イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ゆるゆり さん☆ハイ:第10話『君とならいつまでも』感想

少女たちの瑞々しき季節の群像、今回は実質最終回な冬のごらく部。
一期二期も話数的最終回の前に、じっくりと一本時間を使って彼女たちの日々を掘り下げていましたが、三期目もその形式のようで。
あかりちゃんがどういうふうに女の子たちを繋いでいるか、京子がこの日々に何を見つめているのか。
どっしりと時間を使う丁寧な話運びの中で、『ゆるゆりらしさ』を改めて確認できるお話となりました。

前回出番がなかった反動か、今回はあかりちゃんが目立ちまくり。
『いい子』ってのは話の起因になりにくく、なかなか見せ場を作りにくいわけですが、あかりちゃんの善良さが誰をどのように救い、人々を繋げているかを真正面から捉えて、しっかり見せてくれる作りになってました。
誰にでも『大好き』というけれど、それが全部本気の『大好き』だというあかりの徳性は、雪かきをノータイムで手伝う姿で既に見える。
そこから結衣とキャイキャイし、京子とキャイキャイし、愛し愛されて生きるあかりちゃんのスタイルをたっぷり楽しませてくれました。
三期のあかりちゃん理解はとにかくジェントルで、見ていて有難すぎる。

後半京子の話にスイッチするので、回想シーンを入れて『京子がかつてどんな存在だったのか』というシーンを入れてくるのは、上手いブリッジのかけ方。
あかりが見せたカッコいい姿に憧れ影響を受けることで、内気で怯えた京子はまりちゃんにかまくらを作ってあげるような『かっこいい歳納京子』になったという、真心の受け渡しが見て取れました。
ここら辺の行動をあかりちゃんは一切の私心なくやって来たし、中学生になった今もやっているという自然さが、物語的空間の中では彼女を埋めてしまいがちってのは皮肉だ。
凄く大切なその自然さを愛おしく思い、それが生み出した影響を情感豊かに見せてくれる三期は本当に良いなぁ。


回想シーンで『内気で怯えがちな歳納京子』を、かまくら作成で『かっこいい歳納京子』を見せた上で、結衣離脱の予感に呆然とし、怯え、拗る現在の京子を描写したのは、過去と現在を繋ぐ京子の内面に踏み込んだ構成だったと思います。
『歯が抜ける夢』は去勢恐怖の現れであり、京子が頑張って獲得した『かっこいい歳納京子』というパーソナリティを、未だ信じきれていない証拠として演出されたのかな?
みんな楽しい娯楽部を維持するために道化を演じている京子の内側には、今でも泣き虫な子供が隠れていて、しかしそれを表に出さず付け髭装着して走りだす積極性も手に入れている。
そんな歳納京子の強がりはひどく無様で、大事で、かけがえなく綺麗なものです。
21分の時間を長く使い、雪のように彼女たちの生活への理解が積み重なっていく今回、歳納京子という女の子が14年の人生で手に入れたもの、変わらないもの両方を見せてくれるという心配りは、本当に素敵だ。

京子の強さと脆さを知っているからこそ、結衣さんも風邪で弱った京子に話を切り出せなかったと思うんですが、あえて焦らして京子に火をつけるDOLCE系女子の気配を少し感じる。
悩みすぎてエア京子する結衣さんも、退部の可能性に少しでも触れるなりフリーズする京子も、相互依存凄いですねッて感じだ……ありがたい……。
喪失の可能性を見せることで京子を不安にさせ、『なんてことない毎日が かけがえないの(アイカツED"カレンダーガール"より)』という真実を再確認させる作りは、10話話しを積んできたこの話数だからこそ、じわっと胸に迫るものがありました。
三期は迂回路や意外な要素の発掘もたくさんあったけど、シメに近いこのお話でしっかりごらく部にカメラを戻し、何でもなく維持されているように見えて、真心と愛情で毎日手入れされている日常を丁寧に見せてくれたのは、このお話で大事なものが何か確認させる最高のタイミングでした。

というわけで、動かない時の中で動いている少女たちの時間、過去から受け取ったものと未来に繋がって行く希望のお話でした。
まりちゃんをゲストキャラクターに選んだのも、そこから出発し頑張って今の中学生になった『かつてのごらく部メンバー』として、子供が大事だったからかな。
娯楽部の永遠に続く日常は時間から切り離されているわけではなく、女の子たちも停滞し腐敗していくわけではない。
時に揺らいだり迷ったりしながら、それでも楽しく生きていく日々の一部としてこのお話が出来上がっているのだと。
人工物ではなく瑞々しい少女の人生を切り取って、『ゆるゆりらしさ』が構築されているのだと。
しっかり見せ、感じさせ、楽しませてくれる、素晴らしいエピソードだったと思います。
ホントゆるゆり三期良い……素晴らしい。