イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選

ひとのすなる企画を我もしてみんとてするなり。(流行ってて面白そうなので、僕もやります)

 

 ルール
・2015年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

 

アイドルマスターシンデレラガールズ 第1話『Who is in the pumpkin carriage?』

『顔も名前もない存在が、何がしかになる』物語を駆け登っていくためのガラスの靴は、第一話の段階でその存在を明示されているわけです。

アニメ感想日記 15/01/11 - イマワノキワ

たっぷりと字数を使って語るほどに、腰までつかったアニメからはその始まりを。終わりが始まりに繋がる『行きて帰りし物語』類型を完璧に達成しているというだけではなく、メタファーの配置によって世界を拡張していく映像文法、憧れが人生を残忍に変化させていくお話しの構図など、今後語られる全てがこの一話に詰まっていることが大きい。

ここで高まった期待値は全てかなえられる、幸せで稀有な第一話。 

 

・プリパラ:第37話『奇跡よ起これ!ミラクルライブ』

浮上の切っ掛けが観客の歌声というのは、らぁらを始めとする選ばれた存在の成長物語であると同時に、いろんな個性を持った子がそれを否定されることなく輝ける場所を描いてきた、このアニメらしい展開でした。

アニメ感想日記 15/03/23 - イマワノキワ

 プリパラ一期、機械の歌姫が死を経験し、人間に生まれ変わるまでのお話しのラスト。女児向けというオブラートに包むが故にあまりにも強烈に伝わってくる、ユニコンの喪失感や、『ファルルののん』を使いこなした叙情性の作りこみ、『みんなトモダチ、みんなアイドル』というテーマの達成感など、ラストエピソードに相応しい感慨があった。

無駄のないエピソード構成で見事に走り切った一年目に比べ、『女児アニ二年目の呪い』にズッパリハマって、なかなか軸を手に入れてなかったプリパラ二期ですが、ひびきを掘り下げていく流れの中で一年目の芯の強さを取り戻してきている印象です。今後が楽しみ。


・少年ハリウッド 第24話『まわりっぱなしの、この世界で』

正しいんだが、その正しさに少ハリは納得出来ない。 だから『ぼくらの七日間戦争』めいた劇場占拠を行い、今までの少年ハリウッドにアイドルとしてステージを捧げ、雨音の拍手をもらう。

アニメ感想日記 15/03/26 - イマワノキワ

 濃い目のキャラデザと巧みすぎる脚本捌きで、アイドルアニメの新時代を築いたアニメからは最終話二個前を。一期・二期を通じたお話しの最高潮は最終話のライブではなく、観客のいない、自分たちのためだけに行われたこの回のライブだったように思う。

暗闇の中のサイリウム、雨音の拍手といった道具立ての詩情も迸るし、前半のメリーゴーランドで少年たちの当惑と酩酊を体験させる見せ方の少ハリらしさは素晴らしい。ここで迷いとその決着を描いたことで、すべてが収まるところに収まるストーリーテリングの妙技を味わえる大事な回。ただの助走ではなく、常時最高速を出し続けるところが少ハリらしさだ。

 

ユリ熊嵐 第12話『ユリ熊嵐

そこを土台にして飛び立った多様な感想、その人なりの受け取り方というのは、たったひとつの真実によって叩き潰されるものではなく、一個一個がそれ自体貴重なものだと思うわけです。

アニメ感想日記 15/04/02 - イマワノキワ

寓話的でありながら非常に解りやすい、矛盾を超えた矛盾を完走した幾原邦彦の傑作アニメからは最終回を。少女たちの孤独と愛に真剣だったからこそ、あまりにも純粋な銀子と紅羽を旅立たせなかった終わり方には、寂しさと潔さがある。

その愛が何者かに受け継がれ、希望が育まれる続き方には優しさと哀しみがある。フェミニズムと童話を興味領域に持つ読み手としても、大満足のシリーズであった。 

 

・響け! ユーフォニアム:第7話『なきむしサキソフォン

『アリバイとしての部活動』という言葉の切れ味でこのアニメに前のめりになった身としては、葵ちゃんの退部は寂しくもあり、来るべきものが来たという気持ちもあり、これでよかったのだろうという諦念もあり、複雑な気持ちです。

アニメ感想日記 15/05/23 - イマワノキワ

持てるものと持たざるものが、学校と部活という檻の中でぶつかり合う群像劇からは、Not Geniusの回を。京アニ的な湿度の表現としてはこの次の八話がまさに白眉なのだが、シリーズ全体のテーマ性としてはこの回は圧倒的に重要である。

選ばれたものについて語るのであれば、選ばれないものを描かなければいけない。才能をテーマにするのであれば、非才を必ず扱わなければいけない。群像劇という形式を用いテーマを多角的に描く際、必要な誠実さを一つのエピソードにしたような、主役になれない負け犬たちの物語。控えめに言って素晴らしい。 

 

のんのんびよりりぴーと:第10話『すごく練習した』

いつか終わってしまう時間はしかし、終わってしまうことが決まっていても意味があるし、大切なものとして丁寧に扱わなければいけないんだというメッセージが、補助輪のない自転車とサイダー味のお菓子には詰まっていたように思います

