イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ルパン三世:第11話『イタリアの夢 前編』感想

日本アニメの怪盗のイデアのお話もクール折り返し、初の前後編をフルメンバーでお送りします。
シリーズゲストとして話を引っ張ってくれたレベッカとニクスをメインに据えつつ、待ちに待ったルパン一味が全員集合する展開に胸躍る。
MI6の地下要塞を攻略したり、レベッカのモチベーションにルパンが本気になったり、色々あった前編でした。

今回のお話いろいろやっているのですが、話のコアは『仮初の嫁さんだったレベッカに、ルパンが本腰入れて対応する下準備』であります。
ルパンが視聴者に望まれるままルパンであるためには一種の遊戯性といいますか、何事にも本気になりきらない軽やかさが必要です。
それは非常にかっこ良いことなのですが、その態度のまま大きな話を展開させるとモチベーションがうわっ滑りしてお話が胸に届かないことがある。
無論あくまで軽やかに問題解決する軽快さは『ルパン』を見る時の大きな喜びですし、これが完全になくなってしまうほど本気になると『ちょっと違うかなぁ……』という印象を受けるとので、あくまで『レベッカの余裕の無さにほだされ、ルパンもある程度本腰を入れた態度で物語に向かう』という今回のバランスは、視聴者が見たいものをよく考えた味付けだったと思います。

今回レベッカが散々リョナられ、いつもの軽口を封印して本気で怒ったのは、レベッカの物語をルパンが自分の物語として引き寄せ、軽やかな態度を維持したまま解決に本気になるために必要な禊だったと言えるでしょう。
ルパンが持っている軽やかさをシリーズゲストであるレベッカは維持しきれず、今回無様にMI6に拉致られたり、ルパンの軽口を受け流せずに地金を見せたりしています。
余裕がなくなること、命がけであること、血を見せることはキャラクターの確信に迫る上でとても大事なことで、これを見せてしまうとキャラクターは一気に視聴者に接近し、お話しを進めていく要素を早いペースで消耗しはじめます。
もはや『ルパンらしさ』のアイコンとして自分自身の物語を語れないルパンに変わり、シリーズゲストであるレベッカがクール終わりの大きな話の軸に座るのは、当然といえば当然でしょう。

彼女が今回チラ見せしたキャラクターの核心、『イタリアの夢』は同時に暗号化された謎でもあり、レベッカの地金だけではなく、これを解読していくミステリもお話しのエンジンになります。
今回の話しがレベッカの本心を受け止めるための下準備だったように、ロブソンの巧い挑発でルパンは『イタリアの夢』解読になる。
『ルパンの妻』と『イタリアの夢』、二つの謎を解き真実を明らかにする物語は来週に持ち越しになります。
主人公が事件にモチベーションを抱くまで、じっくりと時間を使いスタイリッシュさを強調できるのは前後編の尺の長さ故ですね。


もう一人のシリーズゲスト、超人ニクスの地金は第7話『ザッピング・オペレーション』で見事に表現されており、ロブソンが家族を人質に取ってニクスが本気になるシーンも、これを前提にしたものです。
事前に説明を済ましてあるので、『今回のお話はレベッカのお話である』という軸をブラすことなく、ニクスの余裕を奪い魂の血を流させるシーンを、スムーズに展開させることが出来ます。
無敵のロボットのような『手強いライバル』としての側面を強調した第3話『生存率0.2%』から第7話に繋ぎ、ロボットの奥底にある家族への感情を楽しく実感させたうえで、今回の芳草に繫げるキャラ捌きは本当に見事だなぁと思います。
レベッカもそうなんだけど、2015は本当にシリーズゲストの扱い方が良い。

レベッカは地金を出すために無力なお姫様役を頑張る必要があるので、アクションシーンはニクスの担当です。
MI6のエージェントと格闘するシーンは大胆なパースと描線、うねりのある動きが一体となった面白い見せ場でした。
暴走することでルパン一味の脱出時間を稼いでくれたり、ニクスくんはお話に必要なこと沢山やってくれる優秀なキャラだなぁ。

ルパン・次元・五右衛門・不二子(ついでにとっつぁん)が全員一つのエピソードで顔を出すのは、2015になってからは第1話『ルパン三世の結婚』以来でして、賑やかで楽しい展開になりました。
間によくできたキャラ紹介を挟んだおかげでより期待度が上がり、『あのお話を見せてくれたアイツが、みんな集まるなんてスゲェぜ!』というワクワクがあったと思います。
あえてキャラが全員集合する話を絞り、切れ味鋭い短編をつなぎあわせて飢餓感を煽った成果が、今回よく出ていた気がする。
無論キャラエピや個別エピの完成度は凄くて満足できるんだけど、『やっぱ『ルパン一味』が見たいなぁ』という視聴者の欲望をしっかりコントロールしているのは、2015らしい構成の巧さだと思います。

今回のルパンは弱々しいレベッカ奥さんを受け止める大人の男なので、全体的に懐が深く落ち着いた演出が目立ちました。
手早く置き手紙の謎を攻略する姿、難攻不落のMI6要塞を内側から崩壊させる手際、逆鱗に触れられたニクスの憎悪を自分に集める小粋な嘘。
ルパンは色んな顔があるから面白いキャラクターだと思いますが、今回見せた冷静沈着で同時に優しい、『理想的な父親』としてのルパンは最も魅力的なルパン像の一つでしょう。
第8話『ホーンテッドホテルへようこそ』でもそうでしたが、無力で一生懸命な少女を見捨てられないルパンおじさんのお話は、やっぱり良い。

というわけで、レベッカが隠していた弱さを露わにし、それを守るべくルパンがダンディズムを発揮する仕込みの回でした。
ルパンが本気になるレールがスムーズに引かれていって、非常に心地よい話運びなのですが、ここまで地金を見せちゃうとレベッカのお話が次回で終わっちゃわないか心配。
前回も言いましたけど、シリーズ構成への貢献含めて僕はレベッカとても好きなので、彼女のクエストが完成したとしても出番が欲しいなぁ。
レベッカのお話が終わっちゃったら、第2クール何やるの?』という疑問がないわけじゃないけど、これまで見せたお話捌きを考えると、2015にその心配は無用だと思います。
ちょっとサイケデリックなお話になりそうな『イタリアの夢 後編』、凄く楽しみですね。