イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

NORN9 ノルン+ノネット:第3話『芽吹く春』感想

桃ノルン、黒ノルン、青ノルン!!
女主人公三人によるトロイカでお送りする、ソリッドシチュエーション能力ミステリも第3話。
襲撃に時をかける小学生と、序盤のイベントがだいたい終わったからか、落ち着いた感じの展開でした。
桃ノルンことこはる&メイン攻略対象駆くんのお話を進めつつ、青ノルンことナナミ・ニンジャ=サンとツンツンボーイ暁人くんのお話も先に進める感じか。
他にも黒ノルンこと深琴CHANG&サイガー声の幼馴染・朔也くんとの因縁とか、遠矢さんが世界のエージェントとコンタクトしてたりとか、群像劇ミステリらしく情報量の多い回でした。

記憶喪失の天然イヤボーン娘、こはるちゃんは駆くんにターゲットを絞り、ガリガリと好感度を稼ぐ動き。
秘密の公開がお話を先にすすめる燃料になる構造上、どんどん仲良くなって打ち明け話をしてもらうのは、深まった関係の表現としても大事なところだ。
親父がぶっ殺されたとか色々暗い過去があるようですが、こはるちゃん相手にはからかいつつも大事にしている感じで、そんなに面倒くさくない攻略キャラなのかなぁ。
いい人に見えても乙女ゲーな上にミステリなので、どんな核地雷が埋まってるか安心できない(偏見)ため、断言するのは危険だけど。

こはるはイノセントを鋳型に入れて煮出したような、ぽややんとした天然少女なので、あんま恋にドギマギしたり、ギスギスした状況で病んだりはしないのでしょう。
むしろこはるのキャラ性では担当できない角度から物語に切り込むために、わざわざ複数主人公にしている側面もあると思うので、思う存分ぽやぽや駆くんと仲良くし、クソヒッキーな千里ボーイを外に連れ出したりすると良いかと思います。
このお船に乗ってるボーイ、多かれ少なかれみんな面倒っぽいので、こはるのイノセンスが状況突破のカギになるシーンも多いだろうしな。
そう言うたかて、殺しにしか使えない炎の能力に悩み、桃に異常な執着を見せる辺り、こはるも良い感じに歪んではいるんだけどさ。


一方無口で影のあるダウナー主人公七海ちゃんは、メイン攻略対象とはマイナスからのスタート。
各キャラが真実のカードを伏せているこのアニメ、暁人くんが七海に憎悪を抱いている理由も未だ公開されておりませんが、そこは七海ちゃんと共有している所のようです。
核心の部分が隠されたまま上澄みだけが言動として出てきている状況ですが、色々推測できるようには作っていて、この不仲の原因は七海ちゃんが暁人から『何か』を奪った結果らしい、というのがまず見て取れる。
加えてそれを七海ちゃんが死んでもいいレベルで気に病んでいること、暁人くんは怒りに燃えつつも七海ちゃんを憎みきれないことなどが、今回の交流から見えました。
七海が言っていた「この船には『彼』も乗ってるわ」というセリフがおそらく、二人の関係を見切るキーなんだろうけども、まだ七海の能力が伏せ札だからなぁ……。
ともあれ、順調に温かい関係を育むこはるルートと巧く対比して、過去の因縁で生まれた凸凹を交流の中でハメていく物語が七海と暁人にはあるってのが感じ取れたのは、とても良かったです。

能力といえば、能力モノの定番『一人だけいるジョーカーとしての無能力者』がしっかり出てきて、『かゆいところに手が届くセッティングしてくれるな』と関心しました。
彼が能力を持っていないことが生来のものなのか、はたまた七海との過去にまつわるものなのかまでは分かりませんし、そもそも能力者だけがノルンに引っ張りあげられるロジックも不明なので、これがどう生きてくるかは判んねぇけど。
こういう大ネタの謎を隠しつつも、暁人くんが憎まれ口叩きまくりつつ料理はしてくれ、女の子は見捨てないナイス男ツンデレだという人格的な情報はどんどん描写するところが、なにを隠蔽し、なにを開示するかよく考えられたお話だと思うポイントです。
謎への興味で引っ張りつつ、キャラクター性まで分からないとどこに足場おいてお話見ていいか迷っちゃうから、やっぱ『こいつは好きになって大丈夫ですよ』っていうサインはどんどん出して欲しいわね。

どうでも良いんだけど、見た目重視のノルン内部マジ転落事故多すぎなので、手すりや転落防止用のネットをどんどん設置し、目指せゼロ災! って感じで進めたほうが良いと思うな俺。
え? 『ドキドキイベントの発生率が減るからダメ』?
やっぱそっか……まぁ手も足んねぇな、ノルン広いし。


他のメンバーの描写は控えめでしたが、こっちも過去に因縁ありげな黒ノルンこと深琴と朔也の過去回想とか、遂にちょっかい出しはじめた『世界』とか、恋愛からフリーな身の上を活かしガンガン世界の謎に切り込んでいく未来少年とか、ネタは多かった。
「自分は誰も好きにならないから大丈夫」ってどういうことなのとか、深琴画伯の絵を褒め殺す朔也くんはLOVE過ぎて盲目なのか、はたまた腹黒なのかわからないとか、この二人の間にも色々謎があるなぁ。
意味深な動きをしているのは遠矢さんも同じで、最年長として『世界』の連絡窓口やってるみたいだけど、クソ組織の情報握りこんでないで早く公開してくんねぇかなぁとか……システムがシノビガミなので、自分からは秘密公開できないってところはダンデビと同じだな。

前回ヒキ力満載で乗り込んできた平成生まれのタイムリープ小学生は、女の子と絡む必要がないのでどんどん世界の謎の核心に迫っていく感じだった。
露骨に『何かありますよ! マジこいつには何かありますよ!!』というサインを出している女が、空汰少年の専属リソースって感じか。
この話キャラが多く世界に埋め込まれた謎も多数なので、三人の女主人公+空汰で掘り下げるリソースを巧く分担して、それをつなぎ合わせることでお話全体の見取り図を作っていく構造なのね。
キャイキャイするのに忙しい女衆よりも、少ない尺で手早く伏せ札を表に出来そうな立場なので、今後も空汰くんには頑張っていただきたい。

そんなわけで、少しペースを落としてガールとボーイの青春絵巻を切り取りつつ、やっぱり謎は沢山ばらまく第三話でした。
今ノルンに常駐してるだけで12人、それに加えて襲撃者だの意味深な幻影だの、沢山のキャラクターが謎を伏せているお話なのですが、それを表に返しているだけでは感情のうねりに欠け、どうにも入り込めないお話になってしまいます。
今回こはる×駆、七海×暁人の乙女ゲーパートを長尺でやったことで、謎を解いていくだけではない感情の熱も、このお話はちゃんとやってきまっせ! というシグナルを感じることが出来ました。
ミステリとロマンスはなかなか料理の難しい取り合わせだと思いますが、情報の出し方、感情の埋め込み方、ムードの盛り上げ方等色々工夫し、胸に迫るエピソードが出てきたら、これはとても面白くなる題材でもある。
さてはて、来週以降どうなるんでしょうね。