イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dimension W:第4話『八十神湖に潜む謎』感想

怪しげなホテル! 奇っ怪な密室殺人!! 霧とともに現れる亡霊!! 肌色シーンをたくさん作って僕達を楽しませてくれる良いヒロイン!!!
洋館ミステリの定番要素を踏まえつつ、条理を超えたナンバーズ・コイルのちからと、21年前のダム事件がいろいろ絡みあう、複雑なお話でした。
難しいことをテンポよく捌きつつ、ミラのサービスシーンは尺と作画力をたっぷり使った美味しい出来で、客を飽きさせないエンタテインメントに仕上がってんなぁと思いました。
ありがたい限り。

次回予告を見た段階だともうちょっと話数を出して雰囲気を出し、視聴者に考える時間を与える造りにするのかなと思っていましたが、非常にザックザックと進みました。
意味ありげに集合した怪しい連中は一話でだいたい素性が分かるし、真相を知っているアルベルトとキョーマの合流も早い。
ナンバーズ・コイルが事件の中核にあるという情報、つまり亡霊事件はアストラル的な『古いオカルト』ではなく、コイル技術という『新しいオカルト』が暴走した結果生まれているという真実にたどり着くのも、ほぼ前半で終わってしまいます。
視聴者が条件を受け取って推理する時間を与えず進むことからも、ミステリというよりはアクションサスペンスな回だと思います。
ストレス溜まんないし、テンポは矢継ぎ早になるし、こういう見せ方も面白いね。

同時に21年前の死人が殺人を犯したことも事実であり、こういう異常事態を引き起こすパワーがコイル技術にあるってことを、視聴者に見せる回なんだろうな。
亡霊が生者を憎む因縁部分の開示は今回ほぼ成されていないので、動機や事件背景、真相の解明は次回以降ってことなんでしょう……そこまで一話でやるのは流石に無理だ。
パタパタとテンポよく、洋館ミステリ→アクションサスペンス→ミラが取り込まれてホラーという風に一話でジャンルが変わるのは、振り回される気持ちよさがあって良い。
早い展開を気持ちよく思うのは視聴者がお話に乗っかっているってことでして、早すぎて置いてけぼりとはならない所に、語り口の巧さがあると思います。

かっ飛ばして進むお話ですが、洋館ミステリや亡霊譚を装うのに必要な『なんか怪しげな雰囲気』はいい具合に出てまして、キョーマさんのダム巡りで見せたイカす背景美術や、亡霊の世界にミラが取り込まれた時のホラーな空気は、かなりしっかり作ってありました。
街の描写でもそうなんですが、声高に『どーだ! スゲーだろ!!』と叫ばないけどしっかり必要な情報を孕み、舞台として必要な空気を醸し出せる美術は、このアニメのとても好きなところですね。


テンポよく進む話の間に何が挟まっているかというと、キョーマさんとミラの人格の描写でして。
キョーマさんはアルベルトという因縁ある相手が出てきたので、過去絡めつつ色々話したり、意外にインテリで操作関係でも腕が立つところを見せたり、なかなか目立ってました。
ポンコツだのガラクタだの言いつつ、ミラの能力を結構信頼して仕事を任せている辺り、回収屋の凸凹バディにも慣れてきた感じがあります。

ミラはホラーもののサービスヒロインの仕事を徹底的にこなしつつ、キョーマさんには出来ない被害者の役を担当。
ムチムチした肉体の描写は非常にありがたいサービスでしたが、やっぱ見てて『ヒャッフー!!』ってなるシーンを担当してくれると、キャラへの愛着は深まるわね、エロにしてもアクションにしても。
エロ一辺倒のセクサロイドではなく、亡霊に怯えたり本を読んだりロボットを演じてみたり、様々な感情を込めた芝居のバリエーションが非常に多く、凄く『人間らしい』キャラとして演出できています。
キョーマさんがロボットのように冷静な人間で、ミラが人間的な部分が濃いガイノイドっていう落差は、相当計算して出してんだろうな。

ホラーではエロだけではなく、恐怖に怯える表情もまた視聴者へのサービスになるので、亡霊にビビりまくりゴーストバイオレンスのあわや被害者! という立場にミラがなってくれるのも、エンタメとしてとっても大事。
暴力への恐怖はすなわち死への恐怖だと思うんですが、回想シーンを見るだに百合崎博士がAI起動時から仕込んだのかな……やっぱマッドだなあのオッサン……。
ともあれマッド博士がミラをいちびってくれたおかげで、次元亡霊にヒーヒー怯えるミラを見て健全に楽しんだり、その恐怖の色を見て『ああ、あの子は僕らと同じだなぁ』という親近感を覚えたり出来るわけですから、感謝しないとね!

怪しげな新キャラも結構出てきましたが、そっちを掘り下げることはあまりなく、キョーマさんが事件の真相にたどり着くなり本性を出してきました。
三人組は分かりやすく悪い回収屋っぽいけど、印象的な演出をいちいち入れてきたゴスロリ娘はどういう立場かな……アニマロイド使いだから、ルーザーの娘の変装とかかな。
小説家の妹さんはおそらく、事件の行方不明者の入れ替わりだ(『洋館ものミステリ』というジャンルの定形を利用した、推理になってないメタ知識)だと思うわけですが、なんで入れ替えたのかは動機に関わるところなんで次回か。


そんなわけで、あっという間に話が進むハイスピード・サスペンス・アクション回でした。
この速さに視聴者が乗っていけるよう、セリフの組み立てを工夫したり、サービスシーンで興奮を持続したり、映像の手練手管がフル活用されていて、とても良かったです。
演出の技法を誇るのではなく、使いこなして楽しみに変えてる志の高さは、見てて信頼できるなぁ。

このペースだと来週には終わっちゃいそうですが、ナンバーズコイルが引き起こした事件の異常性や、その裏に潜んでいるだろう情念の濃さなども、しっかり見たいところです。
『自分たちが何を見せているのか』に凄く自覚的で、『狙った感情を引き出すためにはどうしたら良いか』を把握し、『とにかく楽しんでもらう』という目的がはっきりしている高度なエンタテインメント作品なので、是非にもやってくれるでしょうが。
面白いなぁこのアニメ……ミラはエロいし可愛いし、最高やな。