イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

デュラララ!!×2結:27話『同舟相救う』感想

首が世間に晒されて混乱した状況が、更にややこしく! 加速していく池袋怪奇絵巻今回のお話は、サイコだらけのお話大会。
相談相手確実に間違えてる帝人くんはイザヤ相手に歪な心情を吐露し、杏里キチガイ刃物女にモテるモテる。
外にも色んな連中が繋がって、どんどん混迷の色を深めていく池袋であります。
……チーム罪歌はさておき、四十万くんと先生がタッグ組んでもひどい目にあう未来しか見えないけどな。

前回大事件っぽく引いたセルティの首は横において、今回は悩める青少年達が自分の気持をまとめるターンといいますか、キャラを引っ張りだす会話劇で展開してました。
善人っぽく見えて、退屈に食い殺されそうなら火に油を注ぐことも辞さない帝人くんは、主人公だと思っていたラ作中最大級のサイコという、結構な詐欺判定してると思う。
まー5クールもアニメやっているとサイコモードとの付き合いのほうが長いんだけど、第一印象ってのはなかなか拭えないので、『ハタで見ていて面白いダラーズを取り戻すッ! そのために、ダラーズ以外を潰すッ!』という超暴力主義を真顔で告白されると、色々当惑する。

帝人くんは池袋のインチキ軍団と付き合いすぎて感覚が麻痺しているけど、行動理念と実際やったことを冷静に見たら、(善悪是非は横において)『面白い人間』にもうなっちゃってるわけで。
それはつまり杏里と紀田くんと楽しく池袋観光してた『平凡な楽しみ』には戻れない立場に足を踏み入れている証明なんだけど、イザヤよろしく『面白い=凡人からはみ出した人間』に転落する一歩手前で、ぎりぎり踏みとどまってもいる。
今回建設途中のビルの屋上で、落ちるか落ちないかの場所に立ちながら電話してたってのは、ベシャリで進む動きのないシーンにスリルを足すっていう絵的な意味合いもあるけれども、この物語的境界線を暗喩する意味もあるんだろうな。

杏里・紀田・帝人と、イザ・シズ・新羅が対比されているのは、わざわざ後者の高校時代を1エピソードやったことからも判る。
超常の能力を持っている人も、平凡に飽き果てて日のないところに煙を建てようとする人も、バランサー足り得た一応常識人も、『平凡な楽しみ』に背中を向けて池袋の闇に腰までつかっちゃったのが年長組だが、年少組はどうなるのか。
『面白い人間』になっても他人を尊重し真心のある関係は維持できるってことも年長組(イザヤ除く)は示しているわけだけども、過去のリプレイのように『三人一緒にいる風景』を捨て去ってしまうのか、はたまた自分の中のサイコを飼いならして『平凡な楽しみ』を取り戻すのか。
危ういロープの上にいる帝人が、既に落っこちたイザヤに相談するのは、劇作上無理のない構図なのだろう……ぜってぇそいつにだけは寄りかからないほうが良いと思うけど、まぁもう遅いよな。


そんな帝人を引っ張りあげられる杏里は、スーパー罪歌大戦に巻き込まれていた。
自分の価値観や好意を他人に伝染させられるなら、『平凡な楽しみ』は横に置いて責任は取らなきゃならんな、ということが、贄川さんの独白からは見て取れる。
杏里贄川さんを斬った状況もかなり緊急避難的なので、『知らん。打ち勝ったなら良かったね』と尻を向けてもそこまで問題ない気もするが、杏里帝人とは逆に、普通では無いからこそ普通に憧れている人外だからなぁ……気にしちゃうよね。
あとまぁ、単純に情報戦で負けているのでイザヤの握ってる情報を、贄川さん経由で抜きたいってのもあるか。

贄川さんは分かりやすく杏里のシャドウをやってくれているキャラで、彼女が躊躇なくナイフ二本抜いて言い放った「友達同士でも、殺し合いの喧嘩くらいするわよね?」というセリフに、杏里は「いや、ねぇから」と言わないといけない立場にいる。
帝人に『平凡な楽しみ』も良いもんだよね! というためには、杏里は自分の中の罪歌にひとつの答えを出さなきゃいけないわけで、帝人が『間違えちゃった自分の成れの果て』であるイザヤと話すのと、贄川さんと杏里との会話は機能的には非常によく似ているのだ。
一つの話でザッピングしながら展開するのも、結構納得の行く構成だ。
罪歌を渡して自分の中の人外を追い出すルートもあるんだが、それも今回明確に拒絶したことで、彼女は内なる獣の囁きと、幻影のような人間らしさのバランスを取り、人格的綱渡りを歩き直す道を選び直したことになる。
ここら辺は、屋根の上で危うく揺れていた帝人と、面白い対比をなすところだ。

罪歌親子の斬り合いは鯨木さんの乱入で水が入ったけど、その顛末は来週に持ち越し。
それにしたって杏里は女にモテるなぁ……元々ヤンデレ属性の強い人だけど、贄川さんそんなに距離感近い人だっけか?
何かとヤッパを持ち出し精神を支配してくる危険人物ではあるんだけど、復活した贄川さんはなんか当たりが柔らかくて、妙に憎めないキャラになっている気がする。
あのピンクのフワフワ服が、印象を上手く変えてるのかね。


後は四十万くんと先生がスーパー負け犬ユニットを結成したり、高校生トライアングルのもう一人である紀田くんと、埼玉の核弾頭六条くんが邂逅してたくらいか。
紀田くんはお話しのパワーバランスをがっちり握る重要人物なのに、どうにも踏ん切りの弱い頼りないキャラクターなので、ここでオヒキが付いて話が先に進むのはいいことだ。
年少者を引っ張る頼れる先輩役はドタチンが主にやってたわけだけど、あの人いま入院中だからな……。
デュラララは混乱が拡大していくことで話が進むので、人間力でぐちゃぐちゃになった状況をまとめてくれるドタチンは、この状況だと寝込んでくれてないと困るよね。
逆に言うと、六条くんが紀田くんをボコにして背筋をシャンとさせ、ドタチンが起きたらお話が収束する合図ってところかなぁ……。

というわけで、主人公格にシャドウが張り付き、対話することで彼らの問題点と欲望を再確認する回でした。
動きが少なくなりがちな会話劇を、色々へんてこな絵を織り交ぜて飽きさせないようにする努力とか、なかなか良かったです。
帝人杏里にカメラが寄った分、セルティと紀田くんというもう一人の主人公たちの話は来週に持ち越しかな。

複数主人公の主線が交錯しながら進み、サブキャラの思わぬ動きで伏線がボコボコ生まれるので、デュラララ三期は非常に混乱しますね。
アクの強いキャラクターがバチバチやり合うケイオスこそ、この作品の心臓だと思うので、混乱を殺しすぎず、しかし状況が把握できる程度には整理して話を転がしていく、難しい取り回しになります。
現状そこら辺は上手く行っているように見えますので、どんどんとお話しの雪球を転がし、カタルシスを大きくしていってもらいたいです。
……僕の場合は、こうして文章に一度書くことで脳内を整理し直す意味合いも大きいのかな?