イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第85話『逆襲のセレブリティ4』感想

スプどりを目前にした今週のプリパラは、祝! ミルキィホームズ劇場版公開!!
オモシロ四人組たるセレ4が復活……はあくまでおまけで、天才チームに滑り込むレオナと、弟離れ出来無いドロシーのオリジンを掘り下げ、彼女たちの関係が少し変化するお話でした。
キャラクターをウェスト姉弟と障害役であるセレ4にほぼ絞り、みっしりと内容を詰めた構成が食べごたえ満点でしたね。

新キャラを活躍させたりゲーム連動のイベントをこなしたり、プリパラは常に忙しいアニメです。
自然じっくりとキャラクターを掘り下げる機会はあまりないわけですが、しかし機を見るに敏に動き、プリパラらしいギャグを織り交ぜつつ人間の根っこを掘り返す話をちゃんとやるのは、プリパラの良い所だと思っています。
これまで常にコンビで動きつつも、実は話の真ん中に座ったことがなかったウェスト姉妹が今回主役を張り、初の双子ステージまでやったのは、二年間の物語の流れを考えると必要なことであるし、今後に繋がることでもあったと思います。

普段はクソガキ全開でゲスい言葉を吐きつつ、視聴者の本音を代弁してくれるドロシーですが、今回はそういう役割から少し離れ、弟離れ出来無い繊細な部分を軸に据えてきました。
ドロ子は下衆一本槍でキャラを立てていると思いきや結構さみしがりやな女の子でして、例えばシオンに異常になついている描写が見えた第75話とか、らぁらとガチなプリパラLOVEを確かめ合った第53話とか見ると、強がりつつも弱い部分のある性根が透けて見えます。
下衆ネタを使いこなすコメディエンヌとしての出番を殺さない程度に、ふとした瞬間に彼女が見せる弱さや細やかさをこのアニメは結構丁寧に捉えてきており、今回見せた泣き虫な姿は、やっぱりその延長線上にあるのです。

一本槍に見えて裏表のある間柄を丁寧に描写してきたという意味では、ウェスト姉妹の関係性もまたそうで、一見レオナがドロシーに引っ張られるだけのように見えて、その実ドロシーのほうがレオナに強く依存している関係ってのは、それこそ一期の頃から描かれてきました。
今回天才チームへの移籍と、セレ4への殴りこみという、引っ込み思案のレオナが似合わないアクティブさを見せたことで、ドロシーもまた自分の弱さと向かい合い、弟の旅立ちを祝福してあげる事ができる。
これは歪んだまま固まってしまった関係を一旦解体し、より好ましい方向に変化させる成長でして、正しく女児に向けたアニメーションだったなぁと思います。
まぁやってるネタはJOJOとか監督以外は縁もゆかりもないミルキィとか、全然女児アニっぽくないんですけどね……。


姉が普段見せない自分らしさと対話したように、弟であるレオナもまた、過去の回想を交えつつ自分を成長させていきます。
攻撃性を発揮し、自分らしさを押し通すという意味合いでの『男らしさ』をどうしても発揮できないために、時に良いように利用され、時に姉に守ってもらってきたレオナですが、セレ4に姉が攫われることで、自分が立ち上がらなければいけない状況がやってきます。
これは1話限りの一種のお巫山戯ではあるんですが、『自分がやらなければ、状況は改善しないし、大切なモノが踏みにじられる』という状況は、第2クール全体のBOSSであるひびきの懐に入り込もうとしている状況と、実は重なりあっています。
アバン開けた所でしっかり天才チーム入りを話題に出し、エピソード内部で起こっているドタバタの奥、物語全体の中でこのお話と成長が持っている意味を定位してしまう脚本は、なかなか目端が利いていると思います。

姉奪還のために牢屋に殴りこむという、『男らしい』行動に出るレオナですが、『あるがまま』のレオナらしさは暴力を予感させるセッティングでも一切揺らぐことはありません。
姉を人質に取られて急に乱暴な言葉を使うわけでもないし、いきなり殴りかかって大暴れするわけでもない。
鈍くさくて姉に守られてばかりの、何かと転んでしまうレオナのまま、なんとか頑張ってレオナは姉を救出し、天才チームにはいるという望みを認めさせます。
ネズミに助けられたり(このネタは"シンデレラ"への目配せだと思います。男であるはずの存在が、最もプリンセス的であるという捩じれ)、お好み焼き粉をぶちまけたりという手段はあくまで『あるがままの』レオナらしくて、ここでキャラクターを捻じ曲げない丁寧さは、『やっぱプリパラ俺好きだな』と思える、大事なポイントです。

しかし同時にその成長には『男らしい』側面がちゃんとあって、鋼鉄の鍵をヤスリで切り開ける力強さだとか、窮地に会えて飛び込む勇気だとか、レオナは『あるがまま』ではない自分を引っ張りだしている。
それを性別の二分法で語るのではなく、時間とともに変化したウェスト姉弟の関係性に集約させたのは、レオナを描く時必ず繊細にジェンダーを扱ってきた、このアニメらしい運び方だなと思います。
いつもと違った顔を見せたレオナを『男らしいな』と言ったり、もしくは繊細さと弱さを見せたドロシーを『女らしい』なと言ってしまうことは楽ですが、しかしそれ以前に、今回彼らが見せた成長と美点は『人間らしい』のです。
二人の冒険が終わった後、弟の決め台詞を借りる形で、つまり成長した弟の人格を認めそれを自分の一分として受け入れる表現として『レオナがそう言うなら!』とドロシーに言わせたのは、一見強烈なキャラ記号を活かしたコメディだけが強みと受け取られがちなこのアニメが、何を出し時にお話を作っているのか、良く分かるシーンだったのではないでしょうか。


こういうシリアスな成長物語を骨格に据えつつ、ハイテンションでバカでお行儀の悪いキチガイコメディをしっかりやっていることも、プリパラの強さです。
森脇監督繋がりでミルホネタを延々垂れ流すセレ4は、主役がまじめにしっかりやってる分、暴走と狂気を思う存分加速させ、賑やかで愉快なプリパラを維持していました。
約一名、どう見てもただのコーデリアだったからな……橘田さんのオペラネタはやっぱおもろいわ。

誘拐・監禁・脅迫・暴行未遂と、思う存分汚れ役をやってくれるセレ4がいればこそ、そこに立ち向かうウェスト姉妹が綺麗に成長物語をやれる部分もあるので、こういうゲスト敵役は巧く使うといい仕事をします。
まぁ言うたかて、主役レベルでも窃盗だの暴言だのバンバンやりまくるのが、プリパラっていうアニメではあるんだが。
基本的にはトモダチの助けで自分を見つめなおし、成長することが多いプリパラ個別エピ(例えば第8話のらぁらとなお、第80話のガァルルとみれい)なんだけど、分かりやすい障害を用意しそれを乗り越えることで成長を納得させる展開にしたのは、ちょっと珍しかったかな。
そういう意味でも、『らしさ』と『らしくなさ』をバランス良く使いこなし、的確にまとめ上げたエピソードだと思います。

そろそろ終わりが見えてくる中で、登場するメインキャラをあえてウェスト姉弟にしぼり、丁寧に掘り下げて深みを生み出す展開でした。
来週からスプドリに入っていくわけですが、五人目としてひびきの側につくレオナと、彼に一番依存し執着しているレオナのキャラクター性をまとめ、掘り下げ、足場を固め直したのは、今後の展開を考えてもとても良かったです。
先週もそうだったんですが、クライマックスに突入する前に足場固めをしっかり出来るシリーズは、やっぱ強いと思いますね。