イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

DIMENSION W:第1話『回収屋』感想

"ダーカーザンブラック"のキャラデザ&シリーズ構成と、"うさぎドロップ"の監督がタッグでお送りするのは、別世界からのエネルギーが社会を変革させた後のバディストーリー。
主人公がアゴ髭オジサン、ヒロインが緑髪アンドロイドという『ウケんの、これ?』という外見ですが、裏街道を駆け抜けていく回収屋の仕事ぶりやら、なんだかとんでもないことになってる超技術コイルの謎やら、ぐいっと引き込まれる第一話でした。
OPが梅津泰臣、EDが江畑諒真っていう超リッチな座組だけでも、オジサン結構お腹いっぱいよ。

そもそも『超技術が一般化しつつも、人間の悪徳はなくならない近未来』という舞台設定だけで結構好みの話でして、そこを駆け抜けていくのが三白眼のアゴ髭オジサンと、訳ありドロイドのバディという主役設定で個人的ツボをズドンと押されている感じがします。
良い作画驚異的な体術と鉄串捌きを披露したキョーマおじさんは一見裏街道に慣れきったシビアなプロっぽく見えますが、ミラを二回も回収するときの言い訳っぷりを見るだに、なかなかの男ツンデレっぽい匂いがした。
『時代に抗う、オールドスクールな男』というハードボイルド主人公の定番を、コイル嫌いという作品独特の設定としっかり絡ませて見せていたのは、なかなか面白かったです。
ガソリンの税率が400%になっている世界と合わせてみることで、コイルによって世界がどれだけ変化したのか、良く分かるしね。

そんなオジサンの相棒になりそうなのがガイノイドのミラちゃんですが、主人公と同じく結構謎の多いヒロインでして、しかしお尻がキュートだってことと、ロボットなりに真剣に生きているってことはわかる。
細かい設定はおいおい説明してくれればいいわけですが、お話に乗っかる足場である主役たちがどういう人間かは、やっぱ出だしで見せてほしいわけです。
そういう意味で、人間に混じって暮らしつつ、製作者を守るべく走り回る健気な姿が見れたのは、とてもありがたい。
彼女とキョーマおじさんが走り回ることで、一見夢の未来世界ながら、暴力と不正が未だ残っている『コイルのある世界』もしっかり見れるわけで、そういうアクティブさが主役にあるのはとても良いと思います。

映像表現としてはジャンプカットや背景一色塗りの静止カットを多用し、独特の間を生む絵作りが面白かったです。
どういう効果を狙ってああいう演出を入れているかは読みきれませんが、なんとなくシャレオツな感じが出ていて、スタイリッシュな世界観とよくあっていたと思います。(唐突なアニメIQ低下)
後アレな、尻の表現への異常なコダワリな。
『とんでもないスケベが作画陣にいるぞ!』って感じであり、アクション含めて作画クオリティには期待できそうです。


そんな二人を結びつけているのはやっぱりコイルで、『すごい力を持っているが、マジろくでもない』ということを、博士を燃やし街をふっ飛ばすことでしっかり見せてくれたことも、お話しの軸を感じ取れて良かったです。
『あんだけ手酷いことになるんだったら、そら不正コイルは追いかけないとダメだよね』と納得できて、主人公たちがこれから辿る物語にある程度の納得が生まれるわけで、最初にヤバイ事件をしっかり起こすのは大事だなぁ。
水鉄砲のシーンを入れることで『不正コイルを使うとどういうパワーが手に入るか』も描写されていて、主人公たちがこれから歩く世界、立ち向かう脅威の大きさが伝わってくる第一話だったのは、非常に良かったと思います。

主人公たちだけではなく、脇役たちも濃い目で癖が強く、近未来裏街道モノに期待される『エグみ』がしっかりあったと思います。
『お前はGロボのシズマ博士か』とツッコみたくなるマッドっぷりを発揮して炎上した博士も、殺人事件を『行き違い』でスルーするアルベルトも、どっちも超ろくでもない気配がムンムンしていて、今後の展開に期待が持てますね。
『次元の壁を超えて、エネルギーを吸い上げる』という超技術を一企業が握りこんでいること、そこの走狗が人非人であること、創始者を追い出して乗っ取りが行われているっぽいことなどなど、NT社のロクデナシ力はほんとに高くて、『この薄汚い世界で、どんなロクデモナイことが起こるか見たいー!』という欲望を高めてくれますね。

パット見で感じた印象だと、『薄汚れた街を行く現代の騎士』というマーロウ類型に忠実な話だと思うので、世界が薄汚れていること、主人公が強くて人情味がありそうなこと、ヒロインに可愛げがあることって、凄く大事だと思うわけです。
そこら辺の期待感を十分に満たしてくれる展開・作画・アクションで第一話はみっしりしていて、安定感があって面白いと感じました。
やっぱ良いなぁ、超強いオジサンが冷徹を装いつつ、情に流されて女を助けちゃう話は……。

同時に類型をなぞるだけならジャンルのオリジナルを辿ればいいわけで、『コイル』という作品独自の設定が世界とキャラクターに深く関わっている独自性は、このアニメの強みだと思います。
キョーマおじさんの過去はさておき、ミラちゃんは製造者の出自と死因にコイルがガッチリ絡んでいるわけで、『回収屋』というコイルの闇を追いかける仕事に食らいつく理由がちゃんとあるわけで。
こういうふうに『キャラクターがお話の中にいる理由』『お話の主軸にキャラクターが食らいつく理由』が整理されて提示されると、お話を飲み込みやすくて助かるやな。


こうして出会ったおじさんとガイノイドですが、今後相棒として絆を深めていくのか。(この出会いで深めてくれなきゃ詐欺であるが)
薄汚い世界の悪徳と人情を、どういうエピソードで切り取ってきてくれるのか。
色々と期待が高まる、世界とキャラクター両方が見えてくる第一話でした。

オーソドックスな地力と独自性の活かし方、両方が際立っていて、安定と信頼を期待できる出だしなのは嬉しい。
ストリートバディものとしての気持ちの良い描写と、コイルの謎にまつわるフレッシュな描写、両方楽しみであります。
あと尻へのコダワリはぜひ持続させ、今後も良い尻描写を提供していただけると非常に助かりますな。