のんのんびより りぴーと:第10話『すごく練習した』感想 - イマワノキワ

 僕の好きなジャンルである『なんてことない毎日がかけがいないの』系アニメからは、少女の挑戦とプライドを愛情たっぷりに描いたこのエピソードを選びます。

何事も無く流れる一見起伏のない時間を、いかに楽しく視聴者に見せるか。そのために必要な映像的魔術、情熱と真摯さ、愛情と夢がどれほど多大なのかを、エモーションたっぷりに描いてくれたお話だと思います。


放課後のプレアデス 第12話『渚にて

これまで僕達が見ていた彼女たちの冒険こそが、彼女たちが未来を生きていくためのかけがえの無い過去になったのだということは、その冒険に共感させてもらった僕たちは、どうしようもないほどに判っている。

アニメ感想日記 15/06/26 - イマワノキワ

 とんでもないSFマニアが、溢れるほどのSFうんちくを制御し切り、普遍的な成長の物語にまとめ上げたアニメーションからは最終話を。

少年と少女達の人生の決断を、宇宙と時空を飛び越えるスケールに拡大しつつも等身大に描ききっている規格の魔術が、全て集約するあの地球最初の午後。あまりにも美しいビジュアルの後に続く、いつかのアフタースクール。まさに完璧である。


アイカツ! 第147話『輝きのルミナス』

けっきょくひなきのパーソナリティを根本的には変化させず、小さな変化の予感に留める終わり方も、彼女が積み重ねてきた挫折と失望に敬意を払った、尊厳のあるまとめ方でしょう。

アイカツ!:第147話『輝きのルミナス』感想 - イマワノキワ

 来年3月末の終局に向けて加速し続ける、女児アニの金字塔からはこのお話を。新条ひなきというキャラクターはアイカツを内破させかねない危うさに満ちていながら、それ故アイカツが可能な限界点までテーマを掘り下げることを可能にする、物語的爆心地としての可能性がある。

それを極限化させ、アイカツ世界のスケールを二段階ほど大きくした意味で、このエピソードは確かに別格である。そこに、一人の賢すぎて周りが見えすぎて、自分が求めるものにけして辿り着けない危うい女の子への、尊敬と愛情がたっぷり詰まっていることも含めて。


・影鰐 -KAGEWANI-:第3話『帰還』

やっぱり叙情性というのは大事だ。

影鰐 -KAGEWANI-:第3話『帰還』感想 - イマワノキワ

ショートアニメの可能性を大きく広げた、今年一番の意欲作(韜晦なしにそう思う)からは第3話を。この話から大体の形が見え、このアニメーションが持っているポテンシャルと野心、それを実現するための過去作へのリスペクトと、自分がどういう武器を持っているかの冷静な分析が感じ取れるようになる。

救いがないんだけど物悲しく、美しいオチの付け方(あと番場先生の傍観者っぷり)も含めて、非常に完成度が高いエピソード。 

 


・Go! プリンセスプリキュア 第39話『夢の花ひらく時! 舞え、復活のプリンセス!』

そして、それを守りたいという強い思いがある。 僕の好きな歌のタイトルを借りるなら、"世界はそれを愛と呼ぶんだぜ"ということです。

Go! プリンセスプリキュア:第39話『夢の花ひらく時! 舞え、復活のプリンセス!』感想 - イマワノキワ

 一つの節目を迎えたプリキュアという文化コードが、今後どうあるべきなのかという批評的営為という側面も持つお話からは、主人公の蓄積が神話的高峰にまで達するこのお話を。『誰かの支えで夢を見れる』という手垢のついたテーマを、王子様自身による夢の否定で一回挫き、そこから伸び上がる決意の芽の高みを圧倒的なカタルシスで描いている。

重要なのは、この回のカタルシスはこの回だけでは絶対に達成できず、ここ二至るまでのはるかの物語、はるかが関わった物語(つまり物語の全て)が必要になるという、考えて見れば単純な事実だ。

プリキュアが持っている可能性は、プリキュア的なものを全て洗い直し、再配置して再話することでしか検証できないというメッセージが、ここに至るまでの真っ直ぐで捻りの聞いた物語からは伝わってくる。そのクレバーな王道がどこまで駆け抜けていくのか、後一ヶ月が楽しみである。

 

という感じで10話、選ばせていただきました。

他にもクラウズ5話とか、きんモザ10話とか、ミルホTD3話とか、コンレボ3話とか、スタミュ9話とか、候補は色々あったけどこんな感じで。

見返してみると、シリーズ全体としてのテーマ性、作品に赴く誠実さ、キャラクターが持つプライドへの尊重あたりが、作品を評価する重要な軸になっている気がする。見取り図がハッキリしているお話が好きなんだな、僕は。

来年も面白いアニメが見れると良いなぁと、心から思っております。

 

番外

ラブライブ!The School Idol Movie 

この映画、『ラブライブ!The School Idol Movie』は、まさに僕が感じていた不信感を、真っ向から打ち砕く映画でした。

ラブライブ! The School Idol Movie感想 - イマワノキワ

 趣旨からは反するけど、この映画の話しておかないとベストの話はできないので。ここまで巨大化し肥大化したコンテンツを、TVシリーズで語った物語の終わりを裏切ることなく、お話として終わらせること。

製作者の当惑も混乱も、希望も夢も愛情も素直に練り込んだ愚直な勝負は、無謀な賭けに勝ちに行ける立派な映画になった。これから先のμ'sがどうなるのか、今の段階ではわからないけども、彼女たちのスクール・アイドル・ライフはとても立派だった。歴史の教科書に乗るくらいに。