イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

紅殻のパンドラ:第6話『魂魄 -セントラル・ナーバス・ユニット-』感想

ちょっと世知辛い未来風味の不思議の国を、女の子がかけていくアニメもそろそろ折り返し。
今回は病院で義体少女の医療事情など触りつつ、マスコットポジ(というには下の方面にぶっ千切ってる淫魔)のブエルをメインにしたお話でした。
ラスボス担当のクルツの悪行が合間合間に強調されたり、主人公チームと一瞬の邂逅を果たしたり、色んな事を手際よく果たしていたお話だと思います。

色々面白い所はあったんですが、まずは主人公ネネちゃん……って言いたいところなんだけど、今回クラリンと一緒に病院行って、ベッドシでお楽しみした後服直したくらいで、あんま目立ってないのよね。
ヘカトンレイレス・システムのプロトタイプが出てきたり、最先端サイボーグの医療事情が垣間見えたり、世界観のスパイスとしては面白いシーンを担当してたけど。
あとクラリンとほわほわ仲良くしていたのは、いつもながら素晴らしかった。万事仲良く。

軍事や戦闘といった側面ではなく、医療ケアの方向からサイボーグを掘っていく視点は、非常にパンドラっぽい目線だと思う。
超特別製の福音くんをトップにおいて、一般的な部分義肢をバージョンアップする様子をエイミー経由で見せるのも、前回出てきたお婆さんの演出ラインを引き継いでいて面白い。
超越的サイボーグである福音くんだけを描写して特別な存在の話にするんじゃなくて、被災孤児すらも部分義体化し、ちゃんとアップデートできることを画面に取り込むことで、『普通のサイボーグ』がどうなってるのか見えてくるというか。
かんたん作画と百合と下品ギャグだけではなく、こういうSF要素をしっかり入れるところが好きなのね、僕は。

しかしハイテク兵器から先端サイバネ医療まで出資・運営・管理しているあたり、拓美ちゃんはほんと常人の限界まで優秀・有能な権力者よね。
福音くんの電脳干渉能力が人類超えすぎてるので噛ませ犬みたいになってるけど、サイバネティック技術と情報化が融合し、どんどん世界と人間の様子が変化する先端にしっかり立って、この後の世界(SACしかりRDしかりアップルシード然り)への橋渡しを担当しているのは、シロマサワールドの広がりとしても大事なキャラだと思う。
篤志家とテロリストの両面で行動してたウザルに比べると、福音くんの子供らしさを気にかけたり、医療福祉方面にしっかり取り組んでいたり、やや凡俗故のバランスの良い性格しているところも、好きになれるポイントだ。
無論、先端サイバネ医療を直接運営することで、自分の技術開発を実地で運用したり、データのフィードバック貰ったりで、ホスピタリティだけでやってるわけじゃないとは思うけどね。


福音くんになり変わって主役を務めていたのは、淫獣ブエルでございまして。
大ベテランにトンチキな中二病言語を操る変態ドロイドをやらせる配役の妙もあって、なかなか面白いキャラだというのがよくわかりました。
スケベで節操ないんだけど、ブエルなりに人間との関わりを持ち、何かしようと努力している『いいやつ』な部分が子どもとの関わりでクローズアップされたのは、この話が根本的に善良な話である以上、大事だと思う。

前回のお婆さんエピソードと合わせて、ブエル本体への無謀なアタックが通信障害を引き起こしていること、それが命にまつわる危機だということは、良く描写されたと思う。
これは今回なされたブエル(CNU)が『いいやつ』である描写と実は背中合わせで、中央管理ユニット(ちょっとロマンチックな言い方をすれば、今回のサブタイトルのように『魂魄』)を失えば、周囲に災厄と死人を撒き散らすヤバイ存在でもあるという、両面的な描き方なのだと思う。
魂魄なきブエルが引き起こした災害は直接福音くん達には届かないけど、公園の避難民とか、通信障害で死にかけたお婆さんとか、『世界平和』を目指す聖人福音くんには見過ごせないものであり、かつブエルの『善性』ともいえるCNUはキツいツッコミを入れつつも、一緒に楽しい日々を過ごす仲間でもある。
セナンクル島の平和を脅かすブエル(本体)はやっぱり福音くんの物語とは強く結びついていて、今の電脳魔法少女モードだとなかなか接点がないけど、最終的にはこの矛盾を平らにしてお話が落ち着くんだろうな、という予測が立つわけだ。

ここら辺を際だたせるためにはブエルの『いいやつ』っぷりをちゃんと見せなきゃいけないんだけど、五本目の足を有効に使った頭の弱い演出を全面に押し出し、説教臭さを抜いて苦笑しながら『まぁしょうがねぇなぁコイツは……』という態度で受け入れられるのは、とても良いと思った。
大上段に振りかぶって説教されるより、頭の弱いちんぽライオンを時にゲラゲラ、時に苦笑いしつつ見守って、ふと『なんだ、コイツ結構いいやつじゃん』と感じられる方が、キャラクターがより身近なのは間違いない。
人類初の機人融合電脳聖人とスーパーアンドロイドのコンビのお話だけど、メシを食ったり服を直したりという地道な幸せを追いかけつつ、サイバー化された時代の人生のを仮想するこのアニメにおいて、そういう距離感でキャラが描けたってのは、まぁ成功と言って良いんではないか。
そういう短さが森田順平さんの怪演に大いに助けられてるのは、幸せなマリアージュだな。


ブエルが『いいやつ』として描かれていたように、今週もクルツは徹底して『悪いやつ』として描写されておりました。
都市部の面倒や人命の危機は一切気にせずブエルに電脳アタックを仕掛け、通りすがっただけの福音くんとエイミーはぶっ殺そうとするし、強権を縦に避難民は追いだすし、順調にヘイトをためております。
まだ『なんでブエルを欲しがるのか』というモチベーションの部分が見えてこないので、評価を全部下すには早いと思いますが、まぁ世のため人のためってわけじゃないよね……そういう柔らかい実感に根ざした判断は、福音くんの担当だしね。

クラリンはほとんどの時間をかんたん作画で過ごしていましたが、ネネちゃんに下腹部を触らるシーンと、猫の騎士のようにネネちゃんをガードするシーンだけは良い作画でキリッと決めてた。
敵の悪いロボットと顔見世して、因縁を作る動きをしっかりクリアしてたのは、今後の話がスムーズになりそうなグッドポイントだ。
あの防衛行動がウザルから譲渡されたデジタルな優先順位からやってきているのか、学習し成長する電子の心から来ているのは、はたまたそんな差異と問を立てること自体が無意味なのか。
個人的には気になるところですが、これに明確な答えが出ることはないような気が、なんとなくしている。
クラリオンのゴーストに関してはあえて答えないか、ブエルを巡る騒動よりもう少し奥の、お話の根幹にまつわるネタな気が済んだよなぁ……どっちにしても、アニメの範囲だと答えられない気がする。

そーんなわけで、基本平和なセナンクル島の平和な日常、だけど長く伸びる影もちゃんとあるよって回でした。
これまであくまでワンポイントの賑やかしだったブエルがどういうロボットなのか、ちゃんと見えるお話だったのはとても良かったな。
ネネちゃんとクラリンのキャイキャイが瑞々しいのはもちろん最高に素晴らしいんですが、ブエルやエイミーがいる近未来そのものが結構フレッシュかつ真摯に考えたうえで描写されてて、このお話が収まってる世界それ自体が、結構好きになってきた。
作画はぶっちゃけヘロヘロだけれども、俺はこのアニメ好きだなぁやっぱ。