イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツ!:第171話『ベストフレンド』感想

3月の一区切りに向け、着実に何かを集約しつつあるアイドルアニメの金字塔、今回は凛まどThe FINAL。
ナツコの欲望が思う存分暴れ回り、二人の濃厚な絆というかなんというかを確認できるお話でした。
天羽のストレートで歪まない所とか、気付けば超デキる彼氏スタイルを手に入れてた凛ちゃんとか、キャラ描写も真っ向勝負で濃厚だったなぁ……。

お話的には仲違いや意見の対立は特になく、まどかが用意したライブという名前の愛の実験場に向け、二人で手を繋いでスキップで走り続けるダダ甘な話でした。
SLQCに向けてルミナスの三人がキッチリ自分たちの道を見つめなおし、そこに立ちふさがる困難とかと戦っていたのとは好対照で、ただただ二人がお互いを愛していることを確認するという、基本的に起伏のない話。
実は系譜としてはアイカツデート回の代表である第79話『Yes! ベストパートナー』ではなく、第126話に代表される各種オフタイム回に連なる話だったと思う。

このタイミングで成長のための障害を与えられず、自分たちの関係性を確認するだけで終わってしまったということは、おそらくまど凛にはSLQCを巡る勝負論の中に、あまり大きな立ち位置が用意されていないということです。
ルミナスの三人があれだけ説得力を積み上げる中、二人が仲良しなところを確認しただけで終わってしまった彼女たちには、勝負の中軸になる重みがどうしても足らない。
あかりジェネレーションの総決算として3月のSLQCを配置するなら、説得力を持って取り回せるキャラクターの数は限られているわけで、ある意味体良く勝負論から脱落させられた、と見ることも出来るでしょう。
『いつしか手を離す時が来ても、ここで繋いだ友情が一歩を踏み出す力になる』という”フレンド”の歌詞内容を考えると、二人で閉じてお話をまとめてしまった今回この曲が歌われるのは、おそらく意図していない皮肉を生んでいるようにも思います。(本家である2Wingsもこの歌詞にふさわしいほど関係性を煮詰めることが出来たかと問われれば、僕は首をひねりますが)
こういう時でも『負ける理由』を真正面からつきつけるのではなく、ダダ甘な話を用意してソフト・ランディングさせるのは、よくも悪くもアイカツ的だといえます。


しかし一足お先に勝負の世界から降り、穏やかで緩やかな『自分たちらしさ』を確認し続ける彼女たちの関係は、とても穏やかで濃厚でした。
すれ違う日々に耐え切れず一気にライブハウスを予約するところまで突っ走る天羽も、二人でいられる少ない時間を楽しむ凛ちゃんも、一瞬のきらめきに満ちていた。
今回描写された狭くて濃厚な関係性が、まどかと凛の辿り着いた場所だというなら、それはそれで間違っていない。
そう思えるような、凝縮された情愛のエピソードだったと思います。

お忍びデートがバレた瞬間に手を握って駆け出す王子力の高さとか、自作ケーキに最高の光景を添えてお出しするスマートなプレゼントとか、凛ちゃんのカッコいい描写も良かったですが、今回はとにかく天羽だと思います。
悪意のないアイカツ世界の中で、ギリギリのラインを攻めて黒い部分を真っ直ぐだしていた彼女が、しかし何故善意の世界からコースアウトしないのか。
そんな疑問を抱いていた身としては、今回の天羽の描写は凄く納得がいく、キャラクターの内側に切り込んだ描き方だと思いました。

彼女は大声で自分のことが可愛いと認めてしまうし、凛のことが大好きだと公言し、凛ちゃんのサインをハートマークで囲ってしまう。
しかしそこに打算はなくて、ただただ感じたことを真っ直ぐ表現し、覆い隠さないだけ。
つまり、天羽まどかは腹黒ではないわけです。
腹の中に黒いものを隠しているわけではなく、ナチュラルに自分が可愛いと認識し、自分が好きなモノを好きというだけ。
そんな彼女の真っ直ぐさをスマートに受け止める凛ちゃんと同時に描くことで、彼女の本性が素直に見える回だったと思います。

もう一つ見えたのは、一アイドルとして前に進み、自分のアイカツを獲得した彼女たちのキャリアメイクです。
アイカツは学園モノ・青春モノであると同時に職業モノでもあって、人格的な成長と職業的な成功は常に同時に展開します。
今回ライブの段取りを自分たちでこなし、変装して人目を避けなければいけなくなった二人の姿は、アイカツの女の子たちが果たしてきた職業的自己確立の描写を、的確に踏まえていたと思います。


まどかも凛も、自分たちの物語を極限まで突き詰めることが出来たキャラだとは、やはり言えないと思います。
例えば一期メンバーやルミナスのように、濃厚なエピソードを的確に積み重ね、キャリアアップと人格的成長の過程を丁寧に切り取られたとは、とても言えない。
ダンディヴァ関係のエピソードが結構な数あった凛に比べると、特にまどかはSkipSへの踏み込みが甘く、人格の奥底まで潜れなかった印象があります。
そんな彼女たちが、ここで穏やかに戦いのレールを外され、SLQCというクライマックスが始まる前に自分たちの物語のピークを終えることは、ある意味当然とすら言える。

しかしその描ききれなかった物語の終わりとして登場した今回のエピソードは、二人の少女がお互いを見つめる視線の強さ、関係の細やかさに於いて凄く鋭くて、一点突破するパワーは持っていました。
凄く歪で、綺麗で、不思議な、彼女たちに似合ったお話だったなぁと思います。

そんな奇妙な果実のようなエピソードの次に、二期の徒花たちの最終章が来る。
今回いちご世代のステージを振り返っていたシーンを見ても、『何か』が迫っていることは感じ取れます。
アイカツはどこへたどり着き、どこへ行くのか。
不安でもあり、楽しみでもありますね。