イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第78話『レッツ・ゴー!セレパラ!!』感想

衝撃の敗北から一週間、ひびきの起こした改革は綺羅びやかな地獄だった! というプリパラ新展開。
格差上等、選ばれたものしか存在を許されない枯渇した楽園には、プリパラの面影は全く無し。
うまい飯を出す監獄、輝く地獄の中で矜持を保っていたのは……という展開でした。

神の眼鏡を手に入れ自分の望む世界を実現したひびきですが、今回理想が現実化したことで、彼女の持つ問題点がクリアに見えてきました。
前回彼女の理想が持つ『理』を表面化させたカウンターとして、一見綺羅びやかで楽しい背ラパラを見せた後に、それが持っている悪しきポイントを見せる展開といえます。
享楽を貪り、自分を高め、隔意なく友と触れ合うプリパラがなくなってしまっても、それを惜しむ声が主人公たちからしか上がらないという描き方は、大衆のゴミっぷりで笑いを取ってきたプリパラらしい、皮肉の効いた描き方でした。

今回セレパラが見せていたのは、ひびきの言う『選ばれしもの』が結局のところひびき一人でしかないという、強烈な排他的エゴイズムでした。
ゴージャスなものが良い、テクニックがあることが良い、ランクが高いことが良い。
それはあくまでひびきの『好み』であって、物事の善悪や好悪を左右する価値観ではないはずなのですが、神にも等しい特権を手に入れた結果、ひびきの『好み』から外れた存在は即座に排除され、ステージに上ることも許されない。
そこに自分とは違う他者をそのまま認めることで、自分自身をより高い場所へ引っ張りあげていく前向きな運動はありません。
そこにあるのはただただ紫京院ひびきという個人の延長であり、永遠に拡大される孤独なエゴイズムが、今のセレパラを支配しているわけです。

自分一人が世界全てを埋め尽くせばいいという独善はみかんへの対応に如実に現れていて、みかんが好きな肉まんはセレパラでは存在を許されず、いかにもひびきが好みそうな、セレブで流行りなポップコーンを押し付けられます。
肉まんが好きなみかんをそのまま受け入れてくれるみかんと一緒にいるために、決別されるのも致し方なしな高慢さです。
自分の手を離れていったみかんを惜しむことなくBAKAフォルダに投げ捨て、コーデだけ略奪して恥じることがないひびきの姿は、先週見せた『理』を塗りつぶすほどの『理不尽』が浮き彫りにされていました。
今週のあろみか描写は核弾頭クラスの百合破壊力を持っており、『やっぱこの小学生カップルの湿度やべぇな……でもこのタイミングでトモダチ重視、マジありがたいな……』というアンビバレントな気持ちになった。


ひびきがカリスマであることは間違いがなく、彼女のエゴイズムが人を引き付ける重力を持っているということも、作中の満足気な大衆の姿から分かります。
おまけに世界全てを書き換えられる権力と暴力まで手中にあるとすれば、彼女を止めるものはなにもない。
でも『みんなトモダチ、みんなアイドル』というこれまでの理想を反転した世界は、凄く居心地が悪くて、独善と醜悪さが支配する地獄でした。

セレパラに漂う『理不尽』は誰かがひっくり返さなければいけないわけですが、ここで急先鋒を担ったのが毒吐き少女ドロシーなのは、意外であると同時に納得も出来る、良い描写でした。
安易に『いい子』にならず視聴者の代弁者的な役割を担ってきたドロシーには、性格が悪いが故の負けん気と逞しさ、『理不尽』が良くないものだとプロテストできる強さがあります。
ひびきの独善が拡大したセレパラは気持ち悪いし、ぶっ壊さなければいけないと声を大にして言い続けるドロシーの姿は、やっぱ頼もしかったです。

反対にみれいはすっかり心が折れていて、弱々しい姿を見ていると痛ましい気持ちになります。
自分が音頭を取って挑んだウィンドリ出、あれだけの大敗北を喫したのですから凹む気持ちも分かるけど、いつも頑張って無理してアイドルを続けてきたみれいが凹まされていると、本当にプリパラがセレパラに負けてしまった感じが漂ってきます。
まぁプリパラ≒みれいという図式を描くために、これまでほぼ主役と言って良い追い込まれ方をしてきたわけで、この共感は製作者の狙い通りなんでしょうけども。
凡人であることを自覚しながら努力し努力して負けたという事実が、みれいからいつもの空元気を出す余裕を奪っているようですが、追い込みはまだまだ続きそうです。
凹ませた分ドッカーンと大爆発するシーンが早く見たいんだけど、みれいが凹んでるとらぁらちゃんが優しいから、らぁみれ成分が補給されて俺の肌ツヤッツヤになるんだよな……。
悩ましい。

眼鏡を奪われたただのガイはすっかり落ちぶれてましたが、ひびきが達成したドラスティックな革命を見ていると、『実はめが兄はアイドルと少女が相当好きだったんじゃ……?』という
疑問が湧いてくる。
プリパラが『みんなトモダチ、みんなアイドル』な場所として維持されてたのは、めが兄が少女の可能性を奪わず、理想を押し付けず、多様性を重視して見守ってた結果なんだなぁと、奪われて初めて痛感する回でもあったわけです。
聞いてんのかグラ姉たちよー……今回、書き換え可能なシステムが人間の形をとっている歪さ、怖さが一気に吹き出た感じするな。
セレパラマジディストピアなので、スタイリッシュ・タフ・ガイの早い復帰を、心から願わざるを得ません。

というわけで、ひびきのエゴイズムの悪しき点を、セレパラを通して確認する回でした。
ドロシーやみかん、らぁらといったトリーズナー達はまだまだ元気ですが、腐った天才に一番本気のパンチをぶち込める凡人・みれいはへこんだまま。
来週更に追い込まれるっぽいですが、試練を乗り越え立ち上がり、凡人の意地を見せて欲しいものです。
うーむ、楽しみだ。