イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

紅殻のパンドラ:第3話『偽装空間-テラリウム-』感想

エピローグも終わった電脳世紀序章、今回はウザルの代わりになる保護者、崑崙八仙拓美(すげぇ名前だな)が顔を出し、少し落ち着いた話が展開。
世界有数の義体適合者としてインチキな性能を誇る福音のスペックとか性格とかを、一番最新鋭とはいえ旧世代な拓美と対比して見せる回だったのかな?
福音とクラリオンの幸せな日々を描写したり、ラスボスっぽい諏訪部が顔見世したり、アクションやってた一話二話では出来なかったことを、テンポよく見せた感じですね。

今回はキャラの説明と平行して、世界観の説明もグイグイと進んでいました。
時間軸的には"攻殻機動隊"や"アップルシード"以前の、電脳が違法性を含む最先端技術だった時代のお話であり、猫も杓子も電脳化してた攻機を見慣れていると、少し戸惑うアナクロ加減。
セナンクル島という場所も、崑崙八仙という保護者も『この時代にしては』最先端なんですが、福音とクラリオンは二人だけ世代を飛び越えて電脳適性が高い(そしてそのことが、主人公としての特別性でもある)わけです。

拓美ちゃんはこのタイミングではまだ倫理的問題をクリアしていない電脳を積極的に搭載し、イタい若作りから見ても人体に機械をブッ込み、遺伝子にメスを入れることに躊躇いがないエッジな思想を持っています。
しかしそんな彼女でも、クラリオンのことは『サヘルのお人形』と呼び続け、『軍も騙せる自慢の偽装空間』をナチュラルに突破する福音を理解しきれない。
彼女はまだ学生である福音の社会・経済的保護を行うと同時に、新しい倫理と能力に目覚めた主人公たちに驚き置いて行かれる、旧世代の代表という仕事も担当してんだね。
技術系に強いタタラ◎なので、クラリオンがいかにハイスペックの解説したりとか、色々やってくれて良いキャラです。


福音は『クラリオンと一緒に、穏やかに暮らせれば満足』っていうコンパクトな価値観を持っているので、余計なことを気にして首を突っ込み、話を転がしていく仕事も拓美ちゃんが担当。
ウィザード級のニューロと超高性能アンドロイドが、きららか百合姫みてーなヌルい日常を送り続けていると、せっかくブエルとかバニーとか諏訪部声の黒幕とか用意して、薄暗い話が起きそうな畑を用意したのが無駄になっちゃうからね!
同時に『電脳世代のヌルい日常をこそ見たい!』という、なかなか掘り下げられなかったニーズに答えてもいるわけで、ここら辺は役割分担といったところでしょうか。
やっぱね、福音くんの『クラりん好きっ!』っていう一本気でハッーピーハードコアな熱量は、二人が穏やかに幸せに暮らしている日々を凄く綺麗に彩っていて、見ていて気持ちがいい。

福音くんは本当に健全で素直な性格をしていて、無用な危険は呼び込まないし、拓美のちょっと歪んだ価値観は適宜訂正していく、お話を清廉潔白にしていくフィルターみたいなキャラです。
そこら辺は、周囲が篤志家ウザルの偽装された死に流されていく中、「帰ってくるとき大変だね」と帰還を信じて疑わない描写からも見て取れます。
しかしあまりに綺麗すぎるとお話が転がらないわけで、クラリオンに圧がかかるとお話に首を突っ込むクラキチな部分と、能力を発揮するために下腹部でコンタクトするマヌケな絵面が用意されてんのかなーとか、今回見てて思った。
実際の話、拓美ちゃんがストーキングしていないとバニーを気にかけることもないし、ブエルの発掘にも繋がらないしで、お話がゆるっとしすぎんだよね。
影響力が大きすぎるウザルを退場させ、拓美という保護者兼外付け物語推進装置をしっかりくっつける所は、隙のない物語運びだと思います。

そういうプレーンな価値観を持った『普通の子』に、超人級の電脳操作能力という『ふつうじゃない能力』が乗っかってるのが、このアニメがヒーロー物としての側面も持っている理由なわけですが。
今回大きな事件は置きなかったけど、偽装空間を巡るやり取り(クラリオンは疑験に食われてるのがミソ)だとか、買い物中の二人の追跡者への対応とかで、ちゃんと福音くんのスーパーパワーを強調していたのは良かった。
ギャグっぽく展開されてたアイドルレポーター蘇生シーンでも、周りは死体で埋め尽くされていたわけで、ブエルが引き起こした災害は結構シリアスです。
今回強調したスーパーパワーでもって、幸運にして被害者とならずにすんだ災害事件に福音くんがどう切り込んでいくのか、個人的に楽しみなところです。

福音くんがヒーローとして立ち向かうべき『敵』も、意味ありげに顔を出していました。
諏訪部声でキメキメの『俺悪いぜぇ~、マジ冷酷だぜぇ~』ってオーラ出してましてけど、このアニメ基本コメディだし、主人公は善意と優しさを超常スペックで塗り固めたインチキキャラだしで、まともに悪いこと出来るか不安だ。
一度福音くんと接触したらあっという間にホワンとゆるい空気に持っていかえると思うので、事件の陰で暗躍する形か、こっちでも拓美ちゃんがマッチアップしてシリアス空間を維持するか……。
拓美ちゃんはサヘルの遺産に興味津々の業突張りなので、カチ合う理由もしっかりあるしね。


一気に駆け抜けた序章が終わり、お話しの道具立てをゆっくり説明する回でした。
福音とクラリオンの共同生活をベースに使うことで、説明からぎこちなさが消え、ドラマの一部として世界設定とか、キャラクター配置とかが飲み込めるのは、第3話の仕事としてはパーフェクトじゃないでしょうか。
少女代表として正しくプレーンでイノセントな主人公二人の、足らないパーツをきっちり補う拓美ちゃんのキャラ含めて、良い感じに推移してると思います。

『普通だけど普通じゃない少女』福音くんが、ちょっと大変なことになっているこの島でどう生きて、どう平和を取り戻すのか。
電脳第一世代として男女どころか、有機無機すら飛び越えた『好きッ!』を展開するSFラブコメディとして、どういう味付けをするのか。
今後が楽しみになる三話目でした。
まぁとにかくね、福音くんとクラリオンは今後はあらゆるいみでますます仲良くなり、生き方についても万事仲良くなってほしいと思っている。益々なかよく。(武者小路なかよし実篤(後期型)、久々の出陣)