イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dimension W:第3話『ナンバーズを追え』感想

あざとい! 賢い! 人命救助もしちゃう!! スーパーガイノイドミラちゃんのほっこり日常コメディ、第3話は『ミラ、子どもと遊ぶ』の巻。
裏ではキョーマさんが自分の過去とか怪しげな超コイルを意味ありげに掘り下げ、世界支配者の一人とコネ作ったりしてたが、感情のラインとしてはミラ軸の話でした。
人間にとても近いけど、人間の定義とは外れた生存の仕方を選んでいる(選ばざるをえない)ミラが、どう人間の世界に馴染んでいくのか。
ゆったりとした筆致が未来世界を美々しく捉えてもいて、落ち着いた中にシャープさのある、良いエピソードでした。

今回はミラが回収屋として初報酬をもらい、住環境を整え、他者とコミュニケーションする一種の社会的リハビリを追いかける話でした。
お金をもらってのほくほく顔とか、じわじわと形になっていくトレーラーハウスとか、ミラが一歩ずつ人間社会に陣地を広げていく喜びがコンパクトに描かれていて、見ていてとても良い気分になれた。
親同然の博士が死んだ所から始まり、世界を支配する企業に追いかけられるミラが、一個人として幸せの足場をたしかに作っていく様子をじっくり見せてもらうと、彼女の浮かれる気持ちにも凄く納得できて、作品に入り込める描写でした。

この暖かさをさらに増幅させていたのが、ミラのあざとく可愛い芝居でして、キョーマさんとの凸凹した共同生活をゆっくり追いかける中で、彼女の真摯な人格が見えてきました。
プログラムの結果かもしれないけれど、コロコロ表情を変えて笑い、焦り、他者を受け入れ守るミラの気持ちがゆっくり流れていったのは、彼女を好きになる上で大事な見せ場だったと思います。
人間以上だけど人間で在り続けたいと願う彼女の優しさは、バディであるキョーマさんがなかなか感情を表に出さない分、作品の暖かさを生み出す大事なエンジンなのですな。

その上で、人間で在り続けたいけど人間以上であるミラの異常性も、しっかり強調されていたのは良かったです。
荷物を持ち上げるゴリラパワーはコメディの一幕ですむわけですが、子供たちを守るために首を切断された(そして、その上で生き延びている)アクシデントは、彼女があくまで人間社会の範疇に収まらないアウトサイダーであることを視聴者に思い知らせる、良い冷や水だったと思います。
キョーマさんとミラ(首)が話すシーンの色合いがいい具合に落ち着いていて、日向の暖かさと優しい交流を強調していた昼の風景と上手く対比的だったのは、凄く良かったですね。
事故が起きて世界の様相が変化してしまったので、昼とは大きく雰囲気が変わっているけれども、ミラの全てが拒絶されるわけではない静かな暖かさがちゃんとあって、ストーリーが求める空気によく似合った演出がされていました。

彼女は『世界支配企業の敵』を親に持ち『特秘技術の塊』として生を受けた『アンドロイド』という、生まれつきの追放者であります。
そんなハグレ者でも頑張れば居場所はあるし、承認は与えられるし、報いが待っているという展開は、暖かくて良いものでした。
コイル嫌いの変人として世を隠れて生きてるキョーマさんや、世間の裏街道を歩いているマリアやコオロギも同じく社会の追放者なわけで、この話はアウトサイダーの話でもあるわけだな。


主役のミラちゃんが柔らかい物語の起伏を背負ったので、今回のキョーマさんは設定を引き出す壁役をやったり、世界のシャープな側面に目を向ける仕事を担当したりしました。
前回衝撃的な絵面でコイルのヤバさを印象づけた上で、コイル改造屋との会話で今後のキー・ワードになりそうな『ナンバーズ』を説明させる流れとか、焦っていなくて好き。
ただ『違法コイルはヤバイ、ナンバーズはもっとヤバイ!』と言葉で説明されるより、大爆発が起きて奇っ怪なオブジェが誕生する絵を見せた後のほうが、視聴者はより納得するもんな。

他にもアウトサイダーを抑圧する権力側の肖像を、シオラと血縁で繋いでスムーズにカメラに写したり、色々移動することでコイル世界の日常風景を見せてくれたり、話のペースが少し堕ちたからこそ出来る細やかな描写が、なかなか楽しい回でした。
僕らが生きている世界とそこまで変わらないのだけれども、しかしよく見れば全く変貌してしまっている風景をサラッと出しているこのアニメのフューチャー・デザインは、結構好きなポイントです。
未来の風景はこのアニメの主役ではないのですが、キョーマさんやミラの物語が投影される大事なキャンバスなわけで、そこに自然さと魅力がちゃんとあるってのは、凄くいいことだと思います。

コイルによって変貌してしまった世界の風景を見せる上でも、ミラというキャラクターの内面を感じさせる上でも、非常に雰囲気の良い、落ち着いた話だったと思います。
『ナンバーズを追え』というサブタイトルなのに、起こったアクシデントはコイル関係ない『積み上げた旧車が崩れた』だけという回でしたが、まぁ派手な事件は次やるんだろ……雰囲気バリバリなホテルで謎の殺人だしな。
キョーマさんも意味ありげに匂わすだけではなく、腹を割って過去話してくれればキャラが良く見えてくると思うわけですが、それはもっと深刻な事件が起きた時にやることなのかなぁ。
今回ミラを切り取った断面が凄く良かったので、キョーマさんのキャラが見えてくる瞬間も、凄く楽しみになってきました。
来週はミステリかホラーみたいな雰囲気が漂ってくるお話ですが、超科学世界とオカルトをどう組み合わせ、どう料理してくるのか。
非常に楽しみです。