウハウを放送しながら学習してきた感じがあって、ミュージカル的ではないけれどもスタミュ的という、独特な強みが生まれてきたかな。


爽やかな後輩チームに比べ、圧倒的な湿度で男の尻を追いかけ続ける先輩方。
未練タラタラで『僕達、どうしてこうなっちゃたんだろうね……』とか呟く柊先輩を、すげぇ熱視線で睨みつける暁という構図でした。
あまりに濃厚なホモの数珠つなぎに、俺は笑いが止まらなかったです。
やっぱ情念のあるキャラクター、シーンは良いなぁ、暁くん。

暁くんは『伝統』『伝統』うるさいですが、それが建前でしかなくて、柊くん好き過ぎ病をこじらせた結果鳳絶対殺すシンドロームを発症した、愛が重すぎる男。
森久保さんの絶妙に器の小さい演技も相まって、今後舞台を引っ掻き回しお話しの燃料を補キュする役として、期待の持てるキャラであります。
ホントなー、鳳さんへのつっかかり方とか、『学園の伝統がヤバいんだよ! 柊くんとイチャイチャするあいつが憎いってわけじゃないよ!! ホントの気持ちは秘密だよ!!!』と言わんばかりの柊さんへのアピールとか、良い中ボスだわぁ……。
確実に鳳×柊が燃え上がるための燃料系負け犬ではあるんだが、良い負け方をして欲しいと思える。

暁くんが『伝統』『伝統』うるさいおかげで、堅物メガネだと思われていた柊先輩がそこまで改革を憎んでいないのが強調されていたのは、嬉しい副産物です。
第6話辺りから先輩チームの物語もクローズアップされてきて、ただの意地悪メガネだと好感度が足らず、第二の主役を担うにはちと弱い。
ここで『このクソメガネ、鳳さんが好き過ぎて頭おかしいだけだー!!』と気付ける描写が増えてきたのは、非常に良いと思います。
柊さんはすんごいムッツリと愛情を胎内に溜め込み、いい塩梅に発酵させているキャラなので、鳳好き好き爆弾が破裂する瞬間が待ち遠しい。

今回はチーム鳳をワッショイすることで、後輩組と先輩組、両方が『改革』と『伝統』を背負って対立する構図がクッキリしました。
前回後輩組を仲良くさせたように、今回先輩組の複雑な事情をじっくり見せることで、『改革』OK『伝統』NOという単純な二元論から抜けているのも、なかなか良いですね。
重たく暗い先輩チームと、バカで明るい後輩チームを対比的に描くことで、『改革』と『伝統』が持ついろんな側面にも切り込んでいるし、
基本的には主役のサクセス・ストーリーなので、鳳さんが背負う『改革』がポジティブに捉えられるんだけど、柊さんが担当する『伝統』も悪いばっかりじゃないよ、という見え方もある。
『伝統』の看板を悪用している暁くんの処理の仕方で、ここら辺はさらに深みが出るかなぁ。

というわけで、文化祭という山場に向けて、的確に道を引いていく回でした。
桜会メンバーの掘り下げとかもあって、大人数をとても良く扱えている感じです。
俺は楪さんの鳥海胡散臭い外人っぷりが、非常に好きです……あの取っ掛かりのないスムーズな発音、やっぱ色気あるわ。
暁くんの暗躍で一波乱ありそうですが、それをどう乗り越えどう成長するのか。
メガネの鳳好き好き爆弾はどこまで大きくなって、どう破裂するのか。
とても楽しみです